第二次聖都攻略戦(カルメン作戦)2ー①
すみません!
転職に次ぐ転職で、ずいぶん時間が空いてしまいました!!
コロナは正直、色々な社会形態を変えたと思います。パラダイムシフト…こんな言葉が一番合っている気がします。
ようやっと落ち着けましたので、続編を投稿します…が、いつもと違って半クールになります。
少し時間をください。
「マズイ…信号弾を放て!」
ドクズが言い放つと同時に、セキズが信号弾を発射した。
パンパンと空虚な音が白い大地と灰色の空に響き渡る。
「これでこっちも補足されたぞ、これからは遊撃戦だ!」
言うが早いか、イェディが雪を搔き分け、スキー板を填めて進みだす。ドクズとセキズもそれに続いた。
数分遅れてワーワー喚いている連中が、メクラめっぽうにあちこち弾を浪費しながらセリ上がって来る気配を感じた。まごうことなくあの統率感の無さはアトゥンの火に違いないと―そう、イェディは実感する。
「イェディ、これからどうするんだ?」
スキーを漕ぎながら、セキズが後ろから怒鳴った。ここでの先任は曹長のイェディなので、彼が決定権を握っている。
「我々はこれから電波塔の周りを回るようにして、遊撃戦を仕掛ける。察知されて危険になったら離脱して、シヴァス隊と合流だ!」
「でもそれじゃノラ隊長達が……」
「隊長はすぐやられるような人じゃない! それに増援を呼んだ方が助けられる可能性だって多くなる! 誇りあるイズミル隊なら、もっとお互いを信頼しろ!」
イェディの言葉の最後の方は、もはやそうであってほしいという願望であったが、セキズも他の選択肢を思い浮かぶことはなかったので、押し黙った。そしてさっきよりもスキー板を速く漕ぎ出すのだった。
「信号弾確認! 敵襲ですぜ!」
待ってましたとばかりに白いケースに隠していた重機関銃を取り出して、メフメドが敵兵の詰め所に向かってバリバリと掃射を始めた。
中に居た者はたまったものではない、意味も分からず絶命したであろう。なんせ20㎜機関銃なのだ。むしろ良くそんな重機を支えることが出来るなと、ユルドゥスは感心してしまう。
「行くぞ、私達も塔内の管制室に逃げ込むわよ!」
転々と散らばっていた他の敵兵を拳銃で漏らすことなく撃つと、ユルドゥスはまっすぐ駆け出した。
「ひゅぅ♪ やるじゃねえかお嬢さん!」
その正確な射撃は流石、シヴァス隊だなと舌を巻きながら、メフメドもユルドゥスの後を追った。
「中で合流すれば隊長が何とかしてくれまさぁ!」
「フン、ワタシはアンナ奴信用しちゃいないわ!」
「分ーッかったから走れ! テクニカルがもう来てるぜ!!」
メフメドが管制塔の扉を閉めると同時に、着弾の金属音がやかましく耳をつんざく。
「くそ……もし向こうが“絶対にぶっ殺すマン”だったら、俺らRPGで塔もろとも吹っ飛ばされますぜ!」
火勢の強さに思わず弱音を吐いてしまったメフメドが、しまったとばかりに口を拭うとユルドゥスをエスコートしながら更に奥へと歩を進めるのだった。
「ユルドゥス、それにメフメド!? 外で異変があったのか!?」
爆弾を仕掛けていたノラが、慌てて入ってきた二人を見てギョッとする。
「敵に察知されたわ、もう辺り中囲まれてるわ!」
息を切らせながら簡潔にユルドゥスが返答した。つまり、それだけ逼迫しているということだ。ノラもすぐに思考を切り替える。
「クソ…デカ! メフメドと共に中にいる敵兵を残らず捕まえるんだ、敵との交渉に使う!」
「チキショーめ! あいよ!」
無造作に時限爆弾を放り出して銃を肩に担いだデカが、20㎜重機関銃を構えたメフメドを携え、階段を駆け登っていった。
「私達はどうするの?」
残ったのはシヴァス隊の面々。彼女らを残したのには訳がある。敵をビビらせて一瞬で戦意を喪失させるには、強面の男性の方が適任だったからだ。女性が行えば、逆に抵抗する輩が出てくるかもしれない。つまり選ばなかったからこそのシヴァス隊が残っているわけだが、そんなこと言ったら総スカン喰らうかもしれない。
その時、扉の鉄板が貫通して、流れ弾が近くを通過する音がした。
「出入り口を固めろ、敵の侵入を防ぐんだ!」
土嚢があればと思ったが、そんなものはない。とにかく機材やらそこら辺にあるものを引きずって、扉の後ろに積み上げていく。
「どうするの、鍵は壊しちゃったじゃない!」
しかし肝心の扉が閉まらない。理由が簡単だ。何故なら、侵入時に破壊したからだ。
この扉、片面式の引き戸である。一応鉄製だが、見ての通り、銃弾が貫通する程度には装甲が薄い。引き戸を固定するにはレールを破壊するか、つっかえ棒が欲しいのだが、そんなおあつらえ向きな長さの棒なんて見当たらない。
その時、グェンがボソリと呟いた。
「…バールの様なものならあるが……」
ユルドゥスとノラは同時に叫んだ。
「それだ!!」
目にも留まらぬ速さと連携プレイで、バールを使ってレールを壊し、そのまま扉のつっかえ棒にした。実にしっくりとバールの様なものは扉を止めるストッパーへと昇格した。
「やるじゃない、グェン。さすが目の付け所が違うわね!」
「…………」
やっと余裕ができたのか、ユルドゥスが上っ面の笑みを浮かべたが、グェンはただ黙ってそれを見ていただけだった。




