【掌編】百合妊娠
愛する妻が、私の大きなお腹を撫でながら「元気で生まれてきてね」と優しくささやく。
私たちは女同士の夫婦ならぬ婦婦。医学発達のありがたいことで、女同士ながらiPS細胞というもので、子を授かることができました。
本当は互いの子供を同時に妊娠したかったけど、それでは働き手がいなくなってしまうので、私が先に愛する女の子を身ごもることにしたのです。
実は私はもうひとつ、iPS細胞の恩恵に預かっています。
私は神様の手違いで、女の心と男の体を持って生まれてきてしまいました。
その苦しみはすごいものだったけれど、iPS細胞で子宮も卵巣も作ってもらい、今では遺伝子以外は普通の女性として生きています。
お腹を子供が蹴った気がして、そっとお腹をさする。
私はなんて幸せ者なのだろう。今日も女の喜びを噛みしめるのでした。
「百合妊娠の妊婦側が元男」というワンアイデアから書き上げました。
TSタグを付けるとオチの壮絶なネタバレなので、あえて付けていません。
TS百合苦手な方には恐縮です。