第60項「朝ご飯は和食がやっぱ良いよね」
あぶねー。
俺は自分の家の玄関を出て、となりの302号室に赴く。
一応インターホンを鳴らしてから、昨晩に受け取ったこの家のカギで扉を開ける。
「おじゃましま~す。」
そう言って俺は部屋の中に入った。
「おはようございます。」
靴を脱ぎながら自分の前に居る影の方に目をやると部屋着姿の舞美さんが居た。
「あ、おはようございます。舞美さんってけっこう起きるの早いんですか?」
「う~ん、華南よりは起きるのは早いけど私も朝起きるのは苦手なんです。華南はこの歳になってもまだ目覚まし時計が10回以上鳴り響いても中々起きないんですよねぇ。私は自分の目覚まし時計をセットし忘れたとしても彼女の部屋の目覚まし時計のうるささで目が覚めてしまうんですよ。」
栗色の髪はまだ起きてすぐなのか横側に跳ねている。
「なるほど、一度眠ってしまうと深い眠りに入り中々自分のこの世界に戻ってこれない感じなんですかね?」
「たぶんそうだと思います。華南の異常な眠りの深さは誰から来たんだろう…。高島さんはあれですよね?昨日華南から聞いてびっくりしたんですけど毎日4:00に起きているんですよね?普通大学生で大学近くに一人暮らししている学生は始業開始時間ギリギリまで寝ているイメージがあったけどそこまで早く起きているとは驚きました~。それにさっき目が覚めて部屋の窓のカーテンを開けたら運動着姿の高島さんが歩いていたのを見たんですよ~。何していたのですか?」
「そうですね、4:00~4:30の間にいつも起きるんですけど今日は1時間も寝坊してしまったのですが、この家に入る時間までまだ時間がったので、少しランニングしていました。」
「へぇ~。普段の仕事だけで十分運動しているように見えたけど仕事以外の時間でもやっていたんだね。ランニングはどのくらい走るんですか?」
「7.5㎞くらいかなあ。」
「え、すごいですね。そんなに朝から走るんですか…。ここで立ち話もあれだし。どうぞ。入って。
朝食は、和食を作ってくれるんですよね?」
「そうですね、一応昨夜華南さんに希望されたのでそのつもりです。」
「冷蔵庫の中とかは自由に使っていいですよ。」
「分かりました。」
俺は冷蔵庫の中を確認する。
卵が4個ほどあるなぁ。豆腐もあるな。
しらす干しあるなんて豪華だな。
この姉妹って実はかなりのお金持ちお嬢さんなのかな。
しらす干しなんて少し値段が張るので俺も好きではあるが、めったに買わない事が多い。
野菜室を見ると小松菜やキャベツ、人参がある。
よし決めた。あの品を作るか…。
俺は服の袖をまくり戦闘態勢に入る。
台所は戦場だからな。気を引き締めて行かないと…。
「その顔を見るとなんとなく作る品決めたみたいですね。」
「良く分かりましたね、人の顔見ただけで今何を決断したかなんて…。」
「私は昔から人の顔をよく見て判断することが多かったので。」
俺は小松菜を茹でる事から始める。
お鍋に水を入れてガス台に置き沸騰するまで待つ。
その間に小松菜を良く洗ってお湯が沸くまで待つ。
そしてもう一つのガス台に3人分の味噌汁が作れそうな水を入れた鍋を置く。
そこに出汁をとる為の鰹節を入れて火にかける。
「なるほどね。それはすごいね!」
「それでさっき玄関で話していた時の内容に戻るんですけど、最近私も体重が増えてきて少し太ったからさ運動しなきゃなと思っているんですけど、私も高島さんが朝走っている時にご一緒してもいいですか?」
俺は、ゆであがった小松菜を冷水に入れて粗熱をとりながら舞美さんの提案を聞く。
「えぇ?ああ、良いけど…。舞美さんの起きる時間が早くなってしまうんじゃない?」
「あ、そうですね…。でも自分を磨く時間を更に作るには朝早く起きるしかないんです。」
朝早く起きて軽く運動する事は悪くはないけどこの人は一番最初に会った時と比べてもそこまで太ったような印象はないように俺には見える。
でもそれでも自身を磨くために睡眠時間を削ってまでやるとは真剣さが分かる。
「いや自分を磨くために睡眠時間まで削ってまでやるなんてすごいね。」
「え?」
俺は小松菜を刻み終え小さいフライパンにパックに入っているしらす干しを半分ほど入れて
よく水気を切った小松菜も入れて良く炒める。
そしてごま油を足して良い匂いがするまで待つ。
「俺は仕事で体力を使う仕事だから体力を維持するためにやっているから自分の容姿を維持するためにそこまで頑張れるのはすごいなぁと思って…。」
「あ、ありがとうございます…。」
「じゃあ、こうする?俺が走り始める時間をもう少し遅くして例えば5:45くらいから走り始めるとかにする?それで1時間くらい軽いやストレッチやランニングをする感じにする?それで6:45には終わりにして一度家にそれぞれ戻りその後今のように朝ご飯を作る為にこの家に来る感じにするとか?あくまで提案だけど…。」
俺は、味噌汁を作っている鰹節を取り出しコップに少しだけ出汁を入れる。これは後で使うのでとっておく。
そして豆腐を包丁で角切りをして鍋に入れスプーンで味噌をすくい鍋に入れてよく溶かして火にかけながら放置しておく。
「なるほど、え?でも先高島さんが朝のトレーニングの開始時間を変更してしまっていいんですか?」
次に卵2つをお椀にの縁で割り良くかき混ぜる。
そのあと先ほど味噌用でとっておいたかつおぶしの出汁もそこに入れてよく混ぜておく。
「ああ、別に良いよ。朝起きてからやることなんてそこまで時間がかかることなんて無いし。走る前に朝やるべきことを先に済ませれば良いわけだし。」
「じゃあ、それでお願いしても良いですか?」
「ああ、良いよ。いつから始める?明日からもうやる?今すぐに判断しなくても良いし。」
俺はしらす干しと小松菜のふりかけを皿に取り出しここで使っていたフライパンをさっと水でゆすぎ再びガス台に載せる。
「そうですね…。明日にすぐできるか少し考えるので連絡は後でメールで送るので良いですか?」
「わかった。じゃあ、悪いんだけどお椀3つお皿を1つ食器棚から出してもらって良い?」
「あ、はい。分かりました。」
俺は油を引き卵の液体を鍋に流し込み固まるのを待つ。
そして味噌汁の方も味見をした。
特に問題は無いのでお椀に入れる。
「悪いけど、舞美さん。だし巻き卵の鍋を見てもらってよいかな?華南さん起こしてくるから。」
「あ、分かりました…。」
俺は彼女の部屋に向かう廊下のドアを開けたらもう目の前に居た。
「…おはようございます…。」
「お、おはよう…。もう朝ご飯できているから椅子に座って待っていてくれ。」
「…は…い…。」
なんかテンション低いな…。二日酔いか…。
でもこの人そんなに飲んでいなかったきがするんだけどな…。
俺はだし巻き卵をフライ返しで巻いて皿に盛る。
「おし。できた。口に合うか分からんが食べてくれ。」
「はい。いただきま~す。」
俺らは挨拶をして食べ始める。
「このだし巻き玉子美味しいです。やっぱり朝ご飯でパンも良いけど日本人として和食が一番ですよね?」
舞美さんの方も気に入ってもらえたようだ。
良かったぜ。日頃の料理鍛錬が生きたようだ。




