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1話 覚めることがない夢?

「うーん、どうすればいいのか」


あれから、就寝して目が覚めた自分は元のボロアパートではなく相変わらず小屋で目が覚めてしまうことに困惑していた。


「これはあれか?明晰夢とかいうやつか?」


夢の中だけど、自由に夢の中を動くことができるとかいうやつだっけ。

だから夢の中で寝ていたとしても、夢の中で目が覚める?


混乱してくる…


少なくとも夢と割り切って目が覚める方法でも探すか。


「そういえばお腹空いてきたな、どうしようか…」


夢だからと少し安心感を得るとお腹が空いていたことに気付く。

小屋には何もない、一応木箱があるけど中身は本で『魔導書』だったり『魔法陣』『紋章学』など見ているこっちが恥ずかしくなるような本ばかりだった。

しかも全て手書きである。


「百科事典くらいの厚さがあるけど、全て手書きなのだろうか」


そしてこれって俺が見てる夢だから、俺の意識でもあるってことになるのかな…うわぁ恥ずかしすぎる。

まぁ所詮夢だし誰かに見られることもないわけだからいいんだろうけど。


と、今手に持っている魔導書や、外にいる動物たちを見ながらある設定が思い浮かぶ。


「…もしかして、異世界転生ものの夢ってことか?」


もう30を超えたおっさんだけど、こういう作品に心はときめくもので、少しだけ…ほんのすこーしだけ!ワクワクもしている。


「ってことはお決まりだよな!ステータスオープン!」


ここは夢だし、小屋どころか森の中に誰もいないのでお決まりのフレーズを叫んでみる。



ーーー



しかし、何も起きることなくかざした手に虚しさが込み上げた。


「え?じゃあプロパティ?オープン?えっと他には…あ!ウィンドウ!これもダメか、なぜだ」


よくある異世界転生だとしょっぱなで主人公がステータス確認する場面がお決まりだからと思い叫んでみるけど何も表示されることはなかった。

そういえば姿形は変わらないみたいだから転生ではなく、転送もしくは転移になるのかな。

あと、よく冒頭にある「あなたは死んだので異世界にうんたらかんたら」っていう神様みたいな人も出てこなかったし、天啓みたいなものも聞こえない。


「これはどうだろう、スキル!」


もちろん、うんともすんともしない。


召喚された訳でもないから、この世界がどうなっているかを説明してくれる人もいないわけで…

さらには現実世界とリンクして何かできるスキルや、とんでもない力が扱えるスキルが、何もせずに頭に浮かんで使えるとかもなく…


「なんかこれ辛すぎない!!?」


自分はどうやらただただ異世界に飛ばされただけらしい。

いや、手に持っている本をよくよく見てみると、そこにあるのは日本語ではなくよくわからん記号の羅列で、でも読めるようにはなっていた。

頭の中で英語から日本語、日本語から英語に変換しているようなイメージで、この世界の言語から日本語に変換されている感じ。


「まぁ通訳がいらないのは助かるけど…」


なんだか自分の夢なんだけど釈然としない思いが重なる。


「考えても仕方がない、まずは何か食べるものっと」


ひとまず、何か食べれそうな果実でも探すか。

というより、果実や草木しか食べれるものがないだろう。

今の丸腰の自分が、ツノの生えたウサギや火を拭く狼に勝てる気がしないし、そもそも捌き方もわからない。

あのブヨブヨした、おそらくスライムであろう動物はそもそも食べれるかどうかもわからない。


と、いうことで周囲を十分に警戒し森を散策する。

運良くおいしそうな実がなっている木を見つける。

見た目はリンゴのようなもので、手を伸ばせばすぐ取れるくらいの場所にいくつか実がなっていた。


「さてさて、お味はっと…」


一つをもぎ取り、むしゃりとかじってみる。

見た目はリンゴなんだけど、歯応えは桃に近い。

そしてお味は…


「限りなく無味に近い、けど酸っぱさが微妙に…」


甘さがあるとか、言葉にできないおいしさが口に広がって、とかなく。

かと言って見た目に反して辛い!とか変な味がするとかもない。


ただただ微妙な味が口に広がる。


「うーん、食べれない訳ではないし今はこれしかなさそうだからいくつか持ち帰るか」


特に危険な目に遭うことなく、小屋に到着する。

これからどうしようかと思い、再び本に目を向ける。


「魔法が使えたり、何かスキルでも身につけば違ってくるだろうけど」


今手に持っているのは魔導書の初級編みたいな内容で、自分の中にある魔力の気づき方が書かれていた。

どうやらこの世界には魔素というものに溢れているようで、自分の中に蓄積されている魔素を使ったり、周囲にある魔素を集めたりすることで魔法へと変換するようだった。

まぁよくあるファンタジーの設定と思えばいいのかな。


さらに、この魔素の練度によって魔法だけでなく、様々なスキルを使うことができるらしい。


「となると、自分がこの世界で生きていくためには魔素をどうにかしないといけないってことか」


そして、ひとまずの目標を決めることにする。

まずは魔素を使いある程度魔法を使えるようにすること。

次に狩りができるくらいに能力を伸ばして一人で食問題を解決できるようにすること。

ここまでできるようになったら、人がいる街にでること。


これくらいかな。


少なくともここにずっと引きこもっても何も起きないだろうし、食事がこの果物だけってのはつらい。

あと、寝ただけではこの夢は覚めないからその方法も探さないといけないだろうし、そうなるといずれにせよ力は必要になる。


「…本当に夢だといいんだけど」


と、夢と割り切ってはいるが、目の間に広がる感触は現実そのものであった。


「さてと、まずは魔素の感じ方からかな」


テキスト…もとい魔導書初級編のページを開いて魔法のトレーニングを始めることにした。

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