胃の中池の中
今回アレキ暴走に関する物語は幕を閉じます。
もう1つのハプニングをお楽しみに^0^
アティモスは、ゆっくり眼を開けると、アレキが隣にアティモスを支える様にして寝ていた。
羽織っていた、ヤガ(ジャケットの様な物)をアレキにかけてあげた。
相変わらず暗い景色から何か出で来るのではないかと、警戒しながら起き上がった。
可愛いアレキの顔に、恩人の顔を思い浮かべた。
「モグアイ・・・・」
そう言いながらアレキの髪をそっと撫でた。
「私は、何をしなければいけないのでしょうか?」
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ナモロが触れようとしていた瞳には、アティモスと、アレキの行動と、会話がそのままソックリ映っていたので見入っていた。
ナモロが見入っていたので、3匹も、アローも、アスタルテも、ゼロも、興味津々だった。
ついでに虎のバロンまで興味津々だった。
だが、顔は、1つしかないので、見たいみたいと、押し合い圧し合いになった。
そして、段々ヒートアップし、喧嘩になった。(武器は使わないが・・・・)
「いったい!」
そんなこんなで、揉めあってる内に、止めようとしたカロスバーナの瞳に、ナモロの指が入ってしまった。
すると、涙と共に赤い光が零れて落ちて、手の平に収まるくらいの赤い結晶が出来た。
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アティモスは、困惑していた。
アレキが消えたからだ。
黒い膜が、だんだん薄れていき、前居た竜の胃に戻った。
だが、酸っぱい臭いも、ビルの一面に横たわっている感触も無かった。
黒い膜は、透明な膜になっていたのだ。
赤い結晶が、透明な膜に飛び込むように入り、輝きを増した。
赤い結晶は、アレキの形を取り、礼を言って、粉々になり、何処かへ、吸い込まれていった。
「えっと・・・・ どうすればいいと・・・・」
「これ、アレキの身体? アレキ、できない。 アレキのなのに、動かない。 止めて、お兄ちゃん。 止めて、暖かい人・・・・」
と言う声が響いた。
「制御出来ないって、私を出したいのか・・・・ここまで広かったら、出る方法は、登る、飛ぶ・・・・そうだ、飛べば良いんだ!」
アティモスは、不死鳥に姿を変え、バハムートの姿のアレキの口元まで来た。
心が、いきなり入ってきたので、口は、開いたままだった。
顔には表わさなかったが、正直、ラッキーと、アティモスは思った。
見事に空を飛び脱出成功・・・・・・・
とはいかなかった。
もう少しで出られると言う所で、アレキのバハムート姿の身体が動き出し、鋭い牙を持った口を閉じてしまったのだ。
つまり、アレキの心が、アレキの身体を制御できず、心の無い抜け殻の身体が、また、暴れようとしていたのだ。
左の羽から、激痛が走った。
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アティモス(不死鳥の姿)から、羽が落ちてゆき、アティモス(エルフの姿)が、現れた。
痛々しい光景に、カロスバーナは、目を見開きながら口を塞いだ。
カロスバーナが心配で来たクリアヌも、驚きの仕草を見せた。
矢が、アレキの右目に突き刺さった。
この中で弓矢が使えるのは、アローしか居ない。
アティモスが落ちてくると、ゼロが、魔法を起動させ、ゆっくり落ちて行った。
傷は幸いにも、手首から外れていた。
けれど、かなり深かった。
「姉ちゃんの、弔い合戦だー!」
アローが叫んだ。
「いや、多分生きてるから。」
と、すかさずアスタルテが突っ込む。
「多分じゃなくて生きてるよ・・・・勝手に殺すな。」
と、アティモスもアスタルテの言葉を修正しながら突っ込む。
・・・・・・・・・・・・・・
「姉ちゃん生きてた~!」
アローが、アティモスに飛びついた。
ただ、アティモスが、顔を顰めたので、すぐに離れた。
「アレキが元に戻ったら、礼を言わなきゃな。」
「何で?」
「内緒だ。」
「えー、教えてよー。」
実は、竜の胃に居た頃、張っていた膜が、アティモスの腕が貫かれた時、出血するのを止めてくれて、今現在も出血を膜の御蔭で、止めてる次第だ。
起き上がろうとしたら、カロスバーナに押し戻された。
「起きちゃ駄目・・・・」
アティモスの耳にアレキの声が響いた。
バハムートのアレキが、怪我をしてない方のアティモスの腕を掴み、手の平に乗せた。
皆は、慌てた。
このまま食べられてしまうのではないのかと。
でも、危険に敏感なアティモスが、身動きひとつしていなかった事に気付いた。
「その身体に、その魂に問う。 貴方の今の、真の思いを答えよ。」
アティモスは、かすれ声で言った。
彼ならきっとこう言うとアティモスは思った。
すると、バハムートのアレキが、顔を突き出した。
アローは、弓を構えた。
だが、アレキは眼を瞑って、
「撫でて欲しい。」
と行動で示した。
言う通り、頭を撫でた。
そして、
「ありがとう、命拾いしたよ。」
と囁くと、嬉しげに額の部分を、バハムートのアレキは、アティモスの額につけた。
赤い光が2人を包み、アレキは人型に戻っており、2人とも地面に寝ていた。
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太陽が眩しく輝いたので、怪我していない腕で遮ろうとすると、何かが金色に光った。
よく見ると、金色の輪がはまっていた。
アレキも腕を上げ、付いた金の輪を眺めていた。
「竜攻護の契約ってんだよ。 その輪。」
ゼロが、見下ろしながら言った。
「兄ちゃんより、先にやるなんてなんかずるいなぁ。」
皆の頭の上には、?マークが、いくつも付いていた。
「テヘ?」
「なんか使い方使い方違うぞー。」
「まぁ後々話すから。 それよりも娘さんの手当ての方が先でしょ。」
ナモロが、眼を瞑ってコックリ頷いた。
・・・・明日・・・・
その夜、アティモスを除く一行が、何か会議を始めた。
「・・・・これなんてどう?」
「・・・・慣れちゃってるからねぇ。」
「じゃあこれは?」
「ちょっと刺激強いけどいいかも。」
「じゃあこれにしよっか。 アティモスを脅かすための作戦会議。」
そして、気味の悪い笑い方をして、眠りに付いた。
一体何をやらかすつもりやら・・・・(アティモスは療養中だろうが)
・・・・明日の夜・・・・
また一日過ぎ、夜になった。
皆が寝床に居なかったので、不思議に思ったが、寝床に行くと何かが枕元に置いてあることに気付いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
すると、ナイフを抜いて、外に行った。(テントの中にいたのだ。)
まず見たのは、どう見てもバロンがアスタルテを食べ損ねたとしか思えない死体(?)が転がっていた。
次は、アローが、井戸が溶けかけたのに突き落とされていて、次は、つぎは・・・・・・・
~ネタばれ~
アスタルテは事前に、バロンによく似た毛皮を用意し、噛み付かれたようにして被り、トマトジュースをかけた、アローは、井戸に降りて浮かぶだけのいわゆるお化け屋敷、少人数バージョンと言った所だ。
段々早歩きになるアティモスを見て、一見不思議に思った事がある。
小麦粉で作った偽の人形もこの計画に使っている。
しかも、グデーっとしていなきゃ駄目なのに、指を動かしちゃったとか言うミスに気付きそうなのに、気付かない。
記憶が叫ぶ。 思い出せと。 いやだ・・・・
あれは・・・・ あれだけは思い出したくない・・・・
「じゃぁ、またみんなを見殺しにするの?」
私の幼少期にそっくりな子が話しかける。
「違う世界に逃げて、同じことを何度も繰り返して、何をしたいの? 助けたい? 嘘つき!」
言うな・・・・
「みんなを殺して苦しい思いをさせてるだけじゃない!」
言わないでくれ・・・・
「じゃぁ、思い出しなさいよ! 過去も未来も皆・・・・」
「もう、言わないでくれ!」
月光の差し込む焼け野原。
声が消えても、光に導かれるがままに、走って走って走り続けた。
あぁ、私は馬鹿だ。
皆が演じている事なんて、分かっていたのに、震えてる。
なんでだ・・・・ なんで・・・・ 私だけ・・・・
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まぁ、ゾンビぐらいならギリギリセーフか・・・・ としぶしぶ参加していたナモロだったが、アティモスの大声に駆けつけて、仮装していたほかの皆と自分のクオリティーの差に気付き、あせり始める。
ただ、意外と近くにいて安心した。
「やっと追いつけた。」
アティモスがビックリして、飛び跳ねた。
「笑いに・・・・・・ 来たのか。」
ナモロは首を横に振った。
近づこうとした。
近づいて、顔が見たかった。
けど、急に足元の支える力が無くなった。
冷たい何かに落ちた。
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ナモロの気配が消えた。
振り返っても、声を上げても、叫んでも、いっこうに姿を現さなかった。
あぁ、最悪だ。
そういえば、ここら辺に池が・・・・・
「・・・・・・なるほど、落ちたな。」
あっさり言い切った。
ナモロは、猫科の半妖でも無いだろうが、泳げないらしく、なかなか上がってこない。
・・・・・・・つまり・・・・・
溺れた?
っていうか私、何で渡れたんだ? 変身してなかったような? ってそんなことはいいから!
アティモスは、慌てて池に飛び込んだ。
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・・・・・・
「遅い。」
「ですね。」
「姉ちゃんに悪戯したからこういうことに・・・・」
「原因は、どう考えても、いや、考えなくても、私たちだ。」
「クゥン」(バロン)
トマトジュースを洗い流し、服も、いつもの服を着た。
バロンもだ。
「あの誘い出すための手紙が悪かったのかな。」
アローが言う。
「あの、『仲間を助けたければ、何処何所に来い』っていう奴?」(いいえ、貴方達の仮装のクオリティーがおかしいからです)
クリアヌが言う。
「そうそれ。 としても遅い。」
「なんか聞こえなかった?」
そう言い出したのは、カロスバーナだった。
「ほら、また。」
「確かに・・・・・ってこれ、アティモスが、ナモロを探してる声だぞ!」
アスタルテの言う事に納得したのか、「へぇ~。」と言う声が漏れた。
「へぇ~、じゃ無くて、ほら! 探しに行くよ!。」
「は、はい!」
「いくぞ! アレキって・・・・ アレキが、居ない・・・・」
ゼロは、この一言をもっと早くに言ってたら良かったと後々後悔する事になる。
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潜水してるアティモスは、もう、きついくて、痛くて、しんどくて、散々だった。
水魔に襲われたり、ガルガグ(サメみたいな歯を持つ、肉食魚 ピラニアみたいなもの)に腕を噛み千切られそうになったり、ニャニュ(昆布みたいな、水草)に足を取られたり、今度はガルガグの大群が来るし(一体どんだけ広いんだろうか)、その性でいろんな所に切り傷作るしで、体力的にも精神的にも、限界擦れ擦れだった。
ついでに、治りかけてた腕の傷も開いたし・・・・・・
水中だから目が良く見えなくて、手探りで探しているから、骸骨引っ張りだす事もあったり、水草と間違えたり、ボブリム(海栗みたいなもの)が手に刺さったり、砂地掘って、砂アナゴ(おもいっきしチンアナゴ)が飛び出て突き指しそうになったし、空気が足りず上がったら、何所探してたか分かんなくなるし・・・・
でも、気力で探し続けた。
突然、『竜攻護の契約』となる輪が、光った。
暗い池を探すのに、神の血を受け継ぎながらも、光が神様の様に思えた。
右腕を目の前に翳しながら、潜っていったら、すぐに、ナモロを見つけた。
ホッとしたのもつかの間。
またもや、地の臭いに誘われ、ガルガグの群れ襲い掛かってきた。
なりふり構わず、ナモロを水面に向かって投げた。
アティモスは、ガルガグの群れに流されて行った。
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ナモロは、浮き上がった。
気が付いて、咳き込みながら、陸に上がった。
今度はそこに、険悪な顔をしたアレキが居て、どう見ても火属性なのに、池に飛び込んだ。
案の定、ジューって音を立てて、すぐに上がってきた。
「アレキここ無理、でも、助けなきゃ。」
アレキがいう言葉に、ナモロは問い返さずには居られなかった。
「誰を?」
「ご主人様、アティモス、助けなきゃ。」
アレキはその言葉を自分に言い聞かせるように、繰り返した。
反論しようとしたとき、アレキを探しに来た、皆が集まった。
「こりゃどうなってるの?」
カクカクシカジカこういう訳で、
「俺が、びしょ濡れで、アレキがこんな感じ。」
「陸に上がる前の記憶は?」
アスタルテが聞く。
「えーっと・・・・・・」
皆が唾を飲んだ。
「全く、さっぱり憶えてない。」
期待してたがゆえに、皆こけた。
ゼロは、縮こまっているアレキと、なんか赤く見える池を見て、状況を理解した。
~ゼロの予想~
①アティモスが、ナモロを助けに行く
②なんかに襲われる
③ナモロを陸に上げるため、力を振絞ってナモロを投げる
④襲われた相手に負ける=池の底または、なんかの餌 生きている=ズタボロ
ある意味当たってる。
池の底以外の考えは、もう思い浮かべたくなかった。
だが、見えない何かに突き動かされ、ナモロは池に飛び込んだ。
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今日は、運が悪いのかな。
色々と災難が降りかかってくる。
アレキ、初めて会ったけど、親近感があった。
もの凄く慣れやすかった。
ナモロ、会うことは無いだろうな、会うとしたら、魚の胃袋越しだろうけど。
あぁ、未練だらけだ。
皆、うまくやっていけるかな?
皆、忘れないかな?
大好きな彼を救えたかな?
救えて・・・・ いない。
まだ、私にはやるべきことがある!
何かわからないけど、何かを。
何かを・・・・
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その頃、地上では・・・・
パニック状態
「ナモロを助けたと思ったら、アティモスが危険になるし、何をすりゃいいんだ。」
ミニお化け屋敷の件から、口をつぐんでいた3匹のうち、イヒロが口を開いた。
「ここ暑くない?」
「何を言うんだ、アレキ。 むしろ寒い位だぞ。」
「アスタルテ、アレキ、フライパンに、なったの?」
「いや、人間の姿だが、横に来ると蒸発したばっかりの水蒸気に、身体半分付けたみたいになる。」
悩みに悩む・・・・
突然、火の玉(?)みたいな物が水面に浮かんだ。
勿論アローは、青ざめていた。
だが、火の玉らしき物は、水面をウロウロして、別の場所に降りて行った。
それと同時に、ナモロが上がって来た。
「あぁ、しんどい、うざい、よくアティモスは潜り抜けられたな。」
そう言いながら、鞄からタオルを取り出し包まった。
何の事だかと最初は皆首を傾げたが、ガルガグのル位で皆ナモロが言うことを理解した。
ナモロが、アティモスを助けた。
めでたし、めでたし・・・・
と行きたい所だが、またいざこざが合ったらしい。
一週間ぐらい後のこと・・・・
アティモスが、身体を休めているテントに、ゼロが駆け込んできた。
「お嬢さん! 大変だ!」
一体なにがあったのか・・・・
また次回お会いしましょう。