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ユピタルヌス戦記  作者: いのしげ
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第二次聖都攻略戦(カルメン作戦)2−⑦


 地響きにも似た咆哮。それは決起したレジスタンス達の怒りが爆発した証である。そして大仰にデカい旗。染め抜かれた赤地に黒と白のベルト、そうして双頭の蛇はシーラーズ州のサンダリエ将軍を意味する。

 ビルディング程もあるそんな旗が地平線から幾重も顔を出したのだ、アトゥンの火の兵達の動揺が、離れていたノラにさえ伝わってきた。

 そして旗手は大変だなあと間抜けな感想をノラは思い浮かべた。

 「一人も逃すな! ヌーリ、左翼展開…包囲戦を仕掛ける!」

 悠然と大地に舞い降りた女神然として、キュベレイ中佐が指揮棒をヒラリとひどくゆっくり動かした。

 それに呼応して、数万ものレジスタンスが襲い掛かる。

 「チキショーメ! やった! やりやがったぜ!」

 乱戦になったのを好機と、デカがスコップで敵兵を薙ぎ倒しながら歓喜の雄たけびを上げた。

 「ぬう…! 防御陣形を敷け! 撤退戦に移行せよ!」

 さすがというか、マーヴィは見事に陣形を立て直し、防御線を構築し始めたが所詮は寡兵。陣が出来上がる前に各個撃破されていく。それでも尚、テクニカルをバリケードや障害壁としてある程度体裁を整えたのにはノラも息を呑んだ。普通の指揮官なら崩壊した戦線を立て直す事など不可能に等しい。

 「落ち着け、近隣の各旅団にも救援を出している。ここを凌げば付け焼き刃の民兵など蹴散らすのは造作もない!」

 自分達だって、民兵上がりのくせに……ノラは壁に身を隠しながら鼓舞するマーヴィのセリフに冷ややかなツッコミを入れる。

 そこへ普段は無口なグェンが飛び込んできた。

 「た、隊長……ユルドゥス、居ない!」

 「な…なんだって!?」 

 急いで向こう側に避難しているデカを見やり、次いでメフメドを見た。だがその何処にもユルドゥスの姿はなかった。

 「ど、何処で見失ったんだ!?」

 慌ててグェンの肩を掴んでガクガク揺すると、マーヴィの方を指さして言った。

 「わ、『私も頑張らないと!』…って言って、向こう、突っ込んでいった……」

 …なんてことだ、何も敵陣に突っ込まなくたっていいのに。キュベレイ隊長にも申し訳が立たない。

 捜索しようにも、向こうも必死だ。ありったけの弾幕を展開して近寄ることすらできない。

 その時、ノラの脇に滑り込んできた黒い塊があってギョッとする。しかしよく見るとそれはヌーリと通信機担いだドブロクだった。 

 「集合時間になっても現れないから、どうしたものかと訝しんでいたんですよ。そうしたらドクズとセキズが救援の報せを持ってきたんです」

 銃を構えつつも肩で息しながら、ヌーリがゼエゼエと報告する。

 「キュベレイ隊長、ノラ支隊と合流しましただ。隊長は無事ですだ!」

 ドブロクの声に少しホッとして、ヘルメット越しに撫でてやるとドブロクも微笑み返した。

 ん?

 今、ドクズとセキズの名前だけ言った? イェディはどうしたんだ?

 その時、ドブロクが叫ぶ。

 「『H,QヘッドクォーターよりK1、K2へ。マザーグースはロースターに突入す』…ほ、本隊がこっちに来ただよ!」

 そんなドブロクの声を打ち消す轟音がしたかと思うと、突如、空を巨大な揚陸艦隊が覆い隠した。

 先頭を征くはよく見慣れた海賊旗に重装備のフネ…「アララト」だった。 

「ガーッハハハ! ワシ等が来たからにゃあテメーら、生まれてきたことを後悔させてやるぜえ!!」

 ドン・ボルゾックの声がスピーカーが聞こえた瞬間、アララト側舷の砲門が斉射を開始した。流石のマーヴィ率いるアトゥンの火の部隊と云えども、巨人の前の蟷螂に等しく、爆音と土煙で吹っ飛んでしまった。

 敵の高射砲部隊は機能していない。北部同盟の侵攻部隊はほぼ、無傷で越境を果たした。

 

 大勢は決した。 

 もはや聖都まで阻むものは居ない。ノラ達が切り開いたのだ。

 

 だが、代償も大きかった。


すごく時間がかかってしまいました。偏に仕事が変わったことによる時間的余裕の無さによるものです。


それと、アタイがセコセコしている間に、なんとアフガン情勢が激変してタリバーンが首都カブールを奪取してしまいましたね。かなりビックリです。

タリバーンはケシ栽培に精を出してますので、アフガンの麻薬のせいで世界は少しずつ悪くなるかと思います。関係ない話じゃないんです、タリバーンは大勢じゃないですけど、世界を少し悪くできる程度の影響力はあるんです。

パンジシールの名前を又もニュースで聞くことになるとは思いませんでした。マスードJrには頑張って欲しいですが……

まさに事実は小説よりも奇なりですね。まあ、タリバーンが賄賂によって堕落するのは目に見えてますし、カブールの市民がどうするかによって大きく変わるでしょう。しかし、本当に費やした20年は何だったんだろうね……

日本が出来ることは、今はまだ殆どありません。ですが平穏になった時に中村哲医師がやろうとした事業を継続できるようにすれば、大きな功績となると思います。


後付けですみません、3~4年待っていただけますか?

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