第109項「久しぶりのクロマツビルへ来訪②」
果たしていつまで定期更新できるのか
「そういえばさ、トシ君さ、なんか爽やかになって前より垢ぬけたよね?」
急に話の展開が変わったな…。
「そうですかね?」
「そう思わない?新島先生も?」
「え、ええ。そうですね。たしか1週間くらい前に髪を切ったんですよ?てか、髪を切ったのは高島さんですけど…。」
急に自分に振られて驚いた様子でとっさに思ったことを言う華南さんの慌てぶりを俺は見る。
「あ、そうなんだ。なんで切ろうと思ったの?前にこの場所で会った時は左の前髪が顔に隠れていたよね?さっき階段のところでカッコいい青年が新島先生と一緒に居るなと見ていて思ってさ、でも話している声とか聞くとトシ君だってなってちょっとびっくりしたよ?」
本当にカッコいい容姿を持っているのはあんたの息子だよ。…と俺は言いたい。
「あ、そうですか…。丈瑠にいい加減髪切ればって言われたんで、彼の行きつけのお店を紹介してもらってそこで切ってもらいました。」
「やっぱり丈瑠の仕業かぁ。でも大学生らしくて服とかメガネとかもカジュアルで都内で仕事している男性って言う感じが醸し出されていて良いと思うよ?」
「そうですか。ありがとうございます。」
俺がさと美さんに褒められるのってけっこう珍しいことかもしれない。
「新島先生はトシ君が髪を切った姿を見てどう思ったの?」
今までの俺だったらそんなに気にする事ではないと思うけど、髪を切って少し視界が広くなってみて自分という見え方が変化したので自分以外の人の意見は気になるな。
「一瞬高島さんか分かりませんでした。でも身長と、特徴的な心地よい声とかを聴いているとやっぱり高島さんだと分かったので、その前の高島さんと比べて雰囲気もかなり変わって正直言ってカッコいいなと思っちゃいましたよ?」
この人本当良い人だよな。それに少しはずかしがって言うのかと思ったが、はっきりと良いと言ってくれたのは印象深い。
「へぇ~~。どうよ?後輩の女の子に感想を言われたのを聞いてトシ君は?」
いや、お世辞でも嬉しいよね?こんな可愛い後輩でしかも異性に言われたらさすがに鈍感な俺でもときめくかもしれない。
「ありがとうございます。っていう感じですね?」
俺は褒めてくれたことは心が躍る様に嬉しかったが、決して顔には出さないようにする。
「まぁ。トシ君らしい無難な回答だね。じゃぁ本題に入ろうかなぁ?前回出してもらった原稿はね、特に訂正箇所は無かったからそのまま使うわね?」
新島先生に向かってさと美さんは話す。
俺は出されたお茶を飲みながらそのやりとりを聞く。
「はい。ありがとうございます。」
「それと、トシ君さ?金曜日の事なんだけど、また大宮に集合ね?健さんのアニメの制作所が大宮にあるからそこに16:00くらいに来てね。もしもっと早く来れそうだったら連絡してほしい。」
「分かりました。」
俺はスマホのカレンダーにメモをしておく。
健さんのアニメ制作所っててっきり都内にあると思っていたけど、大宮にあるなんてさすが大宮をこよなく愛する健さんらしさが自分の本拠地を作る上でもそれが現れている。
「それとトシ君さ?新島先生のアシスタントマネージャーの仕事を週に3回。月・水・金にやってもらっているけどさ、それ以外の日に新島先生の妹さんである舞美さんが読モを始めるようになってそっちの仕事も始めたんでしょ?」
「ええ、そうですね。」
「どう大変?」
「大変ですね。自分で仕事を引き受けたことではありますが、とにかく自分が休憩する時間がこれからどんどん無くなりそうですね。でも自分は暇な時間がある時の方が辛いので別にいいんですけど....。」
「なるほど、基本的にその仕事は火・木・土曜日に行っていく感じなのかな?」
「そうですね。なので、もしイベントとかに参加するとかなった場合早めにスケジュールの方を教えてくださると助かります。」
「分かったわ。こっちとしても配慮するわ。でも体調管理には気を付けてね?それで、仕事はもう本格的に始まっているの?」
「はい。ありがとうございます。まだ、これからですね。」
「どんな仕事をするの?話せる範囲で話して欲しい。」
「基本的にスケジュール管理とか舞美さんの健康管理とかに気を配る仕事が多いですね。あとは、送り迎えする必要があるのが少し大変な面がありますね。」
「舞美さんってけっこうモデル体型だから色んな服とか着こなせそうじゃない?そういう撮影風景とか見たりするの?」
「どうなんですかね?俺は基本的に服とか分からないので、細かいところはまだあまり分かっていないのでこれから勉強が必要ですね。」
「新島先生の仕事も大事だけど、もう少しその舞美さんの仕事の方にも興味を持ってやらないと解雇されっちゃうかもよ?」
確かにそれは言える。解雇されたら家賃が払えなくなる。
「それはやばいですね。そうならないように最大限配慮しますよ。」
「よし。今日はこんな感じでもう帰ってよいよ?大体話すべきこと伝えたし、新島先生はまた次に会う時までに原稿の提出お願いしますね?」
「はい。ありがとうございました~。」
俺たちはこの建物をを出ていつもより早い夕暮れの景色に照らされながら家路に着いたのだ。




