第11項「帰宅中に濡れた彼女を拾う」
本編戻りますよ。
俺は、大学のキャリアセンターでの用事を済ませ建物の外に出た。
地面がけっこう濡れている。
湿度が高く大雨が降っている。
まじかよ、朝、登校前に確認した時に天気予報では雨が降るなんて言っていなかったのに。
俺は傘を持っていなかった。
仕方ないので購買部に行きビニール傘を買う。
野口さん1枚の対価として傘を購入できた。思っていたよりも小さいサイズ。
この大きさで男の人が傘を差して歩くのはかなり無理な気がする。
傘で守れる範囲は頭くらいで足元までは範囲外っぽい。使えない傘だな。
大きめの男性に合う傘も用意しておけよと思った。
俺は大学の敷地を出た。
多量の雨が俺の靴の側を流れていく。
大学の前が坂なので降り注いだ雨水が一気に坂を滑降する。音もえぐい。
人間も滑って降りれば楽かもしれないがズボンまで濡れる事間違いなしなのでやめておく。
急坂を降りて交差点を渡りまた坂を上る。
ここから駅の方面は歩道が狭く人が一人すれ違うのにも普段から苦労する。
そして大量の雨水が俺のスニーカーに直撃する。
俺の靴の中は両足とも水没しかけている。
冷たい水が俺の両足を包み込み指の末端部を冷やしていく。
夏の時期なら患部を冷やすと良いのかもしれないが、季節はまだ春。
いや、初夏である。
このままだと風邪をひきそうで怖い。
靴や服は後で乾かす必要があるな。
雨の日は作業がいちいち増えるから嫌いだ。
俺は、スーパーマーケットで食料品と仮に風邪をひいても大丈夫なように熱を下げる。
シートやゼリー飲料、スポーツドリンクなどを多めに買って外に出た。
さっきよりも更に天気が酷くなっている。
雷も鳴っている。困ったもんだ。
お天気予報のお姉さんもしっかり予想してくれよな。最近天気があてにならない。
俺は普段通っている公園を通り家を目指す。
すると、公園のベンチの所に女性がうずくまっていた。
最初は知らない人に声をかけるのは嫌だったのでスルーしたのだが、見て見ぬふりはまずいと思い声をかける。
「すいません、大丈夫ですか、かなり濡れているようですけど、傘お貸ししましょうか?」
その女性は無反応だった。
見た目は髪は濡れていてぐっしょりとしていて、服も透けていて見ているこっちとして理性を抑えるのにかなり危険な状況だった。
所詮俺も健全な大学生だからな。
すると、彼女の口から言葉がこぼれた
「なぜ、私の作品はあそこまで駄目だしされてたんだ。くそっ。前回の会議ではあんなに酷い言い方されなかったのに。なんで、あそこの文章訂正するの。一番私が大事なシーンだと思うのに。なんでなんでなんで…」
その女性は泣きながら絶叫していた。
幸いにも公園にはその女性と俺しか居なかったので問題はなかった。
恐らく仕事で何か自分が気に入らなくて上司にダメ出しを食らったのだろう。
叫んでいた女性を見るとそれは知っている顔だった。
そう俺が昔から応援している新島みなみ先生こと毎週水曜日の1限の授業が同じ新前さんだった。
「新前さん、言い分は分かりましたからとりあえず帰りましょう。家どこですか。」
彼女は無反応。返事なし。
お願いだから返事してくれ。
俺の声は届く気配がない。
「すいません、失礼しますよ。」
彼女の濡れた前髪をスライドさせ額に手を当てたらかなり熱があった。
恐らく30分以上は傘を差さず雨に濡れていたのだろう。
何やってんだろ。この人。
自分の身体の事考えろよと思った。
でも彼女はいつもかけているメガネを取っていて顔立ちが美しかった。
もしかしたら好みの顔なのかもしれない。
「新前さん、あなたのお宅はどこですか。返事してください。しっかりしてください。」
全く返事がない。
一応脈の方は動いているので意識が無いという最悪な状況は避けられた。
彼女はオフィスカジュアルな服装だった。
今日授業に居なかったから恐らく仕事に出かけていたのだろう。
俺は意識はあるが完全に目を瞑っている眠り姫を抱えさっき買ってきた食料等をリュックサックに入れて自宅まで連れて帰ることにした。
本当は彼女宅に届けに行きたいが彼女は家の所在について聞いても答えてくれないし、
ここにずっと放置していてもしょうがない。
まあ、後で何か言われたら正直に話せばよい。
とりあえずこの眠り姫の看病をいち早く行うために俺は自宅まで走って向かった。
傘を差すことはもうあきらめた。
というか、やり取りをしている間に風でいつの間にか壊れていた。
使えない傘め…。
野口さんの対価として買った傘は結局家まで持つことはなく変形していた。
雨はまだ本降り状態で激しさを増していた。
水たまりに足を取られそうで怖かったが歯を食いしばって彼女を胸元に抱え俺は大急ぎで帰宅した。
彼女の肌着が雨に濡れて大事なものが透けてしまっている状態なのはここだけの秘密だ。
まだまだ暑いので熱中症に
気を付けて下さい。
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