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続!三人娘改造計画②

 それを知ったところでどうだというのか。


 なんて思っちまうんだが。


 それって俺だけ?

 あんなことになっただけに不安が大きかったが、マテスさんとエメリカさんは無事に魔素と魔力の流れを感じ取ることができるようになった。


 やはり一度目はそれどころじゃなかったらしいんで、ならばと、流す魔力量や時間調整の試行錯誤を繰り返し、どうにかこうにか耐えられる程度を見極めてみた。その過程でマテスさんとエメリカさんがとんでもないことになったりしたが、そこは割愛。

 で、ある程度慣れて精神的な余裕が生まれたところで、ようやく感覚が掴めてもらえたようだ。


 あんまりしつこくねだるんでコルテにも仕方なくやってやったんだが、「これは危険。リウトは女殺し」などと俺の人物評に非常に不本意なものを追加しやがった。


 さらに、「本当に魔力を流されるとそのようになるのですか?」との疑念が消えないらしいベレッタさんにも、細心の注意をはらってお試し頂くことに。

 だが、ほんの少し流した瞬間「うひあ!?」と跳ね起き、「破廉恥なああ!」と叫びながら俺に強烈な平手打ちを見舞って涙目で部屋を出ていってしまった。

 なぜかかわしてはいけない気がして甘んじて受けたが、すんげえ痛えの。俺も涙目。


 さて。


 ここ数日は、晩飯後みんなで食堂に居残って、三人娘は俺が教えた座禅の姿勢で魔力を練り巡らす鍛練。

 それを横目に、俺はちょいとした工作をして過ごす。

 相棒は三人娘と鍛練したり、俺を手伝ったり。

 仲が良くなった騎士さん達がたまにそこへ加わって、てな感じだ。


 今日はスミスさんが相棒と二人で、“木の実の乳脂炒め塩味”をつまみに冷やしエールを飲みながら、俺の作業をなんとなく見ている。


「リウト殿は魔工品の作製にまで手を出しておるのだな。ほむ、そういえば、風呂や台所の加熱の魔道具もリウト殿の作であったか」


「リウトはいろいろと器用なんですよ」


「こいつは趣味みたいなもんだから。好きなんで、こういうの」


 《宝物庫》からごてごてと材料を追加で取り出す。


「ちょっと待てリウト殿。今取り出したのは《神気鋼》の類いではないのか?」


「そうですが?こっちは《神鉄》で、こっちは《神銀》」


「なんでそんなものを塊で所持しておるのだ」


「なんでと言われても。師匠に土産で貰ったりとか、《至雄院》時代に魔工学の講師が譲ってくれたりとか」


「ほむむう。商人共が聞いたら涎を垂らすであろう話だな」


 ほいほい手に入って貯蔵分もそれなりにあるんで、俺はあまり気にせず使ってるが、《神気鋼》ってのは本来希少金属で、市場に出るとすぐに買い手がつくものらしい。


「それほどの素材でいったいなにを?」


「そこにいる三人のための装備ですよ」


「俺の装備もほとんどリウトが作ったんですよ?剣だけは、師匠に授けられたものですが」


「ほう。ということは、貴殿らが普段身につけている防具なども魔工品だったりするのか?」


「ええ。例えば俺とアディの革鎧と革靴なんかも」


 《宝物庫》から俺の予備の革鎧を取り出して説明する。


「ほら、裏地のここ。魔導糸で縫い込んで魔方陣を複数付与し、通気性の向上、防水、抗菌、消臭、劣化耐性などの効果を持たせました」


 次は表側の飾り部分を示して説明。


「こんな感じで、装飾を兼ねて陣の維持のための魔力を蓄魔石で賄う加工も施してありまして」


「金属製の鎧に劣らない強度に加えて、軽く、魔方陣の効果のおかげで着け心地は最高だし、手入れも楽で本当に助かってますよ」


 ありがとう、相棒。

 使い手がそうして喜んでくれるのが、作り手の喜びなんだよな。


「どうです?我ながらなかなかの出来かと自負してますが」


 にやりと格好をつけて笑う俺に、スミスさんがはっきりと呆れたような顔になってしまった。なぜだ。


「なんなのだそれは?そんなことのために魔方陣?蓄魔石?防御力を高めるとかではなくか?」


 なにを言いやがるかこの親父。


「待ったあ!スミス隊長に異義を申し立てるでっす!」


 んお?


「で、デリン?急にどうした貴様。異義だと?」


 同じ小隊の仲間だろうか、二人の女性騎士と一緒に現れたデリンさんが、スミスさんにいきなりくってかかった。相手上司だけど大丈夫なのか。


「お話なんとなく聞いてたでっす。隊長、“そんなことのために”てえのは聞き捨てならないでっすよ?革鎧や革靴の手入れが大変なのは隊長だってご存知のはずでっす!」


「ぬ。それはそうだがな」


「私ら斥候や伝令を務める連中は身軽さが信条。必然、革鎧の世話になるでっす。きちんと手入れしてあげないとひっどい臭いがついたり、ひび割れたり、かび生えたりするでっすよ?ずっと着たまま作戦行動してると蒸れて気色悪くて滅入ってくるし、お肌にもよくないんでっす。二日三日脱げないとかざらで、ようやく脱げた時の自分自身と鎧の醸し出すあの吐きそうな臭いときたら…」


 ずだむと卓に両手を叩きつけるや、滔々と捲し立てるデリンさん。

 後ろの二人も経験があるのか、しかめっ面でふんふん頷きまくってる。


 援護の伏兵がこんな形で現れるとはね。

 ま、デリンさんみたいな役目でなくとも、女性騎士のみなさんは全身金属鎧の人は稀で、ほとんどは革鎧の要所に金属片で補強してある型のものを愛用してるみたいだし。

 別々の素材を組み合わせてあると扱いがそれぞれ異なるから、さらに手入れが面倒になるんだよなー。


「リウト殿の作製したというそれは、まさに私らにとって夢のようなすんばらしい鎧なんでっす!その価値が隊長にはどうしてわからないんでっすか!羨ましいでっす!憧れるでっす!」


「ほ、ほむむむう」


 ははは。彼女の勢いにスミスさんもたじたじだな。


「そこまで言ってくれるなら、よかったらデリンさん達の鎧も加工しようか?」


「「「え!?」」」


 おおう。


 言った途端にすんげえ勢いでぐりんとこっちにふり返った。後ろの二人も。


「ほほほ本当でっすかリウト殿!?」


「うん。加工くらいならそんな手間でもないし。あ、でも、俺は構わないけど、官給品なんだからさ、ちゃんと上の人の許可は貰ってくれな?デリンさん達の仕事に差し支えない範囲で、やれることはやるぞ?」


 再びぐりんと、スミスさんの方にふり返る。後ろの二人も。


「いや、さすがに儂の一存では無理だぞ?儂とて支給されとる身だからな」


「すると、うん、よし。ベレッタ隊長に直談判して捲き込んで、殿下にお願いしてもらうでっす!早速行動開始!」


 拳握りしめて叫ぶやいなや、仲間二人を連れて食堂を飛び出しちまった。


「嵐のようにこの場を掻き回していったな、デリンさん」


「だな」


「短い間に儂はなんだかどっと疲れたよ」


 現れるも唐突、去るも唐突。や、面白かったからいいんだけどね。


「リウト殿」


 お。


 みんな鍛練終えたか。


「なんだいマテスさん」


「我らにそのようなお気遣いなど。希少な素材を用いてまで」


 はは。相変わらず堅いなあ、マテスさんは。


「趣味で作ったもんを仲間に使ってほしいってだけのことだから。そこまで気にしなくていいって」


「は」


 エメリカさんは興味津々てな感じで俺の手元を覗いている。


「なんか作ってるなーって見てましたけど、まさか私達の装備だとは思ってませんでした」


「ほら、揃いの要素がある装備をみんなで身につければさ、いかにも“仲間”って感じが出るだろ?」


「あ、いいですね!なんか一体感があって」


「リウト?」


「おう。なんだコルテ」


「なんか凄そうな装備っぽい。私達の持ち金で払えるか不安」


 なにを馬鹿な。


「金なんかいらねえよ。商売でやってんじゃないんだから」


「「「…」」」


 そんな申し訳なさそうな顔すんなって。


「三人とも、それじゃ気がすまないって気持ちはわからなくもないけどさ。リウトはたくさんの想いを込めて作ってくれてるんだ。だから、どうか使ってあげて欲しい」


「「「…」」」


 相棒よ。


 なぜにお前はそんな恥ずかしい台詞がさらっと言えるのか。


「あー、ま、そんなわけなんでな?それぞれの専用に作ったんだ、遠慮なく使ってくれ」


「は。かたじけなく。お志、頂戴致します」


「大切に大切に使わせてもらいますから!」


「ありがと」


「おう。仕上がったら渡すから、楽しみにしててくれ」


 納得してくれたようでなにより。よっしゃ、気合い入れて作らねば。


「ところで」


 ん?


「わざわざ私達のために専用装備を作ってくれる。それはとても嬉しい」


 おう。


「専用ならば、ひょっとすると大きさなんかもぴったり?例えば鎧とか」


 ふ。愚問だよコルテ君。


「微調整が可能なようにはしてあるが、ぴたりと合うはずだ」


「素材は?革とか?」


「そうだな。防具は革系でまとめてある」


「…」


「…」


 なにを考え込んでんだ?


「革鎧を、ぴったり合うように?」


「ああ」


「なるほど」


「…」


「リウト」


「なんだ」


「どうやって私達の体型を知った?」


 あ。


「ど、どういうことなのだコルテ?」


「えっと、あ、あれ?確かにちょっとおかしいですね」


「…」


 なんかまずい空気だな。

 片付けてさっさと逃げる支度をせねば。


「私達の体型にぴったりな防具を作れる。それはつまり、私達の体型を熟知していることと同義」


「「!?」」


「「…」」


 あ、こら相棒?スミスさん?ずるいぞ、先に逃げるなんて。


「おっぱいの大きさとか、お尻の大きさとか、いろいろ知られてる」


「「んなあ!?」」


 両手で胸や尻を庇うようにしながら、ぎ、ぎ、ぎ、てな感じで、マテスさんとエメリカさんがこっちを見る。顔が怖えよ!


「私は裸も見せたし、触れられもした。それでも難しいと思う。マテスとエメリカはそれすらない。ねえリウト、どうやって?」


「…」


 下手の考え休むに似たり、か。うん。ここは正直に答えよう。


「や、その、時空魔法でちょちょいと」


「時空魔法で?そんなの聞いたことない」


「使おうとする奴がそもそも少ないからなー。時空魔法は時と空間に干渉する。時系はまだまだだが、空間系はそこそこ得意でね」


「むむ。なるほど」


「つ、つまりどういうことなのだコルテ」


「リウトは空間を把握する能力に長けていて、それを応用して私達の体型を調べたということ」


「「…」」


 二人の半眼の視線が心に痛い。邪な気持ちはないんだが。


「リウト殿」


「はい」


「そのようなことをなさるのならば、一言断りを入れるのが筋というものでは?」


「は。その通りだと思いますです。軽率でした」


「まあ、やっちゃったことは仕方ないですけど、秘密にしといてくださいね?その、具体的な数字とか」


「もちろんであります。決して口外など致しません」


 そんなことわざわざ聞く奴もいないだろうけど。


「ん~。でもやっぱり、ちょっと不公平な気がしちゃいますねえ」


 はい?


「なんかリウトさんだけ、私達のちょっと恥ずかしい秘密を握ってるってのがな~。例の件で恥ずかしいところもたくさん見られちゃいましたし~」


 いやまあ、ねえ?はっはっは。


「エメリカ、そこは簡単に調整できる。こちらが知られているなら、リウトのも知ればいいだけのこと」


 コルテさんや、君はなにを?


「ふむ」


「ああ!そうですねえ!ふふ、ふふふ」


「リウト全裸観賞会開催。測定のためお触りも可」


 !?


「むう!?即時撤退!?」


「逃げられた~、速すぎます~」


「照れなくてもいいのに」


 冗談じゃねえ!我が息子の秘密をそう簡単に明かしてたまるか!さらばだ!ふはははは!

 自然のなかでのんびりと。


 たまにはいいと思うけどねー。


 次回「続!三人娘改造計画③」


 食わないなら釣るなよ。


2016年6月1日公開予定

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