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ユピタルヌス戦記  作者: いのしげ
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ヴ帝国電撃訪問(後編)⑦


 「アンカー限界点突破! 船体か鎖か、若しくはどっちも千切れますッ!!」

 「アンカーボルト、切り離せ!」

 コンソールに一番近い、ハリデ上等兵がその長身を生かして背を伸ばし、アル中の手付きの如く震えながら切り離しボタンを押した。

 同時に艦前方で破裂の衝撃音が起きた。切り離ししたのか、甲板が持たずに千切れたのかもうそんなのはどうだっていい。バランスを失ったナザール・ボンジューは空中艦にはあるまじき独楽の回転で、明後日の方にひ(・)り(・)飛ばされてしまった。



 何時間経ったのだろうか…それとも刹那なのか……

 若しくはもうジャナーフ(天国)に来てしまったのだろうか?


 指先の感覚を確認し、動くことが分かってからノラは目を開いた。

 自動管制装置が働いたのか、艦内の殺人メリーゴーランドは収束している。

 各セクションの異常を警告するアラートが鳴っているものの、ナザール・ボンジューは存外平気な様だ。

 平気ではないのは乗務員で、全員壁にへばり付いてノビている。ノラもそうだったが、遠心力で振り飛ばされたのだ。

 ふと、片手に暖かく柔らかいモノを感じて目線を向ける…と、そこには幼き王女様が居た。

 無意識のうちに王女を抱いて庇っていた様だ。パッと見た感じ、外傷も無い。鼻に指を当てて呼吸を確認し、ホッとする。

 「…ん……ノラか。我々はどうなっておるのじゃ?」

 ライラ王女が目を覚まして向くりと起き上がった。多分起きたらすぐ訊かれる事くらい察していたノラだったが、モニターの異常をアチコチいじっても直せなかったので、ドブロクとヤスミンを起こしていたところだった。

 「は、陛下。今のところ問題ないかと思います。それより具合はいかがでしょうか?」

 「む…思ったほど悪くはない。デイル艦長はどうしたのだ?」

 「陛下の右にあるコンソールパネルの向こうに、“スケキヨ”の様に出ている足が恐らく艦長か…と」

 「“スケキヨ”? …何となくコレの事じゃな。それにしてもノラはよく知っておるの。こういう状態を“スケキヨ”と言うのか。また一つ賢くなったぞ」

 ライラが足を引っ張るのを見ながら、心の中で「違うんです、本当はデカが教えてくれたんです。どういう意味だか知りません」とノラは謝罪した。

 少しずつ叩き起こして、艦橋の乗務員全員の無事を確認、そして各種異常を元通りに復旧する作業だけで2時間近く掛かってしまった。

 その間ナザール・ボンジューは静かに浮揚し続け、敵に攻撃される事も無く穏やかな夜間飛行を続けていた。衛星イオが大きく黄色く明るく、艦体を照らしている。因みにどうでも良い事だが、ユピタルから観えるイオはスゴクデカい。

 「…復旧に2時間。しかしその間敵が来なかったという状況を鑑みるに、窮地は脱したとみるべきでしょうな」

 帽子を被り直しながら、溜息まじりにデイル艦長が呟いた。

 「現在位置はリットン辺境伯領とウスキュダル王国の国境沿い…あと1時間もしないで北部同盟内に入ります!」

 ヤスミン伍長が心底嬉しそうに報告する。

 「ということは……」

 「無事生き延びたって事だわな!」

 デカとオンがハイタッチした。途端に艦橋内に明るい歓声が響き渡る。

 「馬鹿ヤーロー! 機関室はズタボロだぞ。騒いでいる暇があるんだったら、手伝いに来やがれ!」

 マジド曹長の罵声がイヤホン越しに聞こえてきたが、もちろん誰も聞いちゃいなかった。

 「ノラ大尉」

 不意に真面目な声でライラ王女が名前を呼んだ。何事かと、クルー達が急に押し黙り、シン…となる。

 「貴方は普段では粗野で品性にも欠け、おっちょこちょいで、どうでもイイ事は話す癖に肝心な部分は言葉足らずです」

 「……」

 「だけど、戦時に於いては咄嗟の機転とそれに伴う実行力を兼ね備えており、また部下の意見もよく聞く、優秀な指揮官です」

 オオーッと歓声が上がった。ノラは気恥ずかしくなって頭をポリポリ掻いた。

 「よってここに、勲二等オルハン・パムク勲章を授与する事を確約します。それと、もう一つ良いモノを無事に帰った暁に授与する事を約束しましょう!」

 歓声が一段と大きくなる。

 「…い、良いモノ?」

 人生経験上、良いモノが良いモノだったためしが無かったノラが恐る恐る反復する。

 すると8歳の王女が悪戯っぽく笑った。

 「良いモノは良いモノよ!」

 「前方に艦影! 総員戦闘準備!」

 和やかな雰囲気を突如、ヤスミン伍長の声が切り裂いた。

 「前方に?…では―」

 機敏に所定位置へとスタンバイしたノラに、ハテナ信号が灯る。

 「うむ。ドブロク上等兵、IFF(敵味方識別信号)を確認せよ」

 察したのか、デイルがドブロクを促すと手慣れた感じでキーボードを打つ。ややあってドブロクがにこやかに報告する。

 「識別コード、グリーン。救援に来たスカルパント隊のアララトからです!」

 その日一番の歓声が上がった。無事に帰還した事を確認出来たからだ。


はい。とりあえず、ここまででこの章はお終いです。

原作のストックが尽きまして……そう、実はこれ、マンガが原作なんです。「ちょっとナニ言ってるか分からない?」…そうでしょうね。

「そもそも原作と言うかオマージュが『のらくろ』じゃん」と思う方、その通りです。でもその他にあるんです。 

この作品自体の構想は10年以上前なんです。そんで、設定を作って、初めマンガで描いていたんですね。

内容が内容だけに、どこかに持ち込みしようとか同人誌作ろうとかではなく、まだpixivとかも無い時代でしたので、本当に自己満足でコチコチ描いてたんですよ。

ほんの一部の仲間内だけに見せて、ソレで良かったんです。

でも…気付いたんですね。「アレ? マンガだと効率悪くね?」って事に。

そこで小説に直そうという事で、こうして「小説家になろう」に改めて書く事にしたんです。

なので、時々内容で引っかかる部分があるのは、マンガ版と小説版で名前を変更したり、数値を変更したせいでゴッチャになってる部分もあるんです。すいませんね、適宜直していこうとは思っております。

で。

漫画原作はここまでなんです。おおかたの流れと言いましょうか、どういう感じで話が進むのかの粗筋は決まっているのですが、これから先は未踏の世界です。少し進行が遅くなる事をご承知ください。

「今はpixivもあるんだし、マンガバージョンも出せば?」と思うでしょうが、アナログニンゲンなもので、アップする方法が今一歩分からないですし、何より絵が下手でして…お見せするの恥ずかしいのですよ///

とまあ、今まで以上に進行が遅れる懸念がある事、でもちゃんと終わらせるので、気長に待っていてねという事、以上2点のお知らせでした。


 

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