第104項「幼馴染に事後報告②」
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
俺は丈瑠に手錠はさすがにかけられていないけど、自由に動くことは出来ない状態になっていつも2人で話す食堂の上の休憩スペースに向かい合って座っていた。
「さぁ。洗いざらいこの間のデートについて全部話してもらおうか?被告人よ~?お前がやったのは分かっているんだよ?既に証拠が出ているんだよ?素直に話してみろ?ここで話せば特にお咎めは無いが、俊明がこれから話す内容によっては刑を執行するかもしれない…。」
丈瑠は机から乗り出していつの間にか被告人扱いになっている俺に向かって言う。
既に証拠が彼の手に握られているって…。
まさか、この間のお出かけの様子を全て見られていたのか…。
あれ程付いてくるなと言ったのに…。でももしかしたらそうではないのかもしれない。
後者の方にかけたい。
でも丈瑠がこういうことを言う時って本当に証拠を持ってくるからな。
内容によっては刑が課されるってどういう内容に触れてしまうとその範囲に入ってしまうんだろ?
「お前な…。俺らが今いる場所は警察署の取調室ではなくて大学の食道の2階の空きスペースなんだよ?もう充分良い大人というか大学生がなんで刑事ごっこ遊びしているんだよ?受けている俺が恥ずかしいわ…。」
「いや、この俺の今の状態に乗ってくれても良いじゃん?俊明の悪い点はとにかく乗りが悪いところだよ?まぁ、そんなことはもう良いな…。じゃあ俺の方から色々聞きたいことが山のようにあるからぞれに全部答えてもらうからな?この取り調べ時間は俊明に拒否権は一切無いからな?」
「え、無いの?」
おいおいまじかよ。
「当たり前だ。誰のおかげで華南さんとデートが出来たと思っているんだ?」
そもそもこの間の奴はデートじゃないし…。
ただのお出かけだから…。(←ここ大事!!)
いま丈瑠が話した内容についてこの後質問されるんだなぁと分かったので心の準備をしつつどんな質問にでも答えられるよう準備をする。
一番の心配は丈瑠の口車に乗せられて言う必要は無いことまで推測されて理解されて恐ろしい展開になるのだけは阻止しなければならない。
「そりゃぁ。丈瑠と健さんの支えによるものだけどさ…。質問によっては話せないこともあると思うが…。」
「ほう?話せないこととは何だろうね…?」
席の周りの人から見て、丈瑠はノリノリでとても楽しそうな顔をしているように見えるが、俺の方は絶望の顔をしているように見えるかもしれない。
「ふ~。まぁどういう質問が来るのか全く見当がつかないが、受けて立ってやる!!」
「じゃあ、この間のお出かけでぶっちゃけどこまで進んだ?」
「どこまでとは?」
「手つないだとか、キスしたとかさ?」
「ゲホゲホ。お前なぁ。最初の質問からいきなり爆弾落としてきたな?周りに人も居るんだからもっと声の大きさ落とせよ?恥ずかしいだろ…。」
「それで?どこまで行ったの?さすがに手くらいつないだんじゃないのか?」
「人の話を聞け!!手はつないでないわ。ただ、お昼ご飯を食べて映画を見て感想を言い合って少しウィンドウショッピングして帰っただけだわ。」
「ええ~。絶対なんかあったでしょ?そもそもどこに行ったんだっけ?」
「ふ、二子玉川駅近くにある大型複合商業施設に行った。」
「ほう~。”にこたま”か。トシにしてはオシャレな場所に行ったね?似合わなそう?」
「うるせー。そんなこと俺も分かっているわ…。駅に出て商業施設を目前にして歩いている人達とか見て、凄い場違いな所に居るなと思ったし…。」
「まあ、さっきのは冗談だけど…。でも”にこたま”なんて絶好のデートスポットじゃん?一日だけで遊びきれない場所だもん。それで駅に着いてすぐ映画を観たの?」
「いや、その映画結構人気だから席を確保するのも大変で事前に予約した時にどんなに早くても14:30上映開始しか無かったからな開始時間まで時間が空いていたから先に昼でも食べるかという事で喫茶店みたいな所に入ったんだ。」
「それで、何か起きなかったのか?事件みたいなのは?」
「お、起きてないわ…。」
こいつ事件好きだな…。さすがいま刑事役を演じているだけあるわ。
「本当かな…?華南さんはトシとデートに行くのが楽しみすぎてテンションが上がって食べさせて欲しいとか要求されなかった?」
「い、言われてない…わ。」
「本当は言われたみたいだね?トシはウソをつくときにメガネのブリッジ(鼻のところ)を顔に押し付ける癖があるからね?」
「本当お前って人の動き良く見ているなぁ?なんか引くんだけど?」
「そりゃあトシの幼馴染を18年以上もやっているんだから兄妹かと思うくらい一緒に居る時間が長いからね?」
「まぁ。そうだけどな…。」
もう丈瑠と一緒に過ごして18年以上も過ぎているんだなぁと感慨深さも感じながらも丈瑠にウソが見抜かれてもしょうがないなと思う自分が居る。
こいつにはウソはつけない。ついても見破られる。幼馴染って怖いわ。
「それで話してもらおうか?本当は華南さんに食べさせてと要求され食べさせたは良いけど、口に運んだスプーンとかをどうするか迷ってそのまま使うと華南さんと間接キスする事になるな躊躇したんじゃないの?」
丈瑠が言った内容がほぼ当たっていて怖さを感じる。
「おまえ、あの時にこたまに居てついてきたわけでは無いよな?」
「そんなことはしないさ。いくら幼馴染でもプライベートにはお邪魔しないさ?」
「丈瑠が言ったように大体合っている。大体な…。」
「やっぱりね?トシは華南さんに食べさせた時にどういう気持ちだった?」
「華南さんがあそこまでテンション高めで要求してきたのがまず驚き。そして年齢に関しては1歳しか差は無いけど先輩をからかうのができるのは凄い度胸だなとは思った。」
「俺が望んでいる回答はそうじゃないんだよ?」
「はいはい。オムライスをスプーンに華南さんの口元に運んだのはけっこう緊張した…。」
「オムライスを食べたんだね?ドキドキしなかった?」
あ、自分で何をあの時に食べたのか言っちゃった…。
丈瑠に誘導されている気がする…。策士かよ。
「ドキドキというか”まじでやるの?”ていう感じだったな。店内にそこまで人は居なかったけど、店内に居る他の客の視線もだけど店主の視線が強すぎて、その空間の中でスプーンを運ぶのは精神的に辛いものがあったし恥ずかしかったんだよな…。」
「それでそのスプーンで残りのオムライスを食べたのか?それって華南さんと間接キスじゃん?それ。」
「まぁ。そうなるよね?店主に新しいスプーンを貰おうかと思って店主を見たけど、何か微妙な雰囲気があったからもうそのまま行っちゃえていう感じてかき込んだという感じだね。」
「華南さんが口をつけたスプーンでなら行けるというとはある程度は彼女の事を意識することになったんじゃないの?」
「う~ん。なかなか刺激的だったなぁ、と感じた。」
「その反応じゃ華南さんも苦労するね。それでお昼食べ終わって映画を観た感じかい?」
「そうだね?」
「何かトラブルとか起きなかったのか?例えば席が予約されていなくて映画館のスタッフのご厚意でカップルシートに座る事になったとかさ?」
もうこの幼馴染怖いんだけど…。ストーカーか何かなの?俺の事好きなのか?
俺は決してメガネのブリッジを触らないように言い聞かせる。
「いや、それは無い。普通の席に座ったけど?」
「ふ~ん、何か隠されている気がするけど、まぁ深くは追及しないでおくとするよ?でもこれだけは聞きたい!!」
「なんだよ?」
「映画上映中で暗闇の中で華南さんと手をつないだりしなかったのか?」
「別にしないさ。普通に映画に集中したさ。楽しみにしていたんだから。」
実際のところは華南さんの方から清楚な声でからかってきて、手を握りあって最後の場面まで観たことになったことはこいつには意地でも秘密にしたい。
俺もまさか事前に予約したはずの席に座れずラノベでしか見たことが無いカップルシートに自分の座る事になるとは思わなかった。
それに丈瑠の質問に対してはかなり適当に答えているけど、実際はうす暗い部屋の中で華南さんの横顔を見ても息を飲むような美しさだなと思ったのも事実である。
ちょっといいかもなと感じる女性が隣に座りながら恋愛映画を見るというのはかなりのエネルギーを使うなぁという事が勉強になった。
「まぁ。今日の大きな取り調べはこの辺でしておこうかな…。」
「そうしてくれると助かる。」
「でもまだ聞きたいことはあるんだよな?華南さんと帰る前に次にどこかに行くという約束はしたのかい?」
「ああ。具体的な日にちはお互いの仕事の休み合う日次第だけど、次もいつか行こうという話にはなった…。」
「おお、良かったじゃん。ちゃんと俺が伝授したことを守ったんだね?」
当日のお出かけのあとの注意点に関しては丈瑠がかなり熱く語っていたことを思い出す。
「そうだ。」
「まあ。トシが一応だけど妹以外の女性と初めてお出かけして楽しかったのなら良かったんじゃない?父さんから伝言だけど、このお出かけでやった事とその時に自分が感じたことについてレポートでまとめてくるというのはもう言われているよね?」
「あ、あれって本気だったんだ?まじか何一つ手をつけていないわ。」
「まぁそれを頑張ってほしいとの事。ちゃんと伝言今伝えたからね?聞いていないと言わせないぜ?」
「へいへい。」
健さんが言っていたレポートまじで提出が必要の奴だったのか…。
めんどくさいな…。
「めんどくさても絶対出してね?父さんトシから話を聞くのめっちゃ楽しみにしているようだから…。ね?」
「はいはい…。分かったよ…。」
「それと?さっき正門に入ってきたときにトシの腕に絡まっていた華南さんの向かい側に居た人って新前舞美さんだよね?なんでトシにあんなにべったりくっついているの?」
「俺も分からん。なんかここ数日急に俺との距離が近づいた気はしていただけどな…。」
たぶん俺が舞美さんの読モのアシスタントマネージャーをやることになったことに実は嬉しく思っているのかもしれない。分からんけど…。
「舞美さんもトシの良さに気づいて華南さんに対抗して取り合いをしているように俺は見えたけど?もうこの大学の2大美女を両腕に備えるってもうこの大学に通っている男子は嫉妬の嵐だと思うよ?」
「安心しろ。別に事件は起きていないし。ただあの姉妹がやけに最近俺にべったりくっつくようになっただけだ…。」
「いま自分に起きている状況をもう少ししっかりと理解した方が良いぞ!のちのちひどい目を見る。気を付けろよ?」
「ああ。もちろんだ。そうなることは既に予想済みだからな対処方法は準備してある。」
「そうか。何か変なトラブルに巻き込まれたら俺に連絡して貰って構わないからな?18年間幼馴染をやっているからな。すぐにそのトラブル片づけてやるさ!」
「ああ。絶対にお前には頼みたくないけど、ありがと。」
「一応確認だけど華南さんと舞美さんのどっちが現時点で自分の好みなんだ?」
「言わなくても分かるだろ?丈瑠が思っている方が俺が気になっていて、また次もどこかに行きたいと思っている方だよ。」
「そっか。それが確認できて良かったわ。」
俺らは席を立ち別れる。これで幼馴染による事情聴取は終わった。




