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ユピタルヌス戦記  作者: いのしげ
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オウミ商国①


 ユピタルヌス歴323年2の月、28日


 平定困難と言われたクンドゥズ州の掃討作戦を短期間で平らげ、尚且つ帰還日に海千山千のヘクマティアル将軍の謎の爆破事件。コレは表には出せないネタであったが、北部同盟では噂が噂を呼び、イズミル隊と英雄「カーラマン」の話を聞きたいと、皆が手ぐすねを引いて待ち構えていた。

 ある者は高潔なるカーラマンがそんな事をする筈は無いと憤り、またある者は成り上がるために清濁併せ呑む切り替えが重要だと称えた。だが残りの多くは「次は自分がやられるかもしれない!」という恐怖にも似た焦燥感が脳裏に走ったのである。


 そういった者の多くは、ヘクマティアル司令と同様にムジャヒディン上がりで自領を持つ軍閥ウォーロードだった。より具体的に書いてしまえば、ウスキュダル王国のイシュタル女王、ガジアンテップ州のハーミド・カルザイ司令、トラブゾン隊のドン・ドスタム将軍、そしてディヤルバクル隊のアフメッディ・ムワントロス将軍等だ。特にカルザイは、ヘクマティアル将軍と手を組んで麻薬密売ルートを持っていたと言われており、ドン・ドスタムも黒い噂が絶えない。


 そうした輩が、ヘクマティアル失踪の報を受けて鳴りを潜めた。パンジール・ウルケーへの警戒感と、その走狗であるノラ・シアンを恐れたのである。それは何よりも北部同盟の再統合化を推し進める、フィデル参謀の思惑通りとなったのだ。

 一応名誉のために付記するが、ウスキュダル王国は昔から他国と関与せず、また介入を好まない気風であったので他の軍閥の様に後ろめたく鳴りを潜めたのではなく、元々そうであった(・・・・・・・・)…という事ではある。

 その畏怖と恨みを一身に負っている事を、ノラはまだ知らない……


 だが、そんな当人はどこ吹く風。久しぶりに戻ったイズミル市の駐屯地内の自室で、豆苗に水をやっていた。豆苗は気軽に採れる人気種で、大ユピタルでは食材としてだけでなく盆栽的な楽しみ方も普及していたのである。

 「ノラ隊長、失礼します」

 そう言って入って来たのはメガネを掛けたヤスミン伍長。メメット中尉が居ないので代わりに経理をやってもらっている。イズミル隊は常に人手不足なのだ。

 「コレ…隊長の給料の前貸しの前貸しですが……」

 もう何年先までの借金になっているんだろう? メメット中尉が居ればこういう横紙破りは許されないのだが、鬼の居ぬ間に洗濯…である。

 「ありがとうヤスミン伍長。それと……」

 「はい、今回の昇級リストですね」

 ノラが言うよりも早く、メガネを光らせてリストを提出するヤスミン。中々優秀である。

 「スィベル少尉の功績大なのと、ギリム技官も推挙に当たるかと思います。それとオンとドクズとセキズには勲章を申請すべきですね」

 ふうむ。ノラの意見と一致しており、唸ってしまう。だがそれ故にこの話はややこしいのである。そう…スィベルは正確には査察部「ドンドルマ団」なので、向こうの裁定も必要になるのだ。そうするとスィベルの立場としては複雑な形になってしまう。一体どっちの忠誠の元にあるのか、と。

 まあ、なるようになれ…と、承認の為の判子をヤスミンのリストに捺印した。

 何か面倒な事に巻き込まれそうだったら、責任取って軍を辞めればいい。借金? あの嫌味な扇子男に押し付けて、ケツまくって逃げちまえ。

 もう肩に乗っかる星の重みで肩こりがヒドイ。ノラの器に合っていないのだ。自分が居ないと戦争が回らない等という傲慢な気持ちは微塵もない。また戦争屋をやって生きていくのも悪くない。


 「そういや……」

 そこまで考えて、ふと思い立った。

 「戦争屋なんてシミったれたケチな商売よりも、もっと星を回す商売をしたとか言ってた兄さんはどうしたんだろう……」

 それと……どさくさに任せて捨ててしまった母さん。今更、戦争屋を手伝いたいって言ったら、どんな顔するんだろうか?


いやあもう、本当に遅れてしまい、お待ち頂いてた方々には大変申し訳ございません。御多分に漏れずコロナ不況に呑まれ、引っ越しやら転職やらの手続きにバタついてました。それと大相撲観てました…

来年は心機一転、転職の運びとなります。さてさてどうなる事でしょうか。もしかしたら次の新章も遅れてしまうかもしれません。皆さまに於きましては心苦しいお願いですが、どうぞ寛容にお待ち頂けましたら幸いです。

そして読んで頂いている皆様のご多幸と躍進を祈念いたしまして、今年の締めくくりとさせて頂きます。

来年もよろしくお願いします。ではよいお年を!


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