2話 なんでお前が。
俺は今、マジで自分が主人公かを疑っている。
今日の朝までは、多少はリア充のような生活だった...気がする。朝には美人な幼馴染が迎えに来て。教室に着けば、イケメンの友人と、談笑して、俺に似合わない朝だったなぁ...。さらに、理想としては転校生が俺の隣の席に来て、平凡な生活から抜け出し、俺のラブコメが再スタートするはずだったんだよ。それを、どう間違えたら、こんな、つまらない人生に逆戻りしたんだよ。
まあ、いいよ、俺があの後起こった事を分かりやすくまとめるよ。
玲音の隣の席に座った霊奈。まるで玲音が主人公だよ。あー、マジでイケメン滅べよ。この時点で俺のメインヒロインのルートは無くなりました。え?幼馴染はって?よくぞ聞いてくれた。凛花ならさっき、彼氏に呼びだされて、朝一緒に登校したいって、誘われたらしいぜ。遠回しに俺から遠ざけたいんだろう。さあ、そんな悲劇の連続で俺はどうしたらいいんだろうな。もういっそ屋上から飛び降りようかな。いや、しないよ?チキンだし。今は自席で1人でスマホいじってるよ。可哀想だと思わねえ?昼休みに、1人で自席でスマホいじるって。ぼっちだよ、何が悪い。こんな小説読んでるお前らと同じ人種だよ。あー、マジでこの人生ってくだらねぇよな!!あーあー!なんか起こらねえかなぁー!
なにも起こらないまま、早1ヶ月がたった。
『マジで何も起こらねえ...。』
俺はいつも通り一人で学校へ登校し、少ない友人の1人である、玲音と話していた。
『いや、まあ、そう言うなよ湊人。人生に変化を求めるなんざ、邪道だぜ。』
『お前はいいよなぁ!?あの俺の悲劇の連続から、2週間後に、転校生である霊奈に告ったら、成功しちゃうんだもんなぁ!?イケメンってやっぱりくだらねぇな。』
『いやー、よくぞ言ってくれたよ!毎日が幸せだわー!いやー、あんな可愛い彼女出来るなんて、人生って分からねえよなー!』
こいつ...マジで許さん。俺のメインヒロインを奪うなんて。まあ、俺のものじゃないんだけど。
『まあ、恋人探し頑張れよ、湊人君!』
『わあってるよー、ったく、可愛い女の子の1人や2人、紹介しろっての。』
『ねぇねぇ、可愛いって聞こえたけど、私の事ー?』
凛花かよ、すぐ自分の事可愛いって言うんだよな...まあ、確かに可愛いから、否定はしないけども。
『うるせぇ、お前じゃねぇよ。もっと俺はおしとやかな、綺麗な女性が好きなんだ。』
『もー!まるで私がおしとやかじゃ無いみたいじゃんかー!!』
『え?違ったのか?』
『もー!みなとの意地悪ー!』
あー、凛花のほっぺた膨らんでやがる。お餅みたいだな...。ぷにぷにしたい。はっ、いかんいかん。
『おぉ、そーいや玲音。お前の彼女さん、今日は学校休みみたいだなー?なんか聞いてないのか?』
『うん、それが全くね。最近彼女、元気無かったし、それも絡んでると思うんだけど。』
『んー、まぁ、何も無いと良いな。』
また、何もない一日が流れるのだろうと、1人思いながら自宅へと歩き出した。
歩き慣れすぎて、飽きる程の通学路を一人で歩き、ようやく家に着いた。
玄関に入った瞬間急に身体に違和感を覚えた。
『な、なんだこれ。身体が、おかしいぞ...。』
冷や汗が噴き出してくる。なんだこれ。感じたことのない嫌悪感が俺を襲う。と、とりあえず寝よう。寝たらきっと良くなるだろう。あいにく今日は家族は誰もおらず、フラフラしながら、一人、部屋に向かった。
長い道のりを経て、ようやく自分の部屋につくと、ベッドに倒れこんだ。
『な、なんだこれ!?か、体がう、動かない!?』
目を覚ますと、身体の自由がきかなくなっていた。あぁ、あの後すぐに寝てしまったのかと、すぐに理解する。だが、どうしてもこの状況は理解できない。これが、俗に言う、金縛りってやつなのか!?
動けよ、動けよ!俺の身体!!
『待って...』
『え。』
俺はこの声に聞き覚えがあった。
それから数分が経った。
『動ける...と思う...』
本当だ、身体が、自由に動く。そして、なぜか目の前にいる、1人の女性。
なんで。なんでお前がここにいるんだ。
『お前は...鈴森 霊奈か?』