第56項「居酒屋での談義⑧」
お待たせしました。更新遅れてすいません。
居酒屋談義終了です。
俺と新島先生は、先ほど注文した味噌焼きおにぎりとお茶漬けで〆を食べている。
俺は焼きおにぎりは醤油ベースのも好きだが、どっちかと言うと味噌ベースの味付けの方が好きである。
まあ、原材料はどちらも大豆であるからそこまで言う必要は無いかもしれない…。
さと美さんは、残ったお酒を楽しんでいる。
彼女の頬はまだ赤く染まっては居ないことから、身体的にはまだまだ飲めるのであろう。
「そういえば、新島先生が小説家としてデビューする為に東京に来る前はどんな女の子だったの?」
一番最初に新島先生に会った時に聞いた気もするが、とりあえず聞いてみよう。
「そうですね。前に私がなぜ小説家を書くようになったのかと東京に来て活動するようになった理由もさと美さんにお話しましたね。」
「そうだね、この業界に入ってくる理由ってけっこう人によって様々なんだなと改めて前に聞いた時に感じたよ。俊明君は知っているの?」
「ええ、前に大学に居る時にこっそり教えてもらいました。僕自身、小説を読むことは好きでしたが、自分が逆境に居る中小説を書くという立場にはなれないなとその時感じました。」
「高校時代は特に暗い生活でしたね。今はだいぶ自分の中では改善された方なんですが、
昔はとにかく人見知りで、友達もできずほとんど1人で過ごしていましたね。」
新島先生はそう自身の過去を振り替えている。
「へえ、過去にそんな事があったようには見えないけどねぇ。部活とかは所属していたの?」
「高校時代は全員所属する必要は無かったので部活には入らずアルバイトをしていましたね。」
アルバイトか…。俺も放課後家の会社の事務作業を手伝っていたな…。
高校時代に早めにパソコンに慣れていたのは結果論では良かったが、あの時はラノベが読みたくてたまに仕事を放棄していた気がする。(おいおい…。)
「そうかあ。やっぱり高校生になると部活に全員が所属する必要が無い学校だったんだね。因みにどんなアルバイトをしていたの?」
「私は、本屋さんで店内に広告するようなPOP広告や本や付録を一つに袋に纏めたりする仕事をしていましたね。」
「へぇ~。その本屋というのは有名だったりする本屋なの?」
「そうですね、地元では有名で地域の公立の小学校から高校までの教科書を扱うのですが、チェーン店とかではなくて個人で営業している本屋さんで働いていました。あとは、年末年始とかは郵便局員補助として年賀状の配達員とかもしていましたね。」
働きすぎだろ。
「凄い、けっこう働いて居たんだね。」
「そうですね。この時くらいからうっすらぼんやりと東京の大学にいつかは行きたいと思っていたのでその時の為にせっせと貯めていましたね。」
計画性あるな。自立しているな…。
「ちゃんと計画している所が偉いわぁ~。中学時代は部活入っていたの?」
「中学時代は部活には入らず生徒会に所属していましたね。」
まじか…。生徒会かあ。俺はそういうのは全く興味なかったな…。
「そうなんだ。生徒会ではどんな役職していたの?」
確かに気になるな。良い質問だ。
「事務局員という文化祭や体育祭、卒業式といった行事を開催するにあたっての書類作成とかを担当していました。」
「なるほどね、じゃあもしかして”昨日別れたはずの生徒会長である彼女が翌日から自分の家族の妹になった件”の話って新島先生の中学時代の経験が反映されているという事?」
「そうですね。ただ、私が生徒会に所属していたのは中学時代の時で高校の生徒会の運営とは異なる気もしたのですが、そこは知り合いに生徒会の人が居たのでその人に生徒会の運営状況や仕事内容とかを聞いて自分の経験と組み合わせて書いている感じですね。」
俺もヒロインが生徒会で活動している場面はすでに何度も読んでいるが、まさか新島先生本人の経験が反映されていたとは思わなかった…。
「自分の経験が話のベースになっているんだね。」
「はい。この作品では主人公である男の子自体は1年生の時点で生徒会長に立候補し恋人になったヒロインと一度別れる時点では生徒会には属してません。その後親が再婚してヒロインが自分の妹となり2人が兄妹となって恋人だったときは分からなかったお互いの良さを互いが知ることで再び恋人になる展開です。物語の中盤でヒロインに生徒会に誘われた主人公は生徒会の事務局員として働くことになり最終的に再びヒロインが生徒会長を2年連続就任し男主人公の方は生徒会副会長にまで上り詰め会長と副会長が復縁し恋人関係になる話です。この男主人公が最初に就いた事務局員という役職の部分は私が中学生だった時の経験が大まかに反映されていますねぇ。」
「へぇ~そうなんだ。だから最初にこの作品のプロットを呼んだ時に事務局員がとてもキーになる事を書いてあったんだね。ちなみに次に提出してもらう奴がまさに生徒会長である元恋人で今は妹であるヒロインが兄妹としてではなく異性として再び好きになりつつある男主人公に生徒会に無理矢理入れようとするところだよね?」
「そうです。今、まさに執筆しているところです。ヒロインが男主人公にどう誘うかというところで迷っている感じですが、明日迄には完成させてPDF化してさと美さんのパソコンに送りますね。」
「分かったわ。たのしみにしています。さあ、そろそろ帰りますか。もう21:00近いしねぇ。君たちはここからまた電車に乗って西に行くもんだもんね。」
俺らは会計をして外に出た。
久しぶりに現金に触ってお会計をした気がする。
そう言えば、ふと思い出したけど、前に別の仕事で女性社長のボディーガードをやってその後どこかで食事にでも行こうと誘われたけどどうしよう。
めんどくさいしな。でもまた依頼してくれれば収入が入るからな。
どうしようかと一瞬考えたが、今はこの目の前に居る少し顔全体が赤く染まっている作家さんを何としてでも連れて帰らないと…。
そこまで酔っているようには見えないから大丈夫だとは思うが…。
こうして急遽開催された新島先生のアシスタント兼マネージャーの就任記念飲み会は終わった。
そう言えば、今日鉄道の日でしたね…。




