無慈悲な太陽 慈愛の月
(アティモス)「・・・・ もう慣れた。」
(ナモロ) 「突っ込む気はもう失せたぞ。」
(narikori05)「すいません・・・・」
(ナノハナ) 「はいはい。 始まりますよ!」
「・・・・ しまった。 発砲音のことすっかり忘れてた・・・・」
急いで振り返ると、どうやら気付かれていないようだ。
お前らの耳はどうなってるんだ?
部屋の中では、ナノハナが、花火でもやっているんだろうか? と勘違いしたせいで、この発砲音は無視されていた。
だが、相手は怯んだ様だ。 銃口を突きつけて一歩踏み出す。 ズシンという音と共に、相手が一歩下がる。
俺は 首を傾げる。
何で逃げる。 何も疚しい事がないなら、逃げる必要は無い。 なぁ、そうだろう?
元同業者さんよ。 彼女に何をした?
怒りが身を焦がす。 視界が真っ赤に染まり、手を握り締める。 柄の固い感触が手の中にある。
服装が少々動きにくい神主みたいになったが、まぁ・・・・ いいハンデだろう。
刀を構えると、相手は下がりながらもチェーンソーを構える。 唸りを上げるその凶器は刀を砕こうと、迫りくる。
だが、それに反し刀は折れず、醜く歪み動かない鉄の塊を相手は握り締めていた。 残光の尾を引いて刀が振り下ろされる。
一泊間を空けてそれは真ん中から二つに切られた。
最後の抵抗とばかりになる煩い金属音。 相手が焦り始めた頃、地面を蹴って走り出す。 でかい鉄の塊を振り回している奴らを切り刻んでいく。 滾る闘志を刀に預けるように。 刀は絶対に折れないと、何故か絶対的な信頼を俺の中で獲得している。
不意に口元が緩んだ。 残りは見える限り五体。 その一体に切りつけようとしたとき、腕に何かが絡み付いて後ろに引っ張られた。
後ろを振り返る。
黒い物体が鋭い牙が幾層にも奥に並ぶ口を開けていた。
あ、終わった・・・・
そのまま口に放り込まれてお終いかと思ったのだが、化け物は触手をしならせ、
「・・・・ は?」
後ろにブン投げた。
「ちょっま・・・・ まってくれぇぇぇ!」
壁に叩きつけられて、右肩に強い痛みが奔った。 肩は多分、ブン投げられたせい・・・・
でも、中の人は気付かない。 なぜなら、皆寝てるから。(寝るなや!)
右肩が動かせない。 片手では大分、強さが落ちる。 舌打ちしながら、刀を支えに立ち上がると、
隣に病気のような青白い肌の彼女が居た。
彼女は嬉しそうに踊りながら家ぐらいの身長のある化け物を操る。
化け物は黒い液体を滴らせながら、触手を手のような形にして彼女に差し伸べる。
彼女が微笑みながら手を取ると、周りがクレヨンで書かれた熊や、木々が生い茂る。 子供っぽいその絵は、一つだけ異常だった。 マリーゴールドの花だけが咲き乱れ、黒い液体が飛び散る。
奇怪な泣き声と共に口から無数の腕のような舌をだす。 体からは足や、顔が浮き出る。
彼女は声を立てて笑いながら、怪物に頬ずりした。
怪物の舌が彼女の首を絞める。
俺は舌に斬りかかった。 だが、体から無数に生えた足によって阻まれる。
斬っても斬っても足は再生していく。
殺す。
それだけしか頭に無かった。
星が消えかけきた頃、足はどいた。
そこには、彼女の姿は無かった。 彼女は怪物の上でクルクル回っている。 首には絞められた痣が残っている。
急に、彼女は止まった。 俺を見下ろして、微笑んだ。 どこからか取り出したナイフで自分の胸を貫いた。
ナイフが抜かれた傷口からすごい勢いで血が噴き出した。 黒く見える血は、重力と関係ない方向に伸びていく。 彼女が俺を虚ろな緑色の瞳で見つめる。
君のせいだよ。
彼女がそう言った気がした。
手を伸ばす。 俺を捕まえようとしているかのように。
罰を与えるのが君なら、甘んじてそれを受け入れよう。
僕らが、君をこんな運命に導いてしまったと言えるのだから。
手を伸ばした。
怪物が、触手で彼女を捕らえ、喰らった。 手首が地面の上に転がり落ちる。
咀嚼する音が聞こえた。
しばらくすると、怪物が叫び声を上げ、破裂した。
彼女は怪物の体液を浴びながら、敵に向かって走って行く。
怪物を警戒していた敵も、俺と彼女を殺すため、二手に分かれた。
彼女は、機械のゴムの所をナイフで切りそこから中にもぐりこむ。 機械の中で男の叫び声が上がった。 機械が彼女に操られて、味方をチェーンソーで切り裂いていく。
その間、俺も2体ほどやっつけて敵を殲滅させた。
その時、ふと気が付いた。 クレヨンで書かれたような世界は無くなり、マリーゴールドの花は見当たらない。 転がっていた手首も何所にいったのか。 彼女の腕には、手がきちんと付いていた。
「・・・・ あー・・・・ ここまでに起きた事を一から説明してくれないか?」
「・・・・ OK。」
さて、帰ろうかと思ったのだが、ココでまた一つ思い出した。
「おい、アティモス。 あのナイフ、どう見ても肺まで入っていた気がするんだが、大丈夫か?」
「ん? ・・・・ うわっ! なんだこれ!」
「なんだこれじゃなくて、痛くないのか?」
「いや、全く。 ちょっと、焦点が合わなくなってきただけだ。 あと、フラフラする。」
「それ、血の出しすぎ! 全く、休め!!」
「えぇ・・・・ 麻痺でもしたのかな?」
彼女は、傷に触れる。 顔を歪める事も無く、傷を強く押そうとするので、慌てて手を掴んで引き離した。
青白い顔が仄かに光っているようにぼんやりして見えた。
「ナモロの方が、やばいんじゃないか? とても軽く考えても打撲はしてるだろう?」
「そ、それは気のせいでは・・・・」
「運が悪けりゃ、脱臼。」
「・・・・ ナノハナに頼む。」
「じゃぁ、私は包帯をお前に頼むか。」
「おい! お前は一応女なんだぞ! もうちょっと・・・・」
「私が背中を見せておけばいいのだろう?」
「そしたら傷口が見えないじゃないか!」
そこに、夜の時に効力が高くなる薬草を取ろうと表玄関が出たナノハナに俺たちは目撃された。
で、裏口に引きずられるようにして治療を受けるのだった。
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私達は、治療を受けながら気まずそうな顔をしていたと思う。
「アティモスはトラブル体質だから仕方ないとして、今回はナモロもか・・・・」
肩の関節を嵌めながらナノハナが呟く。
ナモロが顔を歪める。
その上から包帯をし、樹脂性のギプスで固めていく。
「はい、暫らくは動かせないからね! どれだけ早くても6か月ぐらいはそのままよ。」
「・・・・ 基本的には銃だから片手でも特に問題は無い。」
「だけど、刀はちょっと難しいかもね。 じゃぁ、アティモス・・・・ って、何コレ! いかにあんたがトラブル体質だろうと言えども、この怪我は異常だよ! でも、動くなって言っても多分聞かないでしょうし、今の貴方は現時点の最高戦力。 止めたら、多分薬局も一から作り直しだからナモロ以外の誰かの同行が無い限り外に出るのは禁止! って事で。」
「なんで俺はだめなんだ?」
「怪我してるし、止めれないと思うから。」
「・・・・」
と言われながら、強めに包帯を巻かれていた。
特に痛いと言うのは無い。
だが、今、採集などは控えたほうがいいだろう。 体がだるく、頭がボーっとする。
「そういえば・・・・」
私が振り向く。
「あの化け物は何だったんだ?」
「・・・・ ? 何のことだか分からないな。 すまない。」
「あぁ・・・・ 知らないんだったら良いんだ。」
私は首を傾げる。
空が白んできた。 太陽はまだ出ていない。
仄かな光は、彼の怯えた顔を照らした。
羽音が聞こえてきた。
「やぁ・・・・ いつものやつをくれ」
「なに? やけに消費するね。 どうしたの。」
「最近、侵入者が多くてな。 時に何匹か逃がしてしまっているが、昼間には居なくなっている・・・・」
私たちのせいです。(二つの意味で)
「今夜、多分ピークだ。 『はいきがす』とか、あの機械兵が特に来る時間になると思う・・・・」
「じゃぁ、いつもより多めに出しておくね。 ちゃんと考えて飲むのよ!」
「分かった。 ところで、あいつ等はどうなってるんだ?」
苦笑いを浮かべながら説明すると、顔を歪めた。
「また・・・・ 引越しの時期か。 新陽の者達にはすまないが引越しか、とどまるかを選んでもらう日が来たようだと伝えなければな。」
一羽のカラスが森のほうへ飛んでいった。
陽の光が森から見えた。 新しい陽が生まれた。 何故か、戦慄を覚えた。
よく見ると、陽の光が強すぎて皮膚が刺すように痛んだ。
「・・・・ ユイン・・・・ コレは引っ越すだけじゃ終わりそうに無いぞ。」
逆光で黒く見える姿には見覚えがあった。
「コレは・・・・ 覚えてないぞ!」
ナモロが意味ありげなことを話していたが、それよりも人影に眼が吸い付けられた。
「イユー・・・・シュカ・・・・?」
いつもの優しい眼差しが無慈悲な太陽のように私に、刺さった。
突然激しい頭痛が襲ってきて、近くにあった薬品棚にもたれ掛かった
「アティモス!」
あまりに痛いものだから、無意識に手を当てた。
すると、さらに痛み始めた。
頭に当てた手の平を見てみると、血がベットリと付いていた。
「どうしたの? 何で避けなかったの!?」
困惑した。 ただただ、分からなかった。
見た限り何も飛んできてないし、と言うかココまで投げれる豪腕じゃないし・・・・
「ねぇ、何でよ! 避けてってついさっき言ったばかりじゃない!」
「ナノハナ、落ち着け。 さっきのは・・・・」
「だいたい、何時も大怪我転がり込んできて!」
息苦しい。 目の前が真っ白になる。 あちこちが痛い。
私はギュッと身を縮めた。
「ナノハナ! 止めないか!」
彼が叫んだとき、私は大きく息を吸い込んだ。
言葉を出そうとして、出なかった。 掠れたような、ヒューと言う音を喉から出しただけだった。
「・・・・ アティモス?」
鉄臭い匂いはあの傷のせいだ。 息苦しいのは血が足りなくなったせいだ。 この痛みは何のせい?
自分の体を強く抱きしめた。
「アティモス、落ち着け。 ゆっくり息を吸って、吐いて。」
上手く整わない息に焦りながらも、言う通りに深呼吸をした。
視界が白くぼやけ始めた。
日差しがジリジリと傷口を焼いた。
「お久しぶり! お姉ちゃん!」
その時、勢いよくドアが開く音がした。
ナモロがリボルバーを回転させたのが分かった。
発砲音と、ガラスの割れる音。
抉れるように、刺すように、斬るように、痛むところを強くかきむしった。
「どうしたの! 行き成り銃を使うなんて! 何よ! 待ちなさい!」
着地音がして、彼がこの場からいなくなったことを知った。
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これは、予想外だ。
多分、あの分岐が初めてだから、この先が予測できなかっただけだろう。
「あっ! お兄ちゃんだ! お久しぶり!」
まず、対話から試みようか。
「あぁ。 で、何でそんなおっかない姿になっているんだ?」
「え? あっ、これはね、お父さんたちがお姉ちゃんに会わせてくれる条件でなったんだよ! これで、お日様が沈むまで、遊べるんだ! 良いでしょう!」
アイツらの所為か。
「その後ろに背負ってる眩しいやつ、どうにかならないか?」
「駄目だよ。 お姉ちゃんに会えなくなる。」
「すまないが、どうしても外して欲しいんだ。 じゃなきゃ、傷つく奴が大勢・・・・」
「お兄ちゃんも邪魔するの?」
「えっ?」
「じゃぁ、お兄ちゃんもバイバイしようね。」
光の矢が地面に突き刺さった。 威嚇か?
「じゃあね。 お兄ちゃん。」
後ろに無数の矢を浮かばせて、一気に俺に向けて放つ。
百は確実にあるだろうが・・・・・ 避けれるか・・・・
とりあえず、右に避けて・・・・
矢は、驚いたことに、しなやかに曲がって俺を追尾してきた。
厄介な・・・・
森に入って行くナモロを見て、イユーシュカは上からも矢の雨を降らせた。
木々に矢が当たっても、すり抜けてしつこく俺を追って来る。
体力勝負になりそうだな・・・・
「早く! 早くあの忌々しい人を殺して! 私の太陽!」
「ちょっ、ちょっと待った! 待った!」
「何が待ったよ! 消えちゃえ消えちゃえ消えちゃえ消えちゃえ!」
あ、駄目な奴・・・・
日差しが強くなる。 こんなに、尻尾がモフモフなことを恨んだことはないだろう。
キツイな・・・・・ こういう時こそアレキだろう?
「お兄ちゃん、避けるのがうまいね! でも、どうせ直ぐにやられるんでしょ!」
「避けなきゃ死ぬんだよ! あと、やられてたまるもんか!」
「しぶといね!」
「しぶとくてなんぼだ!」
そういって、地を蹴った。
「今度は、俺と追いかけっこしようか。 なに、矢も使わない。 本体同士で勝負と行こうか。」
「え?」
「俺は・・・・」
後ろに赤く輝く月が現れる。
「俺は、月だ。 優しく照らすだが、そんなに苦しめる太陽には仕置きが必要だな。 ん?」
「・・・・ は・・・・ ははは。 ははははははははははははははは!」
「・・・・」
「いいよ。 やってあげるよ! どうせ私が勝つけどね!」
(アティモス)「もう少し頑張れよ」
(ナモロ) 「っていうか、主人公二人いないかい?」
(narikori05)「それはわざとだよ。」
(ナモロ・アティモス)「は?」
(ナノハナ)「次回をお楽しみに!」