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第46項「幕話~新前華南side⑬~昼食編~」

昨日よりは長い新前華南sideストリーです。

私達は、授業を終えて食堂へ向かっていた。

毎週先輩と授業が一緒になる曜日は水曜日だけだが、その際1限終わるともう食堂に行くという流れができてしまっている。


「せんぱい~。今日の授業、先生にさされなくて良かったですね?」


私は少しからかい口調で投げかけてみる。


「ああ、本当どうやって答えれば良いかわからなかったから助かったよ~。」


先輩は安堵の表情を見せて、食券の機械の表示を見ながら何にしようか考えている。


1限の授業に関しては、私も発表するよう指されなくて本当に良かった。


発表していた人は現実に恋人がいるからなのか先生が求めている正解に近づいているようで先生からも良い言葉を貰っていた。


私的にこの授業を履修するのは失敗したなと感じている。

私がこの科目を選んだ理由は出席や小課題を提出することで評価される平常点が重視の科目であるからだ。


しかし、教わる内容が履修登録時に読んだシラバスに記載されている事と明らかに異なっているのだ。


確か本来ならこの授業は社会に出て必要になるマナーと言った一般教養を学ぶ授業だった気がする。


もういいや、考えてもしょうがない。

私もワンコインを入れてとんかつ定食と書かれたボタンを押す。


下から食券を受け取り定食のカウンターへ行く。

どうやら先輩の足取りを追うと同じ定食のカウンターにいくっぽい。


「せんぱ~い、今日は、フライ定食なんですね?」


「ああ、最近家での食事で肉しか食べていなかったからなぁ。魚は値段が意外と高いんだよ。しかも一人暮らしで自分の為だけに魚料理するのってけっこうコスパ悪いと思うんだよね。」


私は知った。魚は肉より値段が高いことを。


「確かに魚料理って下準備にも時間かかりますし、焼いたり、煮たりするのって結構時間かかりますよね。まあ、私はいつも舞美が作っているのを横目で見るだけなんですけどね。」


待って...。

今の情報だと私、あんまり料理しないつまり料理が下手であることが先輩に分かってしまうのでは?どうしよう。


でも今更訂正できないし、料理できないのも事実だし…。うう~ん。


「まあ、だからたまには魚が食べたいなあと思って今日はこれをチョイスした。華南さんはとんかつ定食か?けっこうがっつり行くんだな?」


え…?待って、とんかつは女性が食べると変だと思われてしまうの....?

品が無いとか女性は煮物でも食べてろとかそういう事ですか…?

これは何か言って切り返さないと、いや、返事しないと…。


「女性がとんかつ食べるのは変ですか?」


私は恐る恐る聞いてみる。


「ん?そんなことはないよ。それが好きなら周りの目線を意識して遠慮する必要は無いと思うし。むしろちゃんと食事摂る女性は良いと思うよ。健康的で。」


お~良かった。女性がとんかつを食べるのは問題ないって…‼

何か無実が証明された気分だわ。


それに先輩はちゃんと食事を摂る人が好みらしい。


これからも私は健康に気をつけてちゃんと食べます。(心の中で宣言!!)


「そうですよね。これで”変だわ”とか言われたらどうしようかと思いましたけど...。でも理解してくれたので堂々と胸を張ってとんかつ定食美味しく食べれますね。」


私の顔はたぶん満面の笑みで答えていると思う。

だってとんかつは小さい頃から特別な日はとんかつが食卓に上がったから。

それが今や自分で得た印税で、大学の学食で気軽に食べれるのは素晴らしい・・・

とんかつは最高の料理。


一方、先輩の方はフライ定食を黙々と食べている。

たぶん先輩がフライ定食を選んだのは、魚が単に食べたいだけでなく、揚げ物が食べたいと思ったのかもしれない。


確か前に先輩の家で朝ご飯を食べた際に、台所は揚げ物を容易につくることができるような広いスペースは無かった気がする。


やっと先輩が今日このメニューを選んだ本当の理由が分かった気がする。


「あ、そう言えば、今日の仕事の事なんだけどさ、今日は華南さんの4限の授業が終わった後に都内の編集部に行くから把握頼む。俺も向こうのスタッフに挨拶も兼ねて行くから。」


先輩は紙を見せながら私に伝えてくれた。

今は、大学生の先輩の顔ではなく仕事の顔になっている。

仕事の顔もカッコ良い~。


「はい、分かりました。ありがとうございます。」


私は返事をして最後のとんかつの一切れを食べる。うん美味。


「あと、確認なんだけどさ、仕事では華南さんはペンネームで向こうの人からは呼ばれている感じ?」


あれ、どうだったな。

でも確か仕事の名前だった気がする。

私自身はどっちで呼んでも良いけど向こうの人達は先生呼びにしていた気がする。


「そうですね。もちろん向こうの編集長や私を担当している人は私自身の本名も知っていますけど。」


先輩は少し首を捻りながら悩んでいるようだ。


「そうか、俺は華南さんが仕事している時はどう呼べばいい?”新島先生”って呼んだ方が

良いの?」


”新島先生”呼びも良いわね!!


「ああ、確かに、どっちでもいいですけど。一応プライベートと分けたいので仕事の時はペンネームにさんか先生を語尾につけて呼んでもらう感じで良いですか?」


「分かった。それで行こう。じゃあ、2限そろそろ終わって学食混み始めるからどこかへ

移動する?」


先輩はこうして私に人気が多い場所を避けてくれる。


こういう気遣いは仕事のためなのか、本人の性格なのか気になる点だ。


「そうですね。そうしましょう。」


”わかった”と頷き私達は食器が載ったお盆を返却台に返し建物を出る。


私の次の授業が行われる「ろ号館」の机と椅子があるようなスペースに向かっていた。


私も最近思うことがある。

なぜこの大学はいろは順で建物を管理しているのかと。

編入試験を受験した際も自分の試験会場が分からなくて慌てた記憶がある。

分かりづらい。これに関しては学生の事をもっと考えて欲しい点だ。


「華南さん、授業終わるのが16:15頃だろうから駅の改札の前のモニュメントのところに16:35頃に待ち合わせるという事で良いかね?」


前を歩く先輩の声が聞こえる。


「分かりました。それでおねがいします。私は授業の準備があるのでもう教室入りますね。」


本当はもっと一緒に昼休みを過ごしたいが、授業の予習をしたいのでその気持ちをぐっとおさえる。


「ああ、分かった。またあとで!。」


そう言って先輩は背中を向けて去っていた。


とんかつが美味であることには変わりない。



PS.あの日から23年ですね。

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