第126項「期末考査明け1発目の連日勤務~with華南①~」
俺は、スマホのメッセージアプリを立ち上げ昨日の午後に健さんとさと美さんとのグループチャットに飛ばして返信が表示されている新規メッセージを確認すると、午後から健さんの仕事場に行っても大丈夫という許可が取れたので、華南さんの試験が終わり次第そちらに伺うメッセージを飛ばす。
現在華南さんを含めて多くの学生が2限の試験科目を受けているのでキャンパス内に人影は見当たらず歩いている人も数人くらいしかない。
大学の試験には試験が開始してから30分が経ち問題を解き終わって提出しても大丈夫と言う人は部屋を退出しても良いという仕組みである。
試験開始時間から30分が過ぎたのでそろそろ構内に人が出てくる頃だろう…。
俺はスマホをスクロールしながら舞美さんの次の仕事がいつだったかを確認する…。
どうやら明日のようだ。
ここ3日間くらいは、華南さん、舞美さんの試験勉強をサポートする為に彼女らの家にお邪魔し自分が寝る時以外は朝から晩までその場所に居た。
試験勉強の合間の彼女らとの会話でこの夏こそは1日だけでも良いからまともな大学生らしい休暇を取りたいと思っているが、早速明日・明後日と連勤で双子姉妹の仕事のサポートと言う仕事があるのだ。
口だけは言ってその通りに実行できる気がしないんだよな…。
昨年だって同じこと考えたけど忙しすぎて仕事以外何も出来なく丈瑠に長期休暇明けに何をしていたか聞かれて何も答えられなくて大学生らしく遊べと言われた気がするもん。
そんなことを思い出しながら俺がいる場所に向かって手を振って歩いてくる人が居た。
「よぉ?トシ?お前は試験は無いのか?」
いつ見ても身長は低いけどそれ以外の欠点は見た目だけでは見当たらないイケメン男子こと丈瑠がこちらにやってきた。
俺は長い付き合いなのでこいつの内面の方でもいくつか欠点があるのは知っているがそれを知っている人は少ない。
「ああ、俺は試験は無くて華南さんの試験が終わるのを待っているところだ?丈瑠は?」
「あ、俺も試験は1限で終わって今彩乃が2限の試験を受けているからそれ待ちよ~。」
彩乃と言うのは(本名)宮山彩乃といってこの低身長イケメンの恋人に当たる人だ。
「そうか、お疲れさんだなぁ。」
「トシは華南さんの試験が終わったらこの後どうするんだ?」
「この後は午後から健さんの仕事場に伺う事になっているから華南さんがこの場所に来次第大宮に向かう感じだなぁ…。」
「まじかよ?せっかくなら一緒に帰ろうよ?あ、でももしかしてこの後2人で一緒にご飯食べてから行くという約束とか在ったりする?」
「特には無いけど?」
「トシ、お前そろそろ華南さんに次のデートとか誘った方が良いんじゃないのか?前回のデートから1カ月以上は経っているぞ?」
「う~~ん。それは分かっているけど、この夏は俺も華南さんも仕事のスケジュールは既に8割以上埋まっているからなぁ~~?難しい気がする…。」
「もうそんなに先の事が決まっているのかよ~。俺が母さんたちに一言言おうか?トシと華南さんのデートができるくらいの日程は開けられるようにもう一度仕事のスケジュールを組んでくれないかって?」
「気持ちは嬉しいが、そんなことはしなくて良い…。自分の事は自分でやるから大丈夫だ!」
「おう、そっか…。トシも少し変わったよなぁ?考えとか服装等の意識とか…。」
「どっかの腐れ縁のおせっかいな幼馴染が“大学生らしい事をやれっ!”ってうるさいからなぁ。自分の周囲の環境が更に変化したからじゃないの?」
「ただの腐れ縁と言われると少し悲しい気持ちになるが、間違ってはいないからまだ許すけど…。おせっかいと言うのはちょっと気に食わないなぁ?俺がせっかく女性とのデートの際の必勝法とか伝授してやったのになぁ?」
「あ、それは失言だったわ。ごめん。俺が教えを乞ったんだった。それにしても健さんもさと美さんも前々から思っていたけどさ自分達の息子より長い付き合いではあるけどさ、俺にけっこう構ってくれるよね?なんか妙にいつも優しいし?」
「それだけあの両親もトシの事を厳さんや悠梨さんと同じくらい大事に思っているってことなんじゃね?」
「まぁ、ありがたい話だけどなぁ…。でも健さんにもさと美さんにも聞かれたけどもうちょっと自分達の息子の恋愛に興味を持ってやれよ~と思う事があるなぁ…。2人から丈瑠が告白はバカみたいにされているのに付き合うのは初めてという女性はどういう人なのかね?と聞かれたんだよね?」
「バカみたいに告白って酷い言い草だなぁ。あの両親。その質問を振られてトシはなんて答えたのさ?」
「“俺も大学では週に一度くらいしか会わないし恋人が居る事自体も知らないですね…。”と言って返すことが多いかなぁ。もちろん丈瑠に恋人が居るのは知っているけど、俺の口から話すのってなんか丈瑠に失礼だしなぁ…。」
「別にそんなことくらいわざわざ隠さなくて話してしまって良いのに…。まぁ、ありがとうなぁ…。」
「じゃあ、今度聞かれたらはっきり伝えるわ。あと、俺が1年生だか2年生くらいの時に巻き込まれた丈瑠と宮山との喧嘩?みたいな奴も詳細に話させて貰うわ。」
「待て!!俺と彩乃が恋人であるのは別に大きな問題ではないし全然伝えても良いけどさ?その情報を漏洩するのは勘弁してくれ!絶対あとで2人に呼び出されて説教になる気がするから…。それだけは勘弁して欲しい。」
「冗談だよ…。さすがにそんなしょぼいことはしないわ。」
「冗談にしてはまじで心臓が飛び出るくらいの怖い冗談を聞いたわ。」
「それで、宮山とはまだ付き合い続いて居るのか?」
「ふ~。トシから聞いてくるなんて珍しいなぁ?」
恐ろしい黒歴史を両親にばらすと言う恐怖が冗談だと分かり一呼吸をして言う。
「まぁ、あれだけめんどくさすぎる喧嘩に巻き込まれて解決の手助けまでしたんだからな。それに全く俺は顔なじみもない女性に自分が丈瑠の幼馴染であることを明かして2人の仲介役を買って出たんだからこんなことを聞いたって良いだろ?」
「そうだな。あの時の事は今でも本当に感謝しているよ。彩乃とはお互い就活とかで忙しいから毎日会えている訳では無いけど、月に1回休日に予定が合う日を見つけ一緒に過ごそうという事はしている。大学の授業で講義とか一緒に受けるという事もあるからなんだかんだいって週に1度くらいは話したりしているんだけどなぁ…。」
「まぁ、大きな夫婦喧嘩が無くて仲良くやっているなら良いんじゃないのか?」
「トシ、夫婦では無いけどなぁ?まだ恋人だから!」
「でもいままだって言ったからいずれは夫婦になるんじゃないの?もしくは夫婦になるって丈瑠は決めているんじゃないの?宮山がどうか知らないけど…?」
「あら、私がどうしたの?私を公衆の面前で膝を怪我させた陰キャ男子さん?」
言っていることに間違いは無いけどなんか言い方な…。
「げ? 突然会話に入ってくるなよ~? 宮山…。」
「よう!彩乃…。試験終わったのか?どうだった?」
「たぶん満点だとは思うわ。あんなのただの暗記だし…。」
このように言う自信家の女性はさっきも話したが俺と丈瑠の会話の中で出てきた丈瑠の恋人である女子大学生だ。
俺はこの人は犬猿の仲までは行かないがお互い仲は良い方ではなと思うし苦手なタイプ。
「あ、せんぱ~い。お待たせしました~。試験終わりました~~。あれ?丈瑠さんにそちらの女性は確か…、丈瑠さんと彼女の宮原さん…でしたっけ?名前覚えてなくて間違っていたらごめんなさい。」
宮原って地名じゃん…。(笑)
「おお試験どうだった~? 華南さん~。」
「ええ、先輩に教えてもらった問題が出て少し感動しました。たぶん満点だと思います。これで試験は終わって夏休みを謳歌出来ますね!!せんぱい~!!」
この人も満点狙いの人なのか…。
試験で満点を狙うという発想がおかしい。俺なんか一度もそう思ったこと無いな。
俺の周りって両親や妹も含めてハイスペックな人多いなぁ。
比べてみると俺ってそこまでインパクトあるようなスペック無い事に気づく。
「そうか。」
試験明けで目を輝かせながら長期休暇が始まることにわくわくしている顔を見ながら相槌を打つ。
「よし?帰るか?大宮に。トシ。彩乃、華南さん?」
「え、なんで新前さんとこのもやしも一緒なの?」
この流れだともやしって俺の事を言っているんだよな…。
なかなか酷いネーミングセンスだな…。
「私の名前知っているんですね?」
俺の名前の方に華南さんが何かフォローを入れてくれるのかと思ったけどそんなことは無くなぜ自分の名前を知っているのかについて宮山に聞いている。
「前に一度授業で一緒になったことがあってその時に聞いたことがあったのよ?でも丈瑠なんで新前さんも一緒に丈瑠の家に行くのよ?」
「トシの事は前に少し”にこたま”に行くことを彩乃が俺に前日に連絡して急遽翌日にデートした時に話したけど俺とトシは住んでいる家が隣同士なんだ。華南さんは俺の父親に用があるんだってさ…。」
二子玉にデートって。まさかとは思うけど俺が華南さんと一緒に出掛けた同じ日では無いよな?
さすがにそんな偶然は起きるわけないか。
「つまりこのもやしじゃなかった高島と家も近い幼馴染同士だったわけね。良いね!幼馴染っていう関係。憧れるわ。私もそんな幼馴染欲しかったなぁ。新前さんが丈瑠の父親に用事って彼はたしか丈瑠から聞いた話だとアニメの総合監督だよね?会ったことは無いけど…。その人に用があるってことはもしかして新前さんって来年の1月のアニメ化公開に向けて進めている”昨日別れたはずの生徒会長である彼女が翌日から自分の家族の妹になった件”の作者の新島みなみ先生なの?」
俺の事をもやし呼びからから苗字呼びに格上げされた!!
やったね。
一人で心の中で喜ぶのを横目に華南さんのセカンドフェイスが簡単な推測で露呈したことに対してどう出るのかを見る。
「は、はい。そうですね。まさか推測で私の仕事名が言われるとは想像できなかったですけど、そうです。」
「そうなんだ。私もあの作品のファンなのよね~~。大丈夫よ。このことは決して他の人に伝えないようにするしそれがファンが守るべきルールだと思うし。」
「あ、ありがとうございます。でもなんで私が作家であることが分かったんですか?」
「勘?かなぁ。強いて言えば今年のGWの大宮で行われたイベントの時で初めて見た時の人とどこか印象が似ている気がしたからかなぁ。」
「まぁ、この4人の仲が深まって来たところでとりあえず駅に向かおうか?」
「はい。」
「え、私、まだこのもやしの事良く知らないし。仲が良くなったというほどこの人の事知らないんだけど~~?」
あれ~~。俺の名前の呼び方が格下げというか戻っちゃったよ…。




