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盗賊団対自由騎士①

 ふとしたことで心の傷に触れちまうってこともあるもんだ。


 厄介だよな。


 いろいろと。

「へばるの早かったなあ、この二人」


「リウト、俺達も始めたばかりの頃はひどかっただろ」


「そうだった。師匠にどやされながらひいひい言ってたっけ」


「そうそう、鼻水とか垂らしてさ」


「うわあやめろ。思い出したくねえ」


「ははははは」


 昼時になり、街道の途中に設けられた広場で王女御一行はひと休み。

 俺と相棒に三人娘は、端っこの木陰を確保して落ち着いたところだ。


「ふうう。この心地よい疲労こそ鍛練の証」


「ふぎゅむうー」


「…死ぬ」


 俺と相棒とマテスさんは特に問題ないが、エメリカさんとコルテの二人は息も絶え絶え。敷いてやった布の上にふらふらぱたりと倒れてから動かなくなっちまった。


「マテスさん、これ」


 革の水筒を放り渡す。


「かたじけない。水ですか?」


「うんにゃ。水に塩と酸味のある果汁と蜂蜜を少しずつ混ぜたもんだ。汗をたくさんかいた後で水だけを飲むのはあんまりよくないからな」


「なんと?それは初耳です」


 元の世界での知識の流用だけどなー。

 これを初めて作った時はやたらと師匠にほめられたっけ。けどすぐその後で、「こいつが効率的に回復を助けてくれるんだから構わんだろ」とか言いだして、走り込みの鍛練とか増量されちまったんだがな。


「これは美味い。疲れた身体に染み渡るようです」


 お。マテスさんはさすがに心得てるな。口に含むようにしながらくぴりくぴりと小分けでゆっくり飲んでる。


「気に入ってくれたなら嬉しい。よかったら水筒ごとどうぞ」


「よろしいのですか?」


「ああ。時空魔法の《宝物庫》にたっぷり予備があるから。なくなった時も遠慮なく言ってくれていいし」


「は。では、ありがたく頂戴いたします」


「鍛練の時も、渇きを覚えたら我慢せずに少しだけ飲むように意識するといい。身体に負荷をかけて鍛えることと、身体にただ負担を強いることとを混同しないように気を付けないとな。俺も夢中になりすぎてよくやらかすんだ」


「ふむむ。身につまされる話です。私は己を苛めぬくことこそが鍛練であると教わり、また実践していました。それは間違いだったのですね」


「いやいや。ぎりぎりまで自分を追い込む鍛練にも大きな意味があるさ。ただ、普段からそればかりなのはまずいだろってだけで」


「ふむむむ。なるほど」


 そんな感じで俺とマテスさんが鍛練について語る真横。


「あああん、だめえアディさあん。もっとお、もっと欲しいのお」


「焦らさないで。身体が求めてるの。狂おしいほどに」


「だだだ駄目だって!少しずつ!少しずつ!そうじゃないと身体壊しちゃうんだから!」


「壊れてもいいのお。欲しいのお」


「むしろ壊して」


 なにやってんだこいつらは。


 水筒を高く掲げて触れさせないようにしてる相棒と、それにぬっとりべったり絡みつくエメリカさんとコルテの図。


「り、リウト!助けろ!」


 や、お前もその程度で狼狽えんなや相棒。


 しかし、からかってわざとやってるコルテはともかく、素でその台詞が出ちゃうエメリカさんがかなり面白いけどちょっといろいろ心配ではある。


「…」


 あー。


 少し離れたとこから射殺さんばかりのすんげえ怖い視線飛ばしてるやんごとなき御方もいなさることだし、この辺で止めとかないとまずいか。あーもーめんどくせえ。


「ねえんもっとちょ…!?痛たたたたたたたた!?」


「ふぐお!?」


 二人の顔をがっちり掴んで相棒から引き剥がし、そのままめきめき握り込みながら持ち上げてぶら下げの刑。


「ご、ごめ、リウトさん!リウトさん!顔!顔もげちゃいますうううう!」


「ちょっと調子乗った。許して」


「わかればよろしい」


 ぽてりと落としてやる。


「ううううう」


「リウト容赦無い」


「お前らが阿呆やってっからだ。今重たいもんは食えねえだろうから、これでも舐めながら大人しく休んでやがれ」


「んみゅ?」


「むも?」


 蜂蜜で作った飴をむりやり口に突っ込んでやった。


「んんー!おいひいれふー」


「甘うま」


 やれやれ。


 さ、俺も飯食ってひと休みせねば。


「スミス隊長~!」


 んん?


 なんだ?伝令らしき女性騎士さんがスミスさんの元まで駆けていく。斥候の小隊の人か?

 どこぞの商人ぽい風体の若い男性が馬に同乗してるな。


「報告いたします!この先にて盗賊に襲われた商隊を発見、保護いたしました!こちらがその商隊の責任者の方でっす」


「どうか!どうかお助け下さい!妻が!私の妻があ!」


 む?


 なんとなしに話を聞いてると、独立したばかりの若い商人さんが仕立てた初めての商隊が、不幸にも盗賊に襲われちまったってことらしい。死傷者は無し。荷物は洗いざらい奪われた。


 で。


「つつ妻が!妻が奴らに拐われてしまったんです!け、結婚したばかりなのに!う、ぐ、うわああああああああ!」


 てことで、商人さん大号泣。


「…」


 相棒?


「…」


 どこいくんだよ。っておいまさか。


「安心して下さい。あなたの最愛の人は、必ずや私が連れ帰ってみせます」


 あちゃあ。言っちまった。


「おおお。あ、ありがとうございます!ありがとうございます!お願いいたします!お願いいたします!」


 や、商人さんに力強く頷いてんのはいいけどさ。なに勝手に話進めてんだお前。


「スミス隊長、正騎士の皆さんの手を患わせるまでもありません。この件は私とリウトにお任せ下さい」


 え。既に俺、頭数に入れられちゃってんの?


「ねへひウト」


「なんだいコルテさんや」


「アひィはん、目はひょっひょおはひい」


「奇遇だな、俺もそう思う」


「ひょっひょひへ」


「だろうなあ」


 引きずってる影響だろうねえ。あとコルテ、とりあえず飴舐めながら喋るのはよせ。行儀わるいぞ。


「…はあ」


 仕方ねえ。荷物支度して、愛馬達を連れてくか。


「しかし聞いた話では最低でも十数人はいるのだろう?貴殿らならば大事ないとは思うが…」


「議論してる暇はありません。今も一人の女性が危難の真っ只中にあり、救いを求めているのです」


「ほむう」


 確かに時間は惜しいな。


「スミス隊長、心配なら誰か一人、もしもの時に応援を呼ぶための人員を一名付けてくれりゃそれでいいですよ。大丈夫、無茶はしませんて。あ、こちらの伝令さんなら適任じゃないかな?場所も知ってるわけだし」


 相棒にヤツの愛馬を引き継ぎ、俺からも提案しながらさっさと馬に跨がる。


「少しだけ待ってくれ」


 ま、俺達が止めても行っちまうのがわかるんだろうね。スミスさんはため息とともにちらりと背後を振り返り、その視線の先にはソアル王女。


「…」


 心配そうな顔ではあったが、王女は小さく頷いてくれた。


「わかった。ここは貴殿らに任せよう。デリン!二人を案内せよ!」


「は!」


「デリンさん?申し訳ないがお願いするよ」


「お任せ下さいでっす!」


「行こう!リウト!」


「はいはい」


 そんなこんなで早速盗賊共を追走開始。


「アディ!お前なあ!」


「なんだよ!?迷惑だったか!?」


「そうじゃねえよ!盗賊相手にやり過ぎんなよ!」


「なにを言う!人が汗水流して稼いだ財貨を掠め取り!しかも愛し合う二人を引き裂いた!愛し合う二人を引き裂いたんだぞ!」


 あ、うん。二回も言わなくていいから。てかやっぱりそこが鍵になってんだな。


「言語道断だ!そんな非道な輩は断じて許さん!」


 駄目だこりゃ。なんか視点も微妙に定まってねえし。


「わかったわかった!だが殺すな!そんな非道な連中は簡単に楽にさせないで、生かして労苦を味わわせて償わせるんだ!」


「おお!それもそうだな!たっぷり後悔させてやらねば!」


 よし。これで無駄な惨殺現場を見ないで済む。


「アディ殿!リウト殿!あそこでっす!」


 馬の足ならさほど遠くないところで、襲われたという二台の荷馬車が見えた。

 商人さんとこの人達が途方に暮れたようにのろのろ散らかされた馬車を片付けてて、デリンさんの小隊の面々が警戒しつつ賊の痕跡を調べているようだ。


 んじゃ、さくさく始末つけちまいますかね。


 未だ顔も知らぬ盗賊さん達よ、ちいとばかり相棒の八つ当たりに付き合ってもらうぞ?。ま、だからって別に申し訳ないとか微塵も思わんが。

 大勢の敵に少数で果敢に挑む。


 物語なんかじゃ王道の展開だけどさ。


 実際には遠慮したいとこだ。


 次回「盗賊団対自由騎士②」


 だってすんげえ疲れるし。


※2016年5月19日公開予定

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