マフラーとアティモスの秘密
今回マフラーの謎が明らかになります!
辻褄を合わせるため、内容が変わっています!
変更中です!
さて、ここは海上で、みんな考えあぐねていた。
現在は夜だった。
食事の件で、三食アティモスが作っていて、今怪我をして絶対安静なので、今日の食事をどうしようかと考えていたのだ。
まぁ、アティモスは粥だが・・・・
とりあえず、皆、別々の料理を作って、食べあう事にした。
ところが・・・・
全部作ったものが、やばい雰囲気を漂わせている。
食べてみるのだが、不味くて食えたもんじゃなかった。
「うーんっと、今日は何にしようか? ん? 何をやってるんだ。 みんな。 この格好なら料理ぐらいできるぞ。」
長髪のナモロに良く似た人が入ってくると、皆その手があったかとでも言うように、納得という顔をした。
何で分かったかというと、やっぱりあのマフラーだろうか。
深紅のマフラーは、血でも入っているかのように赤く、黒い色だった。
料理は、アティモスに任せるとして、問題は・・・・
あのマフラーだ。
何時も着けていて、苦しかろうにと思っているのだが・・・・ まぁ、本人がつけてるのだしいいか。
次の日・・・・
眠たい目をこすりながら、ナモロが扉を開けるとオニオンスープと、パンがある。
だれが作って、誰が持ってきたのかは、もう分かり切っていることだ。
朝食を早めに済ませたら、ナモロは礼を言いにアティモスの部屋の前に来た。
だが、鍵が開いていた・・・・
不吉な予感しかなく、ナモロは恐る恐る扉を開けた。。
戸を開けると、薄暗い闇の中、倒れている人影を見つけた。
漂ってくる血の匂いは、彼女の死を彷彿とさせた。
駆け寄って、生死を確かめると、生きてはいた。 息をしていた。
だが、明らかに苦しそうだった。
「何があったんだ!」
ナモロが叫ぶと、口をパクパクさせているだけで、声が出ていなかった。
マフラーが無かった。
でも、苦しそうなアティモスを見ると、芝居をやっている訳ではなさそうだった。
気付いていない。
知らせたいが、声が出てこない。
苦しいし、途轍もなく痛い。
身体が自分のことを拒んでいるみたいだ。
・・・・
このまま死んでしまうのかと思うくらいだ。
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「おいで。」
誰だ・・・・
「おいで。 君の・・・・ 君の世界はこっちじゃない。」
何を言っているんだ?
「君の居るべき場所はここじゃない。 君はこちら側の人間だ。 闇の中の人間だ。 さぁ、光の中から、闇の中に戻ってこい。」
うっすらと私とおんなじ人影が見える。 逃げようとしても逃げられない。
「さぁ、死なないから、体から力を抜いて。 力んでいると・・・・」
医療用のナイフが首を撫でて、胸のあたりで止まる。
「動脈に刺さるかもね。」
ナイフがそこに勢いよく突き刺さって、血飛沫を上げるとともに、凄まじい痛みが襲ってきた。
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ナモロがアティモスを揺すろうとすると、アティモスの息が荒くなって、服にしがみついてきた。
目に物が映っていないのか、ナモロを探すのも手探りだ。
「た・・・・ すけ・・・・」
枯れた喉で、絞り出した声はとても苦しそうだった。
「・・・・分かった。 でもひとりじゃ無理だ。 助けを呼んでくる。 いいな?」
うなずくのが分かった途端、部屋を飛び出して、機内を駆けた。
このまま探したら確実に、助からない。
甲板には、兵隊がワラワラいる。 一人ずつ聞いて行ってもらちが明かない。
ある思い出が頭をよぎった。
あの人が、マフラーを握りながら言った。
「私は赤色が好き。 特に血の色が好き。 だって、生きてるって感じがしない? 私は、血が流れていて、生きているんだと実感できるんだ。 ・・・・ やっぱり、私は変か?」
頬を伝う涙。
聞いたことがある、懐かしい声。
血の赤・・・・
「いや、今はこんなことにとらわれている場合ではないな。」
その時、近くを小舟が通っていく。
いつもは、素通りで終わるのだが、その船は、渦潮の様な何かに飲まれかけていた。 そこから見えた赤い血の色のマフラー。
体は、勝手に海に飛び込んでいた。 これが本当に彼女のとは限らない。 でも、確信した。 これが彼女のマフラーだ。
船に手をかけたと思った瞬間、手の甲を何かで撃たれた。
撃ったのは、船の上にいる白衣を着た男だった。 白衣には、ピンクの桜と赤い血の刺繍が施されていた。
船に無理にでも乗り込もうとした時、ナモロの体重で船の中にあった海水が傾き、男とナモロは船が沈んだ反動で海に落ちた。
男は戦ったことも海に潜ったこともないのか、大量に海水を飲み込んでしまっていた。
ナモロは、海に落ちたマフラーを引っ掴んで海面に顔を出した。
「何をしておられるんですか!」
兵士に言われて、怒られることを覚悟したナモロ。
でも、そのあとに聞こえたのは、兵士のグダグダした説教ではなく、聞き覚えのある静かな声。
『君は、ナモロという一つの名前だけを抱えていくべき人じゃない。 君には、私の過去と言う未来を知る権利がある。 君がもっと強くなってからな。』
「強くなってから・・・・ ね。 忘れてるくせによく言うよ。 リーナ。」
小声に呟いた。
兵士たちが甲板でドタバタと走り回っている。 ロープや縄やなんやらで物を探し回っているのだ。
浮き輪を落とされ、捕まって一息ついた。 が、それもつかの間。
波にもまれているからわかるが、波が強くなってきている。
後ろを振り向くと、真っ白な船が見える。 2~3隻ほどの大型の船。
縄を落とされ、それを握って甲板に上り、サッとタオルを被せられた。
船には同じ白衣を着た人がたくさん乗っていた。
その船は、何故か此方を憎む視線を向けてくる奴らを乗せて、遠くへ行ってしまった。
その視線は、何度も見てる。 彼女が『過去』を覚えていないだけで。
俺が結末を、『未来』を覚えていないだけで・・・・
憎いあいつ等を殺せなかったのは惜しいことをしたが、今は彼女のことが最優先だ。
ただ、彼女が元気になっていたり、元気になった後、このびしょ濡れ状態に絶対になんか言ってくるだろう。
その怒った顔を想像すると、笑いたいような怒りたいような気持ちに襲われた。
部屋に帰ると、本当に彼女がけろっとした様子で出迎えてくれた。
びしょ濡れになったことを叱ろうとする彼女に、お互い様と言おうとしたが、そこには前の何も知らない明るい瞳とは違い、どこか悲しさや寂しさを隠しているような・・・・ どことなく怒れない瞳が自分を見ていた。
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何事も無かった様に日は進む。 船は時には宙を舞い、時には海を進んだ。
ハーピーの三兄弟は一足先に、自分の翼で国へ帰っていることだろう。
私の見た夢はなんだったのかとアティモスは自室の窓から顔を出し、ため息をつく。
私とそっくりな人や、医療用のナイフ。 胸に刺さったあの激痛は、味わったことのないはずなのだが、こういう事があったような気がしてないらない。
「光の中から、闇の中。 ねぇ・・・・」
そもそも盗賊という稼業は影の職業だと思うのだが・・・・
いや、考えまい。
そう思った直後ドアが開いて、国についたと船の兵士が笑顔で報告しに来た。
船から降りると、たくさんの民衆が列を作って私たちを褒め称えてくれた。 だが所々で、あの薄汚い小娘がやれるくらいだから、俺の方が・・・・と言う、人選に対しての不満も聞き取れた。
無視しながら歩き続けると、近衛兵を引き連れた馬車が道からやってきた。 馬車が来た方向からは神獣様を褒め称え、あたかも神獣様自身が敵を退治してくださったと言う声が上がった。
馬車から一人の人が下りてきた。 顔は、白い布で覆われよく見えなかったが、男だ。 たぶん・・・・ 男は、大声で言い始めた。
「皆の者、よく聞け!」
はいはい。 どうせこの者が倒したとかどうのこうの言って祭りでもやるんでしょうに。 私は表に立つの嫌なんで、とっとと退場させてもらいますよ。
と心の中で私は愚痴っていたのだが、私も結構考えが甘かった。 それを認めることは、英雄が(つまり私たちが)民衆の指示を集めるのを認めていることになる、民衆が政治に不満があった場合、私たちが反乱を起こすというシナリオも、考えておくべきだった。 だが、それは男が全てを話し終えた後だった。
男はこう続けた。
「この者は、神獣様が倒した敵を『我々が倒した』と言い張り続けたのだ!」
周りの空気が凍ったような気がした。 視線が疲れをねぎらう優しい目線から、一気に罪人を見る目に変わった。 騒ぎ声も当然ない。 仲間たちはいきなり濡れ衣を着せられ、言葉が出ない。
「神獣様に逆らうものは当然死刑! そうであろう?」
周りから賛同の声が上がる。
でも、また静まり返った。 私が口を開いたからだ。
「私はもともとお前らから呼び出されてわざわざここまで来た異国の者だ。 この国の仕来りは知らない。 これはどういう事か?」
異国の者と言うのは嘘だが、国の仕来りを知らないのは事実である。 もともと人との関係が薄いので、祭りとかに関わってこなかったのだ。
「ほぅ。 この世界の中心とも言える神獣様の掟。 知らない奴が居たとはな。 それこそ重罪だぞ!」
話が通じん!
一方、殺気を漂わせる人々にアローは怖気づいていた。
それじゃあ・・・・
「もういい。 話が通じていないらしい。 弟が怯えてるので帰らせてもらう。 もちろん反逆者だものなぁ。 おまけに傷の一つでも付けてやろうか?」
近衛兵が槍を構え身構えた。
「まぁ、冗談だが。 それじゃぁ、」
といった直後、槍が飛んできてナモロの肩に突き刺さる。
私の中で何かが目を覚ました。
頭が考えるより先に、時間制御で時間を止めて男の首元でナイフを止め、時間を進める。
男は、時間を止めていた分、その間の私の行動は瞬間移動に見えたのだろう。 驚きとともに、冷や汗をかいた。
少し私は血が上っていたのかもしれない。 と考え直した私は、
「失礼なことをした。」
と言って男の首からナイフを離し、仲間と時間制御で瞬く間に消えた。
着いたのは私たち姉弟の家だ。
「ナモロ、大丈夫か?」
「あぁ。 太い血管に当たらなかっただけましだ。」
「応急処置ぐらいしろ。 ゼロ、いまさらだが家の巨大化はできるか? 寝床が足りん。」
「分かった。」
光を帯びた家を見つめて私は、何かが崩れ落ちていく奇妙な感覚を感じていた。
光がなくなったが、外見は変わらない。 中に入ると、とても広く快適だった。
暖炉の火が、パチパチ音を立てて燃える。
ナモロの怪我は重傷ではなかったが、深かった。
手当てをしながら安心した。
でも、私は呟いた。 無意識に、
「私はまた、同じことを繰り返す。」
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