表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/59

49、次の目的地は……


 いじけていても仕方がない。

 私は私で、この世界を楽しんで生きていくと決めたはず。


 となると、どう彼女と接するかの方向も決まった。

 時系列は違えど、私が同じ日本から来たことは彼女に言わない。


『それで、いいの?』


 心配そうな水の女神様の声に、こくりと頷く。

 なぜなら、同郷の人間だと知ったところで、片方が帰れて片方が残るなんて、彼女にとって重荷にしかならないと思うから。

 もしかしたら考えが変わるかもしれないけど、今のところ言わない方向でいくことにするよ。


 考えをまとめ終えた私は『祈り』の姿勢になって辺りを浄化する。

 ここ最近の、諸々まとめて感謝を捧げておこう。


 簡易的な法衣を身につけてきて良かった。どんな時でも巡礼神官の証は手元にあったほうがいいかもね。突発的な『祈り』に対応できないのは困る。

 法衣がなくても神官としての力を使えるけれど、それなりに格好つけておかないとね。周りへのアピールが必要な時もあるだろうし……。


 いつもより長めに『祈り』を捧げ終わった私が膝についた土を払って振り返ると、アイリちゃんが目をキラキラと輝かせている。

 急にどうした。


「……本当に神官様だったんですね」


「なんだと思っていたのかな?」


 思わず苦笑して返せば、アイリちゃんが頬を染めて「クリスさんってお兄ちゃんに似てる」などと言っている。

 アイリちゃん……さてはブラコンだな?


「さぁ、宿に戻るか」


「ディーンさん、ありがとうございます」


「……俺には、ずっとそれなのか?」


「え?」


「クリスさん、たぶん言葉づかいのことですよ」


 首を傾げる私の横で、ピンときたらしいアイリちゃんがこっそり(?)と教えてくれる。

 言葉づかいと言われましても。


「ディーンさんは年上ですし……」


「お前とそう変わらん。普通にしろ」


「そう言われましても……」


 困っていると、服をくいくいっと引っ張ってくる顔を真っ赤にしたアイリちゃんが。

 どしたの?


「ディーンさんのお願いを聞いてあげてください。私からもお願いします」


「なんで?」


「いいから! お願いします!」


「わかった、わかったから落ち着いて。少しずつ頑張るから、ね?」


 顔がどんどん真っ赤になるアイリちゃんが心配で、とりあえず無難な回答をしておく。

 ディーンさんが「でかした」とばかりに頷いているから、これが正解なのだろう。だけどなんだか納得いかない。

 まぁ、言葉づかいくらいでヤイヤイ言うのもおかしいし、気にしないでおこう。うん。







 翌日、港町のグルメは粗方把握できたため、出発前に教会に寄ることにする。


 いや間違えた。


 宿の裏にあった泉を始めとする、この近辺の神様スポットには『祈り』を捧げておいたから出発することにする。

 相変わらず神様たちの反応はうすいけど、この世界の神官にとってはこれでもかなり「神と対話」できるほうなんだと思う。


 教会に行くと、門の前に神官さんが待っていてくれた。

 中に入らないほうがいいらしい。


「すみません、うちの教会は開放的すぎるといいますが……」


「大丈夫ですよ。近くにいる神々には『祈り』を捧げましたから」


「おお! それはありがたいことです! さすが巡礼神官様ですね!」


 いやいや、主にアイリちゃんの今後について話していただけだから、感謝されても困るというかなんというか。

 それでもこの町の神官さんにとって、ありがたいことだったのだろう。

 チラリと奥を覗けば、女性たちがドアのところで鈴なりになっている。私の後ろにいるディーンさんもターゲットになっているみたい。

 セットでお得と言うとる場合か。

 これだと、ちょっとしたホラーになっちゃうよ……。


「それで、宿から連絡が入ったと思いますが」


「はい。神官見習いとして預かっていた『アイリ』についてですね。家族が待っているというのであれば、こちらは問題ありません。道中の無事を祈っております」


「ありがとう、神官さま」


 旅装姿のアイリがペコリと頭を下げている。

 彼女の持っている服が派手な色だったので新しく買おうかと思っていたけど、配色を変えることができるとのことで、申し訳ないけど地味な色に変更してもらったのだ。

 でも、若い子には好きな色の服を着せてあげたいんだけどなぁ……。


 ちなみに私は白基調なのがデフォだよ。それ以外だと巡礼神官と認知されないからね。

 この世界のキラキラしい人たちと違って、私の顔のつくりは地味目なのだ。やれやれなのだ。


「そうか? 銀色の髪や紫の瞳も、かなり目立つと思うぞ」


「クリスさんはオーラがありますからね! 目立ちます!」


 え、あ、うん、そう?

 二人の言葉に微妙な笑顔で応えながら、港町を出発する。

 次は……あれ? どこに行くんだっけ?


「その子が良ければ、行きたい場所があるのだが」


「アイリちゃんはどこからでも帰れるから大丈夫です……大丈夫だよ」


「そうか。ならば東に向かわないか?」


「東……!? もしかして、あの?」


「たぶん、お望みのものも手に入ると思う」


「行く行く!! アイリちゃん、大丈夫!?」


「は、はい。大丈夫、ですよ?」


 一気にテンションが上がった私に少し引いているアイリちゃん。

 そりゃ、気持ちが抑えきれなくもなるよ。


 東といえば、アレがありますからね!!




 いざゆかん!!

 我らが至高のアイテム!! フンドシの聖地へ!!



お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] クリスさん、どしふんひとつでナニそのテンションw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ