第140項「花火大会編 新前華南side㉗」
お久しぶりです。
いつの間にかブックマーク・評価増えていました。
ありがとうございます。
今項は第138項の華南sideの話ですね…。
風車の上の見晴らし台に立ち視界の先には彩が詰まった大きな花束が目一杯に次々と打ちあがっていく様に私は固唾を飲み見入ってしまった…。
映像や写真では見たことはあったけど実際自分の目に映った打上花火ってこんなに美しくて少し切ない部分を私達に見せてくれるんだなと思った。
普段の仕事や大学の時は契約を結んだビジネスパートナーという関係として一緒に居る時間が多いけど、今この瞬間は汎用的な大学の先輩と後輩という関係でこの場には2人だけしか居ない。
この状況は告白をする絶好の機会であると言えるが、そう簡単に気持ちを伝えるのって勇気もいるし簡単なことではない。
ドラマやアニメ作品で告白のシーンが出てくる時私はいつも”好き”という気持ちをただ述べるだけだけど、それを実際に体現している人の姿を画面で見る時本当にどれだけ勇気をふり絞って伝えようとしているのかと思って感心してしまうの…。
”告白”は必ず叶うものではないけど、人間は自身の心の中に現れる意中の相手に対して気持ちを伝えてきた歴史があるのを私だって知っている。
そして、今までは傍観者の立場に居た自分が”告白”するという位置に立っているというのは自身の成長なのか分からないが、この想いが例え叶わなくても今日という日に私は気持ちを伝えたい。
心臓の心拍数が隣で久しぶりに地元で見る打上花火に釘付けになっている先輩に伝わっているのではないか心配で手の中では緊張感で生まれたであろう湿気を感じる。
ある程度は決心はついたけど、先輩との会話の中でどうやってこの想いを切り出すかまでは考えて来なかったので、ここからはアドリブで自分が話したいことに会話を持っていけるようにしなくてはならない。
あまりコミュニケーション能力というか会話力が欠けている私には難解な事件だ。
私が今どういう気持ちで居るかを全く何も知らない先輩は満足そうに打上花火を見ながら大学4年生の1学期の出来事について話をしているけど、こちらも普段以上に会話の中で言葉選びをしている事は自分でも分かった。
先輩との話の中でどうやって告白に持っていくか…。
でも北の大地を超えて日本の首都にある大学に編入してから3カ月が経過しているけど、この期間で一番良かったこととしては先輩との出会いが一番の宝というかお金では買えない財産だと思う…。
私自身もこんな3カ月くらいで先輩への気持ちがここまで傾くとは予想をしていなかった…。
”恋は突然やってくる”とか聞いたことあったけど、どうやらこの言葉は間違いではないんだなと感じた…。
先輩が10年前に一度会ったあの時の男の子であることはたぶん間違いないと思うんだけど、そう思われる人に時を超えて再会する事になるとは思わなかった…。
肝心の先輩の方は全く気づいている様子は無いように見えるのは少し残念だけど、私だけが一方的に知っているというこの状態もなかなか面白いけど…。
いつか先輩が私にこの事柄を伝えてくることがあるのかと思うと少し心配でもあるので複雑な気持ちなんだよね…。
そして会話の内容はいつの間にか6月に初めて先輩と大学や仕事ではなく完全にプライベートとして二子玉川に出掛けた話を無意識に話をしていた。
そういえば、さっき健さんの仕事場で貰ったこの夏の仕事の予定欄に1週間ほど休みが記載されていたことを思い出す…。
6月に先輩とお出かけした時からもっと先輩の事を知りたいと思ったし大学や仕事以外にプライベートとして出掛けてみたいなと思ったことがあった。
渡された時に、私は新島みなみとして作家であるけど、普段はただの女子大学生なので気になっている人とかと旅行とかに出掛けられたらなという憧れは抱いていた。
私は先輩にこの夏に2人で旅行に誘ってみたら、嫌そうな顔はしていなかったので、もしかしたらこの告白も上手く行くかもしれないという謎の自信が生まれてきたが、先輩は提案した旅行を次期小説を書く上での調査を目的とした旅行で作家である私ととアシマネとして出掛ける事だと思っているかもしれない…。
もしそう考えていて私の事をただの作家であると認識されているだけだったらそれは辛いかもしれない…。
先輩の口からそう伝えられたわけでは無いけど、もしかしたら告白をしてもそう返事されたらその場では先輩を困らせないように笑ってごまかすかもしれないけど1人だけになった時には少し傷つくというか普通に悲しい気持ちになって涙が出てしまうかもしれない…。
でもまだ、そうだと決まったわけでもないしそもそも告白すらしていないのだ…。
先輩に旅行の話をするとなぜか男女で旅行に出掛けるのはまずいのでは無いかと聞いてきて、更に私が一応今人気の作家であるからそれが世間に露呈するのは良くないのではという話だった。
私が作家である事を忘れずに気を使ってくれたのは少し嬉しく思った…。
でも先輩は最初から宿泊の旅行だと思っていたような口ぶりだったので、私はわざとらしくからかって日帰りで行くという考えは無かったのか聞いてみる。
私だってもちろん先輩と宿泊で旅行に行けるのであるなら大歓迎だし行ける事が確実に決まったら当日まで楽しみすぎて全日は絶対に寝られない自信がある…。
からかってみると、俺を試しているのかと言われ私の本望で確かな気持ちである一緒に旅行に行ってくれるかを試したかったと説明したら、理由を求められて私はこの先輩がどこまでいっても鈍感であることに情けなさとやっと自分の気持ちを伝えられるお膳立てが完成したのでもうあとは伝えるだけだと己を鼓舞して口を開き始めることにした。
「”好き”だからです。」
やっと先輩に伝えられた。
言えた自分を褒めながらも先輩の反応を見るが、一瞬固まっていてその後に続くであろう言葉出てこないので伝わっていないのか若干心配になる…。
「何度も女の子に恥ずかしい事を言わせないでくださいよ?だから、せ、先輩の事をただのアシマネとしてだけでは無くて異性として一人の男性として好きだからです。」
自分が過去に執筆したことがある物語の登場人物には何度も告白の台詞を言わせたというか表現した事はあったけど実際、自分がこの立ち場に立ちたった2文字という短い言葉だけど好きな相手への愛情を本気で伝えるのは貴重な経験であることは間違いないはず…。
「うん。華南さんが言いたいことは分かった…。」
先輩が私が伝えた言葉を嚙みしめてから理解を示してくれたみたい…。
ふ~と安心する。
この後にどういう言葉が返ってくるのか心配だった。
でもしばらく待ってもその後に続くと思っていた言葉は返って来ない。
先輩も後輩に告白されて動揺しているのかもしれない…。
「それで、もし良ければ恋人として付き合って頂けませんか?」
”好き”と相手に伝えたらあとは仕上げの作業よ…。
私は男性と恋人として付き合いと思ったのは今回がもちろん初めてだ。
「すぐに返事をするのはさ、その~~…。難しいからさっき誘ってくれた旅行の時に返事をするのでも大丈夫かな?もっと早めに返事をした方が良いか?」
「いえ、自分の中でしっかり考えてくれてもらって大丈夫です。私も突然先輩に自分の気持ちを伝えたので、時間は与えますよ?でも時間をかけるのであれば悪い結果にならないことを願いますけどね?」
完全に現在の状況に動揺している先輩の姿に少しニヤニヤしながらも時間をかけて考えるのであるのなら良い返事を待っている事を軽めに伝えておく。
「ああ。なんとも言えないけど、全力で考えさせてもらうわ。」
「はい。回答をお待ちしています。じゃあ、この話は終わりです。たぶん時間的に次が最後の花火の打ち上げじゃないですかね?」
「ああ。最後だからかなり大きくて迫力があるのが打ちあがるのかもな?」
私はこの会話を一旦終わりにして最後の花火を楽しめるように意識をそっちにむかせようとしたが、先輩は告白前とは明らかに違った表情をしていたのが分かった。
「ド~~~ン~~。ピカピカ~~」
暗闇に大きく映る最後に豪快に複数発の花火が打ち上げられそれらの光が大きく花火会場を照らしているその姿に圧倒されながらも私の最初の花火大会は告白と合わせて終了の鐘が鳴ったのだった。
長かった花火回は終了。




