幸運の土曜日。
夢ってのは自分で操れたら面白いと思わないか?ほら、例えばさ、空飛んだり、出来るわけだろ?すげえ妄想が膨らむよな。でも、俺だったらそんな事には絶対使わないだろうけどな。え?なら夢の中で何をするかって?そりゃあ決まってるだろ。可愛い女の子とゲフンゲフン。俺は夢の中ですら人助けでもするんじゃないかな。俺って紳士だし。でも、俺だってこれほど願うほど見たい夢ってものが久しぶりに出来たんだよ。そう、でも、夢って見たいときに見れないものなんだよな。まあ、それが夢の良いところでもあるんだろうけど、今はそれに怒りしか感じなかったけどな。
俺はあの夜、霊奈と出会うことは無かった。
『くそっ、どーなってんだ。』
夢の中で会えるわけじゃねぇのかよ。
俺は思考を巡らせて、ある1つの考えにたどり着いた。会うためには何か条件があるんじゃないのか。と。
俺が、霊奈と会った日、何か俺は特別なことをしたのか?
解らない。これほど自分の記憶力の無さを憎んだことは無い。どうしたらいいのか、自分でも理解不能なんだ。これから自分の行動に注意して生きていくしかないのか。
『おっと、今日は休日か。』
特に予定もない俺には少し憂鬱でもある。この時点では。
『さて、朝飯でも食って二度寝を決め込もうかな。』
そう決めてベッドから降りたとき、チャイムが鳴った。誰だ、こんな朝から、まあ、朝といってももう10時過ぎなのだけれど。
『はいはーい、今行きますよーっと。』
ドアを開けると、そこに居たのは
『みなとー!遊びに来たよー!』
俺のアイドル、姫野凛花だった。
しかも、オシャレしてて、すっげぇ可愛い。
『凛花、今日彼氏とデートじゃなかったのか?』
確か前にそんなことを言っていた気がする。
『うーん、もう別れちゃった!』
うーん、もう別れちゃった!ってそんな元気に言うことではないだろう...
だが、少し嬉しいと思っている俺がいる。
『そりゃまたどーしてだよ?』
『うーん、なんか、湊人と関係を断ち切ってほしいって言われたから、嫌だと思ったの!だから、湊人と会えなくなるくらいから、別れた方がいいかなって!』
『そうか、そりゃ残念だったな。』
『え?湊人は残念なの?』
『そ、そんなわけないだろ!?別に普通だよ、普通。』
いぇぇぇええええええいっ!!内心めっちゃ嬉しいっつーの!!!!だが、凛花の手前、冷静を保っていないとな。
『ねーねー、今日みなとは暇ー?』
『おう、まあ、暇だな。』
特に予定も無いのでそう返す。
『なら、私とデートしてよ!!』
どうやら、俺は一生分の運をここで使い果たすつもりらしい。
『お、おう。まあ、分かったからちょっと待ってろ。まだ支度してねぇから。』
なるほど、オシャレしてたのは、そー言うことだったのか。
『じゃあじゃあ!私も手伝ってあげるね!』
『いや、いいって!凛花はゆっくりお茶でも飲んでいてくれ。』
そう言うと凛花を家に入れ、ソファに座らせた。
俺は手短に朝食、着替えを済ませ、出掛ける準備を終えた。
『さて、そろそろ行けるぞ...って』
『むにゃむにゃ。』
寝てやがる...。
まあ、すごい可愛いから許してしますのだけれど。とりあえず寝顔を写真に収めてから起こす事にしよう。
『凛花ー、起きろー。準備出来たぞー。』
『んー、みなとー。眠いー。おはよーのちゅーはー?』
『ねぇよ!!』
したい気持ちを心の奥に秘め、寝ぼけていた凛花を起こした。
『なあ、凛花。デートっつっても、どこに行くんだ?』
『んー?何言ってるのみなとー?デートに行くんだよ?』
『うん、まあ、デートに行くんだよな。それで、行き先はどこだ?』
『デートに行くの!』
俺は薄々気づいてしまった。
こいつ、行き先考えてねぇ!!!
『まさかノープランだったのか?』
『えへへー!湊人の一緒なら、どこでも楽しいもん!』
『あぁ、そーかい。ならいいけどよー。』
やばい、今日の凛花超可愛い。惚れそう。もう惚れてるから、その言葉は間違っているか。
『んー、買い物でも行くか?』
『うん!行くー!』
こうして、俺と凛花のデートは始まったのだった。