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ユピタルヌス戦記  作者: いのしげ
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ヴ帝国電撃訪問(前編)③


 

 それを形容するなら、一言でいえば“王の帰還”であった。


 イズミル隊どころか、近隣の部隊から祝福の歓声が上がって、さながらパレードの様相で歓声に包まれながら聖者の行進が起こっのだ。

 だが全ては非公式。

 初めから死んでいなかったし、極秘任務で姿を消していた事として、事務手続き上は処理された。

 だから勲章の話も無かった事になったし、二階級特進も消えた。

 それどころか原隊復帰の規則放棄もあって、降格の話すらも出た。が、ともあれ旗を届けるという任務は遂行した上、サンダリエ将軍の弔いを行った事によって尊厳を維持した事と。これ以上の士気の低下を防いだ功績も多く、差し引き+1という考え方の元に大尉昇進が伝えられた。

 「そうか……」

 昇進の話をドブロクから聞いても、ノラは薄く笑うだけだった。どれだけ星の数が上がっても、結局は捨て駒に過ぎない……そんな背景が薄く、見え隠れするのが分かってしまったからだ。寧ろ、使い勝手が良くなるという事はそれだけ無茶振りも増えるのだろう。全くご苦労な話だ。

 ノラの体力の消耗は激しく、あと数日遅かったらあのまま肺炎で死んでいたかもしれない。体重もごっそりと減って痩せこけ、疾犬やまいぬの様だ。

 しかし作戦決行の時間が無いとのお達しで、僅か一日の猶予が与えられただけだった。

 本当は隊長の帰還を祝って、皆でどんちゃん騒ぎたい隊員ではあったが、安静にしておく必要があるので、皆、それぞれ自室でささやかに酒の注がれた盃を舐めた。

 そうそう。デカは対象外だったのか辞退したのか知らないが、それ以外のイズミル隊員は皆階級が一つずつ上がった。

 デカ特務曹長が先任副官となり、ついで二等副官にメフメド伍長→軍曹が就任した。

 ドクズとセキズは伍長となったので、それぞれ分隊として狙撃班を形成する。

 イェディも軍曹となったので、弾幕担当の重機関銃班を作ってもらう。

 ギャルのオンは上等兵に昇格だが医療班なので今までと変わらず。

 ドブロクは伍長となったので、通信&輜重担当となった。

 細長いハリデは一等兵になったが、運転手であることは変わらず。

 今までは全て自前で給料を出さねばならなかったのだが、ノラ・シアンがいない間に軍閥解体が進み、だいたいの小隊や中隊、そして大隊は軍部に統括された。一部『方面軍』という扱いで、独立色を残している師団もまだあるにはあるが、それでも扇子男…フィデル参謀の思惑通りと言って良いだろう。

 そんなことはどうでも良い。つまり、ノラが隊員の給料に悩む必要はなくなったのだ。補充も向こうから回してくれる。恣意的なモノでもない限り………

 そういう経緯もあって懐かしい顔が訪れた。万年中間管理職である331小隊の隊長、メメット中尉がイズミル隊に配置替えとなったのだ。331小隊の隊士達数名も同時に合併された。

 メメット中尉が本来、先任副官であるべきなのだが、戦場に赴くのは固辞して、イズミル市での事務処理並びに経理管理を任務としてもらう。だからドブロクの直属の上司になった。


 こうしてイズミル隊の陣容が整いつつあった。


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