俺は人生の勝ち組になりました(下)
……そうして今、俺は少し人目のつかない校舎裏にいる。ここから行けば自転車置き場の近道だということでここを通るのだが、こんなところに置いていかなくてもよ……。
「あ、赤城くんっ……ちょっと良いかなっ……?」
俺へ不意に女子の声が飛んできた。少し驚きはしたものの、比較的冷静に顔を上げれば、そこにはクラスメイトの仁科 千晴がいた。
「おう…どうした?」
「い、いやっ…えっと…そのっ……」
彼女はモジモジした様子で後ろ手に何かを隠している。そこそこに仲がいいはずなのに、何やらとてつもなく恥ずかしさを感じているようだ。
「こ、これっ…」
そう言って彼女は手を前に出した。どうやら隠されていたものはチョコだったらしい。何個目か数えてはいなかったが、それは貰ったどれよりも凝っているように見えた。
「……わ、私と…付き合ってくださいっ…」
立ち去ろうとした俺に、脇腹を思いっきり殴られたような衝撃が走った。
彼女の顔を見てみれば、これまで見たことがないくらいに真っ赤に染まっている。人間とはこれほど顔を赤く染めることが出来るのか。そう驚くくらいには赤かった。
……というか、なんだ?俺は今、告白されたのか?
彼女はじっと頭を下げたまま固まっている。
……これはマジだ。夢じゃない。俺がマジの告白を受けている……。
この2週間で俺は特に恋愛感情を抱いたことは無かった。だが、恋愛が出来るという信じられない事態に直面した今、相手が可愛いことも踏まえると断る理由がなかった。
「……あ、あぁっ…よろしくっ…」
俺はなんと答えればいいのか分からず、そんな何の変哲もない返事を返してしまった。
だが、彼女はとても嬉しそうだった。彼女が顔を上げると、その顔は相変わらず真っ赤で、目には少し涙が浮かんでいる。
彼女に気を取られて気付かなかったが、遠くの物陰に隠れながらこちらを見ている恭平の姿が見えた。彼はニヤニヤとしていた。そういうことだったらしい。
あの後、俺は彼女…千晴と一緒に途中まで帰った。
初めて女の子と手を繋いだ。
初めての彼女と帰る帰り道はとても短かった。
バレンタインデーというものは、最高だった。




