表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/30

続!三人娘改造計画①

 そんなつもりはなかった。


 なんて言い訳は大概通用しない。


 でもな、ほんとに、あー、ま、いいや。

 街に戻ったダカタさん達に同行したホイットさんの部下からの報告によれば、状況はおおよそ想定内で推移しているとのこと。

 さらに、ホイットさんはダスト達を締め上げて必要な情報は粗方吐き出させたようだ。

 一度だけその様子を見せてもらったが、もう二度と見たくない。

 大の男が上から下からいろいろ垂れ流し泣き喚いて懇願してんのを、ぞくぞくするような凄絶な冷笑を湛えながらさらに追い詰めていく。すんげえ怖かった。で、えげつなかった。


 そんな顔を持つも外見は普通に侍女なホイットさんと、二人で少々相談中。


「街でのあちらさんとのやり取りに潜り込めと?」


「左様にございます」


 ふむ。


「月に一度の決められた日に、街のとある酒場で仲介者との接触があります。それには、ダストの腹心数名が持ち回りで向かっていたと」


「なら、新顔がいきなり出ていっても駄目だろ?」


 ホイットさんが口の端を持ち上げる。


「《宝物庫》の使い手の価値が、それを払拭するでしょう」


「…」


 は。


 なるほど。売り込んでさらに潜り込める可能性もあるか。


「それに」


「ん?」


「盗賊に化けるのは、うちの他の男共では無理ですから。あなたの友人のアディ殿含め、お上品すぎて」


 おいおいおい。


「ひどいな。俺は下品だから化けられるってか」


 ちょっとふて腐れている俺を見て、ホイットさんの顔がふっと緩んだ。


「誉めてるんです。人柄に幅と深みがあると」


「ものは言いようだ」


 今度は小さく声をあげて笑われてしまった。


「…失礼しました。ですが、個人的には、そんなところにも魅力を感じます」


 え。


「接触まではあと半月ほどあります。それまではご自由に。時が来ましたら」


「はいはい。精々期待を裏切らないように務めますよ」


「ふふ。では、お願いいたしますね」


 楚々とした所作で去りゆくホイットさんを、肩をすくめながら苦笑いで見送る。


 不意打ち食らわしといてさらりと消える。女の人は怖いねー。





 さて。


 出番が来るまでの半月の間なにをするのかといえば、鍛練鍛練また鍛練。山という環境、自由に使える時間、ならば鍛練しないともったいない。


「ぬ、ぐ。平地とは、また異なる負荷のかかりかたが」


「ぜひゅー、ぜひゅー」


「…死ねる」


 てなわけで、三人娘を連れて砂チョッキ着用による山中での狩り及び採取を強行中。


「なあリウト。そろそろこれじゃ物足りなくなってきた」


「あ、お前もそう思う?この重さにも慣れちまったもんなあ」


「砂鉄まだあるか?」


「たっぷりと」


「なら、今晩辺り増やしとくか」


「だな」


「な、なんと」


「おかひいぜひゅー。ふたひはぜへたひ、おかひいぜひゅー」


「この化け物共め」


 む。なんと失礼な。

 これも日頃のたゆまぬ努力の成果なんだぞ?


「うん。本日の収穫も十分だし、そろそろ帰るとしよう」


「おう。ひとっ風呂浴びて飯だ飯」


「リウト、今日の肉は《木跳び鳥》だし、久しぶりにアレいこう」


「いいねえ。冷やしエールと一緒に」


 笑いながら晩飯の支度の話で盛り上がる俺と相棒の後ろを、三人娘がのたのたとついてくる。


「く、下りはまた、ぐむう」


「ぜひゅ、ぜひゅ、ぜひゅ」


「おお、御使いが楽園で手招いている」


 頑張れよー、三人とも。

 あと、とりあえずコルテは現世に戻ってこい。


「そうだ。飯の後で、マテスさんとエメリカさんは魔法の基礎訓練しような」


「は。え。わ、私、魔法は、不得手、でして」


「わらひも、つかへないぜひゅー」


 うん。だからやるんだけどね。


「ほら、コルテも魔法職だけどこうして身体も鍛えてるだろ?」


「…」


 や、そこで得意満面な顔で胸を反らすほどじゃないぞコルテ。まだ十日もたってねえんだから。


「堅苦しく考えなくてもいいんじゃないかな。「大成するかは別としても、人は魔法を使えるように出来てるんだ」って、師匠にそう言われて、俺も最初は半信半疑で始めたんだ」


「ほう」


「そうなんですか」


 いいぞ相棒。二人の忌避感がやわらいだ。


「二人は魔法を習ったことは?」


「幼少の頃、魔素を魔力に変換する基礎のところで躓いてそれきりです。元々“我が身ひとつで武を示さん”という家系でしたので、そのまま疎遠に」


「私もです。やっぱり魔力を上手く練れなくて」


 ありがちだな。「そこをしっかり教えてやれる魔法使いが驚くほど少ない」って、師匠も嘆いてたっけ。


「どうするんだリウト。やっぱりまず、《身体強化》からか?」


「そのつもりだ。俺達もそこから入って、後が楽になったからな」


 今は無理なんで諦めさせてるが、二人が本来目指している戦闘方法を実現させたいなら、《身体強化》は絶対に欠かせない魔法だろう。


 極度の集中状態や危機的状況下において身体能力が爆発的に向上することがある、という話は、元の世界でもよく知られている。

 この世界においてはそれが魔法的に解明されていて、生命魔法《身体強化》として既に体系に組み込まれ、使い手も多い。勇者様の例の加護の力も、言ってみりゃこれの亜種みたいなもんだ。


「ふむむむむ。《身体強化》か」


「確かに使えるようになれば前みたいに…」


「覚えて損はない」


 道がゆるやかになってきたところで、歩調もゆるめながら呼吸を整えていく。

 三人娘も少し落ち着いてきたみたいだ。それぞれに考え込みながら歩いている。


「アディの言う通り、堅苦しく考えなくてもいいんだ。だってもう下準備も進めてるんだし」


「下準備?」


「え?あれ?そんなのいつからしてましたっけ?この砂ベストはさすがに違いますよね?」


「むむ。マテス、エメリカ、多分、あの整体法」


 お。コルテさん正解。


「あれが?」


「ほえ?歪みの矯正と美容と健康のためだったんじゃ?」


「それ以外にも効果があるということ。あれは血と気の流れをとても良い状態にしてくれる。迂闊だった。最近やたらと魔法の構築が素早く行えるようになったのは、身体を治してもらったからだけでなく、その効果も加わってたから」


 おお。コルテさん大正解。


 にやりと笑いながらその頭を撫で回す。「あう」とか「やめ」とか「なぜ」とか言ってるが、構わずぐりなでぐりなでぐりなで。


「そういうこと。血脈気脈の流れを正常に保つことは、魔素と魔力の流れを正常に保つことにも繋がる。そいつは魔法を使うための重要な要素で、《身体強化》では特に大事になってくる。《身体強化》は、練った魔力を放出するんでなくて、自身の肉体の隅々にまで巡らせてその能力を活性向上させる魔法だからな」


「ふむむう」


「ほえー」


「でも、魔素の吸収や集束、魔力への変換錬成は一朝一夕ではなし得ない。その感覚を掴むのに私もかなり苦労した」


「そこで、これまたうちの師匠直伝の裏技を使おうと思う」


「裏技?」


「自発的な感覚の発露が難しいなら、外部からの刺激で無理矢理その感覚を教えてしまえ、ということで、外から魔力を流し込んで操作するんだ。俺とアディも師匠にやってもらって、一発で感覚を掴めた」


「むむ。なるほど。興味深い」


 ま、とりあえずやってみようじゃないか。





「あはあああああ!これ!これすごいひいいいいい!こんなの初めてへえええええ!」


 わざとじゃないんだ。どうか信じてほしい。


 只今エメリカさん、絶叫悶絶痙攣中。

 や、ここまで劇的な反応になるとは思わなかった。ほんとに。


「リウト」


「なんだコルテ」


「リウトとアディさんの時も、似たような感じに?」


「まさか。いや、ま、確かにすげえ快感に十代前半の身体が過剰反応してな?二人とも逝っちまったは逝っちまったが、どちらかというと急な刺激に驚いて制御出来ずに、てな感じだったな」


「むむむ。なるほど。実に興味深い」


 当時、腹抱えて笑う師匠を横目に、顔真っ赤にしながら二人で下着を洗ったっけなー。


 ちなみに、先に済ませたマテスさんは隣のベッドでなぜか幸せそうに失神している。

 相棒はマテスさんの艶のありすぎる恥態に居たたまれなくなって早々に逃げやがった。薄情者め、一番居たたまれないのは俺だってーの。


 エメリカさんは、マテスさんがあまりにソレでアレだったため、やめとこうかと言おうとしたところでかぶせ気味に「むしろ是非お願いしますですはい!」と迫られ、こんなことになっている。


「これのやり方教わった時な?師匠は平気な顔してたんだよ。だから成熟した大人なら耐えられると思ってたんだ」


 さては弟子に醜態見せられねえからって我慢してやがったんだな?見事に騙された。


「むしろこの反応を見るに、ある程度経験があり肉体的に開発されていると、余程の精神力がなければ耐え難い快感に襲われるのでは」


「だな。こりゃ迂闊に使うのは考えものだ」


「もうだめえええ」


 はい。エメリカさんも失神。


 二人が本来の目的を達成したのかどうか、かなり疑わしいな。


「さあ、次は私」


「…」


 コルテ、お前は魔法使えるだろが。


「最近ご無沙汰で」


 や、そんなの知らねえし。


「いざ」


 「いざ」じゃねえっての。


「それほど気持ちいいなら試したくなる。それが人情。きっとベレッタ隊長もそう思うはず」


 なんでそこでベレッタさんが出てくんだよ。


「…」


「…」


 あ。


 俺の背後に送られてるコルテの視線を追って振り向くのと、憤怒の表情のベレッタさんが神速で抜き放った剣の先が喉元に突きつけられたのがほぼ同時。


「先程から、憚る気配が微塵も感じられない女性のあられもない嬌声がこの部屋より響いていると、何度も何度もな、ん、ど、も、通報が寄せられていまして」


「ちなみに今のベレッタ隊長の抜剣にはごく自然に《身体強化》が使われてるぞ。素晴らしい練度だ」


「おお」


「リ、ウ、ト、ど、のおおおおお!?」


 やべ。なんかさらに怒らせたっぽい。


「リウト殿の、こ、こ、個人的な付き合いに口を出す権利など、私にはありません。ええ、ええ、ありませんとも。が、まだ日も沈んで間もないというのに!なんと、は、はれ、破廉恥な!破廉恥なあ!」


 怖い怖い怖い!剣先震えてるって!今ちょっとちくっときたぞ!?


 その後。


 倫理とか、風紀とか、武人としてとか、そもそも三人も身近に女性を侍らせてとか、ならば私に対する扱いもとか。

 よくわからないが怒濤の勢いでお説教?をされるはめに。


「リウト、声が問題なら口枷を付けてやればいい」


 頼むから混ぜっ返すなコルテ。


「ベレッタ隊長にもしてあげればきっと解決」


 んなわけねえだろ。もう黙れって。


「リウトにぶい」


 はあ?


「聞いているのですかリウト殿!」


 あ、はい。聞いてます聞いてます。


「だからですね…」


 結局。


 ベレッタさんのお説教に朝方まで付き合わされましたとさ。ぐう。

 理解してくれない人もいるし。


 理解してくれる人もいる。


 次回「続!三人娘改造計画②」


 それがこだわりってやつだ。


※2016年5月31日公開予定


※ぼちぼち書けたので投稿再開します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ