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隠れ家の大改装①

 これはこういうものだから、て決めつけちまう。


 どんなことでも、どんなときでも。


 気が付くと頭固くしちゃってたりすることあるよな。


「このままじゃすまねえぞ。てめえらまとめてなぶり殺しにしてやるからな」


 ダストが俺達を憎々しげに睨みつけながら、なんかうだうだ言ってる。全裸のままで。


 奪ったものの倉庫として使っていたらしい部屋が、そこそこ広く外から施錠できて都合がよかったんで、牢がわりに使うことにした。

 中のものを外に移し、落とし穴から引き上げ縛りつけた盗賊共を押し込んでおく。さすがに七十二人も入るには狭いようではあるが、快適な環境を与えてやる必要は無いしな。


「その様で随分と強気だな。権力者が後ろ楯についてるからか?」


「…」


 おいおい相棒。そんな真っ直ぐ聞いても答えるわきゃないって。


「へひひ。可愛い嬢ちゃん達連れてるじゃねえか?お前らぶっ殺した後で、そいつらここにいる全員でよがり狂わせてやるからよお」


 にたにたと笑うダストの前に、とことことコルテが歩いていく。


「…」


「ああ?」


 おもむろに奴の股間をちら見。


「ぷふ」


 で、鼻で笑うと。その冷たい蔑みの視線、最高ですなコルテさん。


「よがり狂わせるとか。とりあえずあんたじゃ無理」


「んなあ!?」


「リウトやアディさんくらいないと無理」


「「んなあ!?」」


 ちょ、おま、待て待て待て。


「こらコルテ。なんでお前に俺達の極秘内部事情が漏れてんだ」


 相棒なんて顔真っ赤にしてんぞ。


「この間外で仲良く用足ししてた時に、つい?偶然偶然仕方ない」


 つい?じゃねえよ。

 小首傾げて上目遣いで言われても誤魔化されねえっての。


「そ、そうなのか?コルテ」


「業物。通常時で既に」


「へ、へえ~。そうなんですねえ」


 マテスさん?エメリカさん?俺や相棒の股間の辺りに視線をさまよわすのを即刻止めて頂きたい。


「ぐうぬぬ」


 や、ダスト。そんな泣きそうな目で睨まれてもさ。漂う微妙な空気もどうしたらいいんだよこれ。


 ったく。しまらねえなあ。


「あー、ま、とにかくお前らはしばらくここで大人しくしてろ。後からその道の専門家が来るから」


「あ?どういうことだ?」


「いろいろ聞かなきゃならんことがあるからな。そういうのが得意な人が来るってことさ」


「…」


 にっこり笑って扉を閉め、閂を通し鎖で固定する。

 立哨してくれる騎士さんに軽く手を上げて挨拶し、その場を後にした。


「コルテ、お前な」


「女を馬鹿にする奴の心をへし折ってやった。なにか問題でも?」


「そこに俺やアディの内部事情はいらなくないか?」


「…」


 吹けない口笛みっともないですぞコルテさんや。


「はあ、まあいいや。アディ、まだなにか手掛かりがあるかもしれん。空気の入れ換えがてら全部屋調べて回るか」


「あ、ああ。わかった」


「「「…」」」


 ついてきてはみたものの、手持ちぶさたっぽい三人娘。マテスさんがおずおずと口を開く。


「リウト殿、我々もお手伝いをさせていただけないだろうか」


「なにかないですか?」


「暇」


「「…」」


 ふむ。


「アディ、やっぱりお前さ、マテスさんにエメリカさんと一緒にこの山の辺り調べてくれないか?長く居ることになるかもしれないからな。水源の確保や食料の調達が現地でどの程度間に合うか。あと魔物な」


「あ、そうだな。そっちもまだだった。マテスさん、エメリカさん、いかがですか?」


「水場探しに、狩り、採取、魔物の下調べですか」


「ええ。いけそうなら、少し狩りも採取もしてみましょうか。魔物が出たら、俺に任せてもらいますが」


「なら、装備とか道具とか必要になりますね」


 二人とも、否やはないようだ。


「じゃあ行ってくるぞ、リウト」


「おう。頼んだ」


 三人でわいわい話しながら出掛けていくのを見送ってると、袖を引かれる感触。コルテさんですな。


「リウト、私は?」


「俺の手伝いだな。部屋調べるついでに面白い魔法見せてやるよ。ちょっと地味だけど」


「それは楽しみ。あと、調べものの内容は?」


「そうだな。盗賊の持ち物としてちょいとでも違和感があるならなんでも、ってとこだ。漠然としてて悪いが」


「やってみる」


 最初は下っぱの寝床らしき部屋。

 中の私物や調度品は粗悪だったりかなり汚れてたりしたんで、がんがん別枠の《宝物庫》に放り込んでいく。後でどっかに埋めて捨てとこう。


「…」


 さくさく作業を進める俺を羨ましそうに見てるコルテ。


「《宝物庫》便利」


「コルテも時空魔法覚えてみろよ。楽しいぞ?」


「私が?出来る?」


「前にも話したかな?お前は精霊に好かれてるっぽい。使える魔法の幅は広いと思うぞ?」


「むむ。挑む価値あり」


 粗方部屋を調べたが収穫は無し。物を捨てまくってがらんとした状態に。


「天井や壁、土や岩がむき出しのままで、このままだとたまにこぼれ落ちてきちゃうだろ?蟻とかも入ってきちまうし。だからこうしてやる」


 本来戦場で咄嗟に障害物を造成するための土魔法《石壁》を応用。薄く膜を張るように滑らかなで平らな石壁を、部屋の天井に壁に床にと造成していく。


「ふおお。なんか綺麗な部屋になった」


 壁の繋ぎとか空気穴が塞がってないかとかをよく確認してから、時空魔法の《固定化》をかけてやる。


「大工さんの仕事にゃ勝てないが、なかなかのもんだろ?」


「確かに地味だけど、凄い」


「こいつは、前に洞窟で野宿した時にでこぼこしてて寝心地悪くてさ、どうにかならねえのかって編み出したんだ」


「…」


「教わる通りに使うだけじゃなくて、俺やアディはこうして魔法で遊んでみたりするのさ。思わぬ成果が得られたりすんだぞ?」


「なるほど」


「他にもやっときたいことがたくさんあるが、今は調べもののついでだからな。また後にしよう」


「これがついでとか、リウトおかしい」


 そんな感じで幾つか部屋を調べては改装、てのを繰り返してみたのだが。


「特に変わったもんは見つからないな。ちょっと疲れたし、休もう」


「既にリウトは尋常でないほど魔法を行使してる。疲れて当然。むしろなんで倒れない?」


「なんでとか言われてもなあ?日頃の鍛練の成果?」


「むむ。まがりなりにも魔法専門職として負けてられない。本気で頑張る」


「おう。頑張れ」


 ふんすと鼻息荒いコルテの頭を撫で回す。「あう」とか「やめ」とか「ぜっ」とか言ってるが、構わずぐりなでぐりなでぐりなで。


 結局。


 あの羊皮紙の束のような使えそうなものは見当たらず、ゴミを捨てて隠れ家の改装をしただけになって終わってしまった。


「帰ったぞリウト。中が見違えたな、例の《石壁》と《固定化》か?」


「お帰り。その通りだ。そっちはどうだった?」


「水源は少し離れたところに豊富で綺麗な湧水。そこからここのすぐ近くまで細い小川になって流れてる。人の手が入った形跡があるから、鉱山時代からのものだろう。盗賊共も使ってたらしい」


 ありがたい。いろいろ使えそうだ。


「獣の類いも食用になる種がそこらにごろごろ」


 お。


 マテスさんが嬉しそうに両手で掲げてんの《森大蜥蜴》じゃないか。肉が美味いんだよコイツは。


「山菜と茸と木の実もいけそうだ。果物は駄目だった」


 エメリカさんの持つ籠の中にもっさりと入ってる。いやいやいや、上出来だぞ相棒。


「油断は出来んが、魔物も今のところ厄介そうなのは見つかってない」


 魔力探査にもかからんしな。


「そこそこいけそうじゃないか?リウト」


「だな。早い内に住み心地よくしちまおう」


「もうかなりとんでもない状態。なのに、まだなにかやる?」


 当然ではないかコルテ君。


「部屋ももっと欲しいし、台所に便所や風呂もいるだろ?」


「ああ。風呂はいいな、久しく入ってない」


「だ、台所ですと?」


「風呂って、貴族の人達はそんなのに入るって聞きますけど」


「それが当たり前だと言わんばかり。この二人はこんなところでも規格外」


 なにを言うか。

 大望を果たすためにも、日々の英気を養う快適な生活は必須じゃないか。


「その前に、せっかくとってきてもらったんだし、腹ごしらえといこう。《森大蜥蜴》の料理は任せろ」


「山菜とかのあく抜きしとく」


「そいつは明日だな」


 てきぱき動こうとし始める俺と相棒を、珍妙なものでも見るかのような様子の三人娘。なんかおかしいか?


「その、なんと申しますか。お二人とも動きに淀みが無く」


「お料理までしちゃうんですね。しかも慣れてそう」


「ほんと、いろいろ規格外」


 え。なんで?普通だろ。

 癒しとか。


 寛ぎとか。


 いろいろな効果がそこで得られる。


 次回「隠れ家の大改装②」


 お色気とかも。


※2016年5月22日公開予定

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