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兄妹異世界奮闘記  作者: ヤシの木
4/25

04 黒髪ロングは神のみぞ知る!?

「おい、朝だぞ」


「うんん...まだ寝れる...」


昨日夜遅くまでルギーにこの世界の事を聞いていたからまだ頭がぼーっとしている。脳に酸素が行ってないのがとても良くわかる。


「いや起きろ!寝るな!!」


ルギーに揺さぶられること5分。

脳がシェイクされた。

何かイケナイものが耳から出てきそうだ。


「うぇぇ...」


シンプルに酔った。

頭がグワングワンする。


「んんんーー!!」


ぐっと背伸びをするとバキボキベキッと人体からなるはずのない不快な音がした。

夢オチかと思ってたが、やはり起きても異世界のままだったななどとぼんやり考えていると、ルギーに早くベッドから出るように言われた。


「とりあえず顔洗ってこい。井戸はあっちだから」


「あいさー!」


返事をして、指を指された方へ向かう。

少し歩くと井戸を見つけた。

井戸の外側に括られている桶を外し、井戸の中へ投げ込む。

そしてゆっくり引っ張り水がこぼれないように引き上げた。


ーパシャッ


「ふぅ」


井戸使ったの初めてだわ。こうなってるのね。


起きていなかった頭が顔を洗ってスッキリした。空を見上げると鮮やかすぎるほどの青空が広がっていた。


昨日は異世界というのに戸惑っていたが、異世界に来ちゃったものはしょうがない。どうしようもないもの。

というか、意外とワクワクしている自分がいる。

だって異世界と言ったらイケメンエルフ!!ケモ耳娘!!リアルに見れるなんて...!

うへへへへへ


じゅるり


おっとよだれが


どうせなら楽しんだもん勝ちということで。

しかし、この世界で死んだらどうなるのだろうか...。まぁ、普通に考えたら死は死だろうな。死にたくないのでせいぜい足掻くとしますか。


まずはにいちゃと合流したいな。

どこにいるのか分からないし、連絡手段も無い。

まぁ、焦っても仕方が無いのでゆっくり探していこう。

とりあえず、属性やら魔力適性やらを調べたいので冒険者ギルドに行っておきたいな。

部屋へ戻ったらルギーに聞いてみよう。


「ルギー!冒険者ギルドってここからどう...行く...の...?って、なにしてんの?」


「フッ...フッ...あ?朝のトレーニングだ」


ルギーは手に持ってるモン〇ンとかで使うような大剣を手に持っている。ルギーの身長がいくら2m位だとと言っても、その大剣私の身長くらいあるぞ。


「ルギーって戦士?なの?」


「おう、一応亜竜族の国の騎士だからな」


「何それカッケェ」


素直な感想しか出てこない。

騎士て!騎士って!

ルギーのトレーニングの様子に感動していると、ルギーは不意にこちらに近づいてきて剣を差し出してきた。


「持ってみるか?」


「いいの!?」


またとない機会だ。ぜひ持たせて頂こう。やっぱかっこいいな。


ーズシッ


「ッ!?」


お、おっも!!


想像以上に重く、後ろへのけぞってしまう。よくこんな重いものを平気な顔してブンブン振り回せるな。


「おっと、危ねぇぞ」


よろけた私をルギーが後ろから支えた。

どうにか踏ん張り体制を立て直すと振りかぶったまま重過ぎて後ろに降りていた大剣を振り下ろした。


「うぐぐぐぐ...ったぁ!」


一回振ることは出来たが、これは脱臼しそうだ。いきなり肩の普段使わないであろう筋肉を使ったので変な痛みがある。

擦りながら、剣を返す。


「振り方はなっちゃねぇが、これから鍛えればお前も振れるようになるぞ。」


「おぉ!今後に期待!!」


女剣士...いいな。

クールビューティって感じでかっこいい。しかしこの大剣をルギーのようにブンブン振り回せるようになるまで相当時間がかかりそうだ。


あ、そういえばルギーに冒険者ギルドがどこにあるか聞こうとしていたことを思い出した。


「あ、そうそう、ルギー、冒険者ギルドってここからどう行けばいいか分かる?」


「ここからだったら隣国の方が近いな...でも今お前1人で旅に出たとしたら確実に死ぬぞ」


「oh......」


「スライムも無理だな」


「しゅらいむ...」


確かに今レベルは分からないけど、1とかなんじゃないかなぁ。

そりゃ死ぬわ。

人生そんな甘くないッスよねぇ。


あれ、そういえば目の前に剣術できる頼れるオカンがいるじゃないか!

ちょっと教えてもらえたりできないかな。


「誰がオカンだ」


「んうぇ!?」


「口に出てたぞ」


「このお口ったら!めっ!」


「......。」


コホンゴホンッ...ルギーがとても冷たい目で見てくる。

彗は10のダメージを負った!

彗は瀕死だ!!


1人でそんなことを考えているとため息をついて呆れたようにルギーが提案してくれた。


「ハァ...剣術やるか?」


「やりたいです!師匠ー!」


「こんな出来の悪い弟子はいらん」


「なんてこったい」


しかし習っておいて損は無いだろう。

この先戦闘とかもあるだろうし。


「俺の教え方は厳しいぞ?」


「かかってこいやです!」


ファイティングポーズを取ってみせるとルギーは苦笑いしながら剣を手に取った。


あれからかれこれ4時間。


「よし、そろそろ休憩にするか。」


「押忍!」


時間を忘れるほど夢中になってしまったようだ。

ルギーは子供の時に使っていたという私が最初に持った大剣の3分の1くらいの長さの剣を貸してくれた。

まぁ、3分の1つってもなかなか重い。


「少しはマシになったな」


最初は降るのさえままならなかったが連続で2回なら振りかぶれるようにはなった。ほとんどニートのような生活をしていた私にしたら大進歩だ。


「ありがとうございます!」


ーグゥウウ


なんてタイミングだ。流石にこれはちょっと恥ずかしい。が、そういえば昨日は夜から何も食べていなかった。


「フッ、ちょうど昼時だしメシにするか...今日のところは俺が狩りをするからお前は見てろ」


「あいさー!」


ビシッと敬礼をして狩りの準備をしているルギーのあとをついていく。





ータッタッタッタッ


ーシュッ


ーザンッ


「グェエエエエ!!!」


「よし、こんなもんか」


ルギーの狩りに私は息を呑んだ。

私に剣術を教えてくれる時とは比べ物にならない速さで次々と獲物を倒していった。...どーやったらそんな動けるだと首をかしげていると獲物であろう赤色の羽を持った鳥の首を掴んでルギーが戻ってきた。


「お見事っす...」


「おう、これから料理するからお前も手伝え」


異世界の料理か...。調理方法とかどんなのがあるのか楽しみだ。


「任せてください旦那ぁ!」


元気よく返事をして帰路につくルギーの後を追う。




家に着くと、テキパキと用意を済ませたルギーが私にスープを作るように言った。ここは腕の見せどころだ。


じっくり煮ること20分。

鍋の蓋を開けたルギーが不快極まりないとでも言うかのような顔を向けてくる。


「おい...これはなんだ?」


「うーん、なんでしょう...?」



ーゴンッ


「いってぇええ!!」


突如頭上から降ってきたゲンコツに頭を抑える。


「なんで煮るだけなのに魔界の沼みたいなのが出来上がるんだ!」


「うぁ...わ、分かんないっす」


具材を切って、鍋に入れるまでは普通だった。何の変哲もない野菜だったはずだ。しかしなぜこんな限りなく黒に近い濃紫色になってしまったのか。


「お前なんか入れたろ」


...あ。もしかしてと心当たりのあるものを見る。鍋の近くにあった小瓶に入ってた液体入れたな。

調味料かなにかだろうと思い確認せずに入れてしまった。それが原因かもしれない。


「そこの小瓶の液体を少々...か、隠し味的な...?」


ーゴンッ


「ぬぅわぁああ!!」


本日2度目のゲンコツ。

あれ大丈夫?私の頭変形してない?

こころなしか頭頂部がへこんだ気がする。


「バカ!これは火起こしの魔力を込めてある魔力リキッドだ!」


「な、なんだってぇー!!」


昨日飲んだやつシリーズか。魔力リキッドというらしい。火起こしですら魔力使えるのか...。


「ったく...とりあえず1品無駄にしたが、それ以外は俺が作ったからほら食え」


「うぅ...すんません...」


ルギーが作ったという彩り鮮やかな料理がテーブルの上に並ぶ。

私のとえらい違いだ。どうやったらこんな綺麗に作れるのかと聞くと、ルギーは慣れだと答えた。

私はこの異世界で生きるためにも料理は覚えようと心に誓った。


ルギーの作ったご飯は見た目だけでなく味もとても美味しかった。そしてまた剣術を教えてもらいあっという間に夜になった。


あれ、ルギー仕事してなくね?

不思議に思い、ルギーに仕事について聞いてみる。


「ねぇねぇ、ルギーって騎士なんでしょ?仕事って無いの?」


「あぁ、今日はたまたま1日休暇の予定だったんだ」


なるほど。そのお陰で私はルギーに剣術を習えてるわけだ。


「ほぇー」


「明日はあるがな」


なるほど。じゃあ明日からは1人だ。1日でも剣術を習えただけよかっただろう。


「ほーん...じゃあ私はそろそろお暇しますかね。この世界の事教えてくれてありがとうござました!」


「いや、お前も王宮に来てもらう」


なぜ?と首を傾げる。ただのしがない村人のような私を連れてって何になるのだろう。


「遠い国から来たと言っていたが、その国にはその髪の色の種族がいるのか?」


その髪...?黒髪の事だろうか。そりゃ日本人ですもの黒髪は多いでしょ。


「まぁ、はい。」


ルギーはそうか...と呟いた。


「ニホンだったか?その国の話をしてもらいたい。」


「え...、どういうこと...?」


意味が分からずルギーを見つめる。


「この国...いや世界中に黒色の髪をもつ者はいないと思っていた。神のみが黒髪を持っていると言われているしな。」


だからその種族についての話が欲しいらしい。超希少種ですもんね。

しかし、いきなり王宮はハードルが高いのではないでしょうか。

あ、王はいないけど王宮の一室を使うみたいな感じだろうか。


「だから明日王と会ってくれ。」


oh......王出てきちゃうのかぁー。

転移3日後に王国の王様とご対面とかハードモード過ぎない?


それに...とルギーが話し始めた。


「この国では人族は危険だ。」


ましてやお前みたいに弱っちい奴はな。と付け足された。

なぜ危険なのだろうか。モンスターが強いとかそういう理由なのかもしれない。


「亜竜族は人族をよく思ってないからだ。」


ただ単に嫌われているだけだった。

なんでも、私が街を歩き人族だと周りに知られたら周りから攻撃される可能性が高いそうだ。人族なにしたん。


そして、ルギーから亜竜族が人族に対して抱いている思いを聞いた。


人族は数十年前に起こったある大規模戦争から、亜竜族を攫ってきては奴隷にしているらしい。


亜竜族は体表が鱗で覆われていて、体力、傷の治りが早い為、労働奴隷としての価値が高い。


なので、亜竜族を狙う人族の奴隷商人も多い。人族はいい奴もいるが王族や貴族が奴隷制度を推奨しているらしい。


そんな人族に対して亜竜族はいい思いをしている訳がなく、人族を見つけ次第殺してる亜竜族さえいる。


人族...まじか...。そりゃ嫌われるわ。

しかも人族は亜竜族だけでなく他の種族も攫っては売りを繰り返しているそうだ。何でそんなに世界に喧嘩売ってんの?世界中が敵なお年頃なの?


やはり1度王宮へ行って話をしてから今後の事は考えよう。


そして神のみが持つと言われている黒髪をしている私はルギーと共に明日王宮にへ行くことになった。




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