届かないこの手
お久しぶりですね!
一時期外伝を中止いたします!
楽しみにしていた方、まことに申し訳ありません!
町の道路に沢山の人が揉みくちゃになって、こっちに流れていく。
龍介の姿が見える。
黒い服を着て、明らかに怪しい男たちに無理やり手を引っ張られて。
走りたい、走りたいけど走れない。
追いつかない。
遠のく。
とうとう、龍介は黒い車に乗せられ何所かに行ってしまった。
目の前が白黒に見えてきた。
とても小さく無力な手を見詰める。
龍介のもっと小さい手がその手に重なる。目は見えなかったけど、龍介は口で微笑んだ。
龍介が見える幻覚が済んでも、世界が白黒に見えた。
アティモスは一歩踏み出し、段々速度を上げて行った。
無茶だ。追いつけない。限界だ。
否定する思いと逆に、無理矢理にでも進もうとする身体。
思いの奥底にある思いが湧き上がってくるのを感じながら、走り続けた。
龍介は黒い車に腕を縛られ、車の振動で揺れていた。
読んでくれてるかな?読んでないかな?
瞼が重くなってきた。
助けに来てるかな?助けに来てくれてないかな?追いつけるかな?
あのまま・・・・
その時、龍介は睡魔に負けて眠りの中に落ちていった。
起きると、暗い場所に居た。
時折、オレンジ色の光が振ってきた。
下りたら、突き飛ばされて、白い扉の前に立たされ開いた途端蹴り入れられた。
足も縛られ、柱に繋がれ、ガムテープで口を塞がれた。
スマートフォンで電話がかけられる音が聞こえた。
ゴニョゴニョ言って聞こえないけど、「金」「お前の息子」といってる所から、お金を請求している事が分かった。
そして、「間に合わなかったら、息子を殺す。」という言葉が聞こえ、電話を切る音が聞こえた。
体が冷えていくような感じがした。
なぜなら、近頃、共働きのせいで家に誰も居ないからだ。
そのせいで、家事とか昼食とか買い物とかに追われアティモスの所に行けなかったのだ。
あの人の手紙は、悪戯用で家で書いたわけでなく、連れて行かれる途中で紙飛行機にして飛ばしたのだ。
死を龍介はその時悟ってしまったのだ。
黒い服の男が消えて行った後、龍介は大声で泣いた。
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アティモスがあるビルを通り過ぎようとした時、龍介が泣いている声が聞こえた。
古く、誰も住んでいないようだった。
隣に道路があって、転びそうなホンの少しの段差を見つけた。
そこに行くと、道路がいきなり傾いて、アティモスは盛大に転んだ。
その先には、トンネルがあって、オレンジのライトを時々見かけた。
トンネルを進むたび、龍介の鳴き声は大きくなる。
黒い車を見つけたが、無駄に命は取りたくないので、こっそり通ると、とても目立つ白い扉が会った。
開けると龍介が居た。
龍介はとても嬉しそうな目をしていた。
手足を縛っている縄を解いた。(ガムテープは龍介自身で取った)
銃声が柱だけの白い部屋に響く。
そして、高い金属音が聞こえる。
驚いて、黒い服を着た奴は銃を乱射する。
龍介を突き飛ばし、弾丸の軌道をナイフでずらした。
奴はその間に落ち着いて、急所を正確狙ってに撃ってきた。
これも、前と同じ様に対処して、奴に接近して首元にナイフの刃を押し付ける。
「殺さないのか?」
奴の言葉に、
「・・・・命は簡単に奪うものではない。」
こう返した。
すると、奴は大声で笑った。
何時用意していたのか分からない、ガソリンの臭いがするタンクの中身をこの部屋にぶちまけた。
「時間切れだ。」
そう言って奴は液体に火を点ける。(アティモスはガソリンを知らない)
勢い良く燃える炎の後ろで、奴が鍵を閉めて車を走らせる音が聞こえた。
龍介は慌てて、アティモスの元に駆け寄った。
ちなみに、アティモスのマフラーは外の気体を通すので、ハンカチのような役目はあまりない。
ココは狭い。酸素がなくなって死ぬか、焼け死ぬか・・・・といったところか。
アティモスは心の中で呟く。
ドアは駄目だ。窓もない。出る方法は・・・・護る方法は・・・・
白い部屋がオレンジと灰色で埋め尽くされている。
息苦しくなってきた。服に縋っている手が緩んだ。
速く・・・・速く・・・・
あたりを見渡す。
何も無い。物も、窪みも・・・・
出れない・・・・出れないのか?頼み事一つ出来ないのか?情けない。
揺れる炎に手を伸ばす。
いっそのこと、ウンディーネにでもなってしまおうか?
小さい手が、少し強く握られる。
そうだったな、知らないから不安になるか。
自分の裾を裂いて、龍介に渡した。
龍介は火災訓練の様に、折りたたんで口に当てる。
アティモスは炎の中に飛び込んだ。
誰かが扉を蹴破り、私が龍介を外に放り投げる。
新しい空気が入ったため、炎がさらに激しく燃える。
外から手が差し出される。
炎を空気を取られ、少ししか入ってこない。
目の前が揺らいでいく。呼吸が苦しい。
何所から殺気を感じ、アティモスはよろよろと立ち上がる。
すると、首の辺りに圧迫感を感じた後、呼吸が出来なくなった。
何が起きてるのか分からない、恐怖感に襲われた。
圧迫感があるところを触ってみると、何かある。
それを剥がすと、目の前が真っ黒になった。
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「全く無茶をするね。 私は・・・・」
私は私を見下ろしていた。
「まぁ、今日は止めといてやるよ。 殺すつもりも無いし、責め立てるつもりも無い。 今日は・・・・」
代償を支払ってもらったからね。
くすくすと笑い声が響いた後、私は仲間の居る世界に戻ってきていた。
「代償・・・・」
圧迫感のあった首をアティモスは触った。
痛くはなかったが、赤い血がついていた。
目の錯覚だと思いながら、手を握り締め、マフラーを口元まで上げて、皆に呼びかけた。
次回、私的ですが、残酷描写が多々ありますので注意です!