第二次聖都攻略戦(カルメン作戦)⑫
5の月、明けて10日。予定集合時間まであと6日と20時間ほど。
ヌーリが言っていた電波通信塔を補足したノラ達潜入部隊は、それぞれに観測出来るように、散兵戦術に倣って展開した。
狙撃班は後方で周囲警戒に当たっている。
そうして3日ほど経った頃、向こうの警戒態勢や癖などを大体把握出来るようになってきた。というか、驚くほど緩い。
生憎の夜日なので、こちらの動きを敵が察知した形跡はない。実に都合がいい。
「…敵兵、門番2名程ですねぃ。あと詰所に複数名」
傍らでメフメドがぼそりと呟いた。
「どうします? 狙撃班なら2名位、音も立てずに始末出来やすぜ?」
「…いや。敵が油断しているのなら、そのまま潜入して時限爆弾を仕掛けて逃げよう。リスクは少ない方が良いだろう?」
後ろでツァッと舌打ちが聞こえた。デカだ。
「チキショーメ、なんだっていつも難しい事ばかり要求しやがるんだ!?」
「信頼してるってことさ、デカ。頼んだぞ」
塔内の管制室に潜入するのは、ノラとデカ、それに機械に詳しいというグェンとチャーシャンバ―になった。お預けを喰らったメフメドは不満そうだ。
「メフメド、ユルドゥスをちゃんと補佐してくれよ?」
「わーってまさい!」
長・中距離のカバーは狙撃班、直近の護衛はユルドゥス隊、潜入はノラ達という形で、静かに潜行する。
「……敵の歩哨の交代時間が付け目だ。それまで物陰で待機」
物陰に潜み、歩哨の近くで息をひそめる……が、こういう緊張するときに限って、誰かがヘマをするものだ。
メフメドの背負っていた荷物がガタンと何かに引っ掛かり、物音を立ててしまった。
「……!?」
口を押え、心臓が飛び出さないように必死で抑える一行。バクバク音でバレるんじゃないかとすら感じてしまう。
「ん、今何か動いたぞ!?」
歩哨の一人が訝しげにこっちに来る。その時。
「にゃ~ぉ、んな~ぉ」
デカが猫の鳴き真似をした!
「…なんだネコか。ネコならしょうがないよな」
そんな馬鹿な…まあ確かにデカの鳴き真似は上手かったけど、こんな簡単に騙されるのか。デカの真面目な猫の鳴き真似が妙におかしくて、今度は笑いが漏れないように、必死で口を押さえる。
「……!!」
大体、大ユピタルに猫は居るけど、そこら辺をうろつくほど繁殖もされてない。まあ、一つ分かるのはアトゥンの火の兵士のレベルは高くないってことだ。
「(今だ、行くぞ!)」
向こうが興味を無くして明後日の方向を向いた瞬間、壁沿いを辿って見事管制室の扉へとたどり着いた。
「……くそ、ヌーリのくれた暗証番号が合わねえぞ!」
認証システムに番号を入れても、開きもしない。早くしないと、また歩哨がこっちに気づいてしまう……そんな時。
「どけ。私がやる」
おもむろにノソッと体を動かしたのは、グェン軍曹。
何かを掴むと扉の隙間に差し込み、やおらグイっと捻って抉じ開けてしまった。
「すげえ…それはなんだ?」
「バール…のようなもの」
おお、と同意を示した後、さっそく一行は室内へと体を滑り込ませた。
「…オイあれってまさか……」
双眼鏡で周囲を警戒していたイェディが呻く。その先には、こちらへ急行する、敵の大部隊。テクニカルなんかも当然、わんさかやってくる。
「くそ、なんで援軍が来てるんだ!?」
作戦の失敗…暗澹たる気持ちで、ドクズが叫んだ。
「ハハハ、思った通りだ! このノラ・マーヴィ大隊長様の裏をかこうなんざ、出来やしねえんだよ!」
テクニカルには見慣れた人物、ノラ・マーヴィ中校の姿があった。
予定集合時刻まであと、3日と10時間余り―
スミマセン、12話では話まとめられませんでした! ちょっとお時間くださいまし。2ヶ月ほど後、またお会いしましょう。




