第117項「小山柚乃果との過去の思い出話」
俊明と丈瑠、柚乃果の中・高時代の話がでてきます。
「それで、柚乃果さん。先輩は、中学・高校の時はどういう人だったんですか?」
「そうね。どこから話せば良いのか分からないけど、中学時代から話せば良いかなぁ?」
「さぁ? どこまででといってもなぁ。」
「大体全部話しても良いという本人の許可が得られたから中学時代から話していくね?」
「俺、いま全部話して良いって言った?ねぇ、言ってないよね?」
「じゃあ、華南ちゃんに伝えてはならないことなんてある?」
急に冷たい声出すのやめろよ?しかもその顔なに?怖いんだけど…。
「う~ん、たぶん無いとは思うけど。出来れば余計な事は言わないでほしい気もする。」
「せ、先輩、私に言えない事とかあるんですか?」
「どうだろ?小山がこれからどういう事を話そうとしているのか見当がつかないからな。一応釘を刺しただけだ。」
「まぁ、華南ちゃんも高島さんの中学・高校時代の話なんて聞いたこと無いだろうし教えてあげるよ?」
「ええ? 良いんですか?」
「良いよ。かなり多くの伝説を持っているのよ?この男は。中学時代の話からしよっか。」
わざわざそこの文章さ、倒置法で言う必要ある?
「はい。楽しみです。」
華南さんの目がとても輝いていて興味津々という顔をしている。
俺もとりあえずは黙って聞くことにした。
「私は高島と中2、中3と同じクラスだったことは話したと思うけど、図書委員会で2年間一緒に活動をしていたのよ?」
小山さんに言われて思い出し始めたけど確かに中学時代図書委員会に属していた。
誰か1人は委員会活動や係活動をやらなければならず厭々でそこに中2の時は入った覚えがある。
「へぇ。当時から高島さん、本を読むことが好きだったから図書委員会に入ったんですか?」
「まぁな。中学時代にライトノベルに出会ってからそれ以外の本も読むようになったのさ。それでその委員会に入ったのさ。」
「それで、最初に高島との第一印象は最悪だったね…。今よりはましだけど髪が多くて特に前髪が長くてね。表情が見づらい女子とかは自分の周りにもいたけど男子でそういう人はいなくてね。でもいざ話してみると意外と私が話しやすいように会話に工夫をしてくれて案外良い奴なのかもしれないと思ったのよね?」
「あ、私もそういう感情を持ったことあります。先輩と話す時っていつも相手が返事しやすいように言葉のボールを飛ばしてくれるんですよね?ただ、たまにすごいずれているというか鈍感な部分が露呈してしまう場面があるんですよね?」
この人俺の事、鈍感・鈍感っていうけどさ、どこが駄目なの?教えて。
「華南ちゃんもそう思ったことあるんだねぇ。それで図書委員会の活動も本人の前で言うのはなかなか失礼だけど仕事はちゃんとこなしてくれるし。毎月クラスの図書委員が2人1組で図書館便りみたいなものを司書の先生と作成するんだけどその時も限られた紙面の中でどう自分達が伝えなければならない情報を伝えられるかとかそう言った構成とかも真剣に考えている姿を見て凄いなと思った記憶があるなぁ。」
「いっつも俺に対してすごい毒ばっかり吐いていて、かなり冷たかったから小山がそういうふうに思っていたとは知らなかったわ。」
「あら?そんなに毒吐いていたかしら?」
俺はかつてこいつに毒娘と呼んでいた事をすっと思い出してきた。
「ああ、丈瑠以外の話しかけてくる男子にはかなり吐いていた気がする。それになんか知らないけど俺に対してすごい吐いてくるなという話を丈瑠とした気がするわ。」
「自意識過剰なんじゃないの?」
なんかさっきから冷たい声が聞こえるな。
「それは無いわ。話すたびに毒を吐かれていたわ。それに一番最初にこの部屋に来て華南さんが俺を紹介しようとしている時から毒吐いて皮肉も混じっていたじゃんか?」
「あんなのいつもの私にしては挨拶程度よ?」
「あれが、挨拶ってかなり酷いな。」
「そう?だからね。けっこう委員会では高島と絡みがあったのよね?」
「全然覚えてないなぁ。そうだっけ。」
「何も覚えていないのね?あんたは。勉強は丈瑠と比べるとあんまりだったよね?」
この人会話の際に倒置法で話すのが特徴なのかな…。
「そもそも学業とかに関して丈瑠と比較すること時点で大きく間違っているわ。俺は成績はいつも平均程度だった気がする。そういえばさ、小山ってけっこう成績良かったよな?今考えるとなんで大総に入ったの?」
大総とは、俺や丈瑠、そして小山が卒業した大宮総合高校の省略形の呼び方である。
読み方は“おおそう”である。
余談だが、妹の聖奈は現在大宮総合高校3年生である。
「確かに成績はあんたよりは良かったけど、偏差値が高いとさ長時間勉強とかを強いられるからさ高校に進んだら少しは遊びたいと思っていたからかな?」
俺より成績がよかったことを再び強調しなくて良いから。分かったから。もう。
「あとは、知っている人がいる高校に行きたいと言うのもあったかな?」
なるほど、つまり自称恋愛マスターで美男子の丈瑠と一緒の高校に行きたかったわけか…。
「でも高島の本当の意外性について語れるのは高校時代だよね?」
なんかエピソードあったかな?
「そうなんですか?先輩?」
華南さんは聞いてくる。
俺が返事をする間もなく小山が答えていく。
「私は、高校時代は学科が違ったから丈瑠とも高島の2人とは一度も同じクラスになったことはないんだけどね?」
「そうなんですか?高校で普通科以外に学科とかあるんですか?」
「うん。そうだね。大宮総合高校って普通科の他にも多種多様な学科が設置されているのよ?そして学校の3分の2以上の生徒が女子生徒が多いのよ?」
「え、じゃあ男子生徒とかいくらでもという言い方はあれですけど、女子にアタックできるじゃないですか?」
華南さんは驚いた顔をしている。
俺だって入学した時はこんなに女子生徒が学年に居るとは想像をしていなかった。
「そういう事になるわね?逆を言うと男子の中に一人でも美男子が居るとその男子に告白をしようとする人が溢れるのよね?例えば丈瑠のようなね?」
「確かに丈瑠さんって女子に対して優しそうでモテそうなタイプな気がしますよね。」
「そしてその美男子の番犬としていつもそばを離れないで一緒に居たのが華南ちゃんの横に居るその男なのよ?」
「番犬って言い方な?」
確かに俺は常に丈瑠と一緒に居る事が多かったので、高校時代に陰でそう呼ばれていた事をこの会話をしていてさらに思い出してきた。
「あれ、違うの?丈瑠が告白される場所に同伴する過保護な親と呼び方の変更をしても良いわよ?」
「言っていることに間違いは無いし事実だけどその言い方なんか気に食わんないなぁ。」
「でも実際問題、丈瑠に告白をした女の子に聞くと告白した場所の付近にいつも待機しているって当時言っていたわよ?」
「まぁ。そうだな。」
小山が言っていることは間違いでは全くなく事実である。
「そういう風に悪く言う女子も異端だけど、丈瑠の唯一の欠点は身長が余り高くないことと身体能力が学業と比べて標準レベルなのよね?」
「え、そうなんですか?私は完璧超人なのかと思っていたんですけど、弱点もあったんですね。少し意外です。」
「みんなこの話を聞くと驚くんだよね?むしろそこの番犬の方が運動に関しては中学も高校の圧倒的な成績を修めていてね、下校時に高校の門の前で不良男子に絡まれている丈瑠を見つけてその自称喧嘩強い複数の群れがその番犬を襲ったのよ?さすがに私もそいつが武道をやっていたのは知っていたけど実力は全然知らなくて。全員を屈服させるのは無理かもしれないと思ったんだけど、一瞬でその5人くらいの不良たちは正門前に転がっていたんだよね?」
「すごいですね?そんな武勇伝があったんですか?先輩?」
「ああ、なんかそんなのあったかもな。忘れたけど…。」
思い出したくなかったし華南さんにも伝わってほしくなかったのに…。
一番これを伝えて欲しくなかったのに…。
「あの時に番犬を囲って前後斜めから拳や蹴りが出ていたけど秒速で処理をした際の彼の表情ほど恐ろしい物は無かったんだよね。その一件で校長先生から模範生として表彰を受け、番犬に対して良いイメージを持っていなかった女子達も複数人の不良を潰したことで彼のイメージが改善されてね。ただ同時にその番犬を敵に回すと大変な事になると分かってから比較的平和だったのよね。」
「それってもう学校の英雄じゃないですか?すごいですね?先輩?」
「丈瑠の奴が校門のところでふらふらしているからあんな事になったのにな。丈瑠の不注意が招いたことだけどあいつは運動に関しては疎いからいつも勉強を教えてもらっている丈瑠の恩を返そうと思ってとっさに相手になったんだろうなぁ。あんま覚えてないけど。」
「でもその事件以降、番犬を好きになる人とか告白する人とか現れるのかと思ったけど誰一人居なかった気がするもん。なんで?」
「ふん。知るか。そんなの…。あまりにも陰キャ男子過ぎて興味無かったのかもな。まぁ、俺は丈瑠と一緒にいて色々面倒な事に巻き込まれたりしたこともあったけどなんだかんだ言って楽しかったし。」
「そんなことはどうでも良いわ。それに陰キャ男子なのは今も外面はあの時よりはましになったけど考え方は陰キャ時代と大差ないけどね?」
そこわざわざ触れなくて良いだろ?
「俺も幼馴染の恋を応援するのに必死で自分の事まで手が回っていなかったんだろうな。それに当時から恋人とか興味なかったんだろうけどな…。」
「私は一度誰かさんにもし告白したらどうするって一応言ってみたんだけどね?盛大に断られたんだよね?からかうのもほどほどにしろって言われたんだよね~~。」
「そうだっけ?告白をしたのは丈瑠の間違いじゃないの?それかまた別の男子か?」
「はいはい。そうだったかもね。当時から自分の事以外や仕事に関しては名前にもある様に俊敏なのに自分の事になると昔から鈍感なところは久しぶりに話していても相変わらず変わっていないよね?」
そう俺に言った際にドアが開いた。
助かる。
「お待たせ?そろそろ仕事始めるよ~?ごめんね~~。遅くなって!」
「健さん、もっと前からその扉の前に居ましたよね?」
「え、なんの事?」
「とぼけても無駄ですよ?既に湯呑に入っているお茶なんか見た感じ冷めていますけど?」
「あ、さすがトシだな。かなわないなあ。少し君たち2人の青春時代の話を楽しませていただいたよ?」
こうしてかつての中学・高校の俺をある程度知る女子とのプライベートな思い出話は幕を閉じたのだった。
大宮総合高校は今後色々な場面で出てくると思います。




