第7話 「蔡豊代くんのその後」
「ええっ!!!け・・結婚!?」
あまりの衝撃的な言葉にスマホを持つ手が震えた。
流石に早すぎる気がして、本来なら祝福すべきメデタイ事なのだがどうにも納得がいかなかった。
こんなことなら初めから好きになるんじゃなかった。。。
スマホの画面を見ながら、蔡豊代 悠斗は涙を堪えていた。
画面にはまとめサイトの速報が表示されている。どうやら人気の若手女優が結婚と、それに伴っての芸能活動休止を発表したようだ。
お相手は一般男性と書いてあるが、おそらく一般的な一般人ではないであろうことは簡単に想像できた。
ハルトが走り去って学食に一人取り残されたユウトは、仕方なくミニソフトクリームを一人で購入し、窓際の席に腰かけスマホをいじりながらゆっくりと食べていた。
お気に入りの女優の結婚ニュースに気を取られていると、陽に当たったソフトクリームが溶けてしまい、容器の淵からこぼれてしまっていた。
「まるで涙のようやな・・・」
そう。ユウトは外でも割と平気で独り言を言えるタイプの人間であった。
「そうや」
何かを思いついたユウトはスマホでミニソフトの写真を撮り、短文を添えてSNSに投稿した。
ソフトクリームを涙に見立てて、友人が勝手にどこかに行ってしまった悲しみと好きな女優が結婚した悲しみを表している・・・みたいな割とくだらない投稿であった。
「どうしよかな・・」
急に時間が出来てしまった。午後の授業はハルトと一緒にサボるつもりだったので、ハルトがいない今、真面目に授業を受ければいい話なのだが、一度サボる気になってしまったので授業を受けることがこれまで以上に億劫になってしまっている。
まだちょっと早いし、購買部で時間つぶしてから行くかー
ユウトは時間が空いた時や大学が終わった後、雀荘に行くことが日課となっていた。高校時代にネットで麻雀を覚え、友人宅で徹夜で麻雀をすることはよくあったのだが、大学生になり更に拍車がかかった。
今では一人で雀荘に行き、結構な金額を賭けて麻雀を打っている。
ネット麻雀では最高段位を獲得し、長期での収支なら絶対にプラスにもっていけるという確信があったので、今ではバイトもせず仕送りもなしで一人暮らしをしている。
麻雀で生活が出来ているということを誇りにさえ思っていた。
食器を返却口へと返し、「ごっそーさん」と食堂のおばちゃんに伝えてユウトは食堂を出た。
暑い。暑いとは分かっていたことだが、涼しい食堂でソフトクリームを食べた後なので新鮮な感覚で暑さをぶつけられている。
なるべく日陰を通り、購買部へとやってきた。
購買部では雑誌や文庫本、お菓子や飲み物なんかも買うことができる。コンビニくらいの売り場面積があり、置いて欲しいものがあれば要望書に書いてリクエストすることも可能だ。
過去に麻雀雑誌の要望を提出したが、雑誌のラインナップを見る限りどうやら却下されたようだ。
店頭に並んでいる週刊の漫画雑誌はページをテープでとめてあり、立ち読みが出来なくなっているが、奥にある専門的な雑誌や文庫本の棚は立ち読みができる。
興味のないアメリカのバスケットボールの雑誌をパラパラとめくりながら試合結果を目で追っていると、ポケットのスマホが振動した。メッセージが来たようだ。
今夜、デカイ卓が立ちそうなんだがお前も参加するか?
もちろんもちろん。待ってましたよ!
返信を終えて、今度は海外サッカーの雑誌を手に取り、パラパラとページをめくりながら各チームのフォーメーションを目で追っていた。




