発動!三人娘改造計画④
欲望の制御は大変だ。
本人は隠してるつもりでも、相手にはばればれらしいぞ?
男のそれは特に。
いやあ、緊張感抜群。
目の前のベッドには美、幼?少?痛っ蹴るなコルテ。えー、あー、美しい女性?が、うつ伏せで寝てる。しかも裸で。
さらに。
首筋にはふた振りの短剣。大事なところをずっぱりいけちまう絶妙の位置に刃。この冷たい感触がたまらない。
「く、れ、ぐ、れ、も、不埒な真似はなさらぬように」
「もしもそんなことがあったりしたら、きっとうっかり手がすべっちゃいますよおおおお?」
「…」
さっきまで一緒に話聞いてたよな?
殺されちゃうのか、俺。不埒な真似しないと治せる可能性減っちゃうんですが。
「マテス、エメリカ、邪魔するなら出てって」
「ぬう」
「だって」
ちなみに相棒は既に部屋から出ている。
俺が封印を解除するんで、念のためと部屋の外での見張り役をかってでてくれた。
「出てって」
ベッドから起き上がったコルテが二人を扉まで追いやっている。お前すっ裸だって忘れてないか?見えてる見えてる。いろいろ見えちゃってるって。
「り、リウト殿!どうか、どうかよろしくお願いいたします!」
「頑張って治してあげ…」
ぱたりと。
最後には二人を部屋から蹴り出して、コルテが扉を閉めてしまった。
「これで邪魔者は消えた。さあ」
「さあ」じゃねえよ。だからお前裸なんだってのに。なんで両手広げてんだ?少しは隠せ。
さくっと封印を解除し、再びベッドでうつ伏せになったコルテに治癒系の魔法的探査を施してく。
「…」
外傷はどれも深いが、傷をつけるのが目的で命を奪うつもりはないてな感じのいかれた思考が見てとれる。くそが。
さらに、身勝手な捌け口にされそうな辺りはもろもろ酷い。中まで及んでる。なんでここまでやりやがるんだ。
「リウト?」
「なんだ?」
「駄目。考えすぎ。怖い顔してる」
「仕方ねえだろ」
過ぎたことだと、コルテは昔のことをあまり語らないらしいが、こんなひでえの、感情を全部抑え込むの無理だって。
よし。状態は把握した。
元の世界で丹田と呼ばれる、気や魔力を循環する基幹となる部分が、子宮を壊される過程で影響を受け歪んでる。加えて、何度も傷つけられ自己治癒を繰り返す過程で、各所の血管に寄り添うように通っている気脈も歪に変形しちまってる。これによって正常に魔力が流れるのが妨げられ、魔法の発動に支障をきたしてるわけだ。
「いけそう?」
「なんとかな。長くなるぞ?」
「頑張る」
「おう。じゃ、始めるぞ?悪いがあお向けになってくれ」
「優しくしてね」
「ああ」
「…」
「ん?どうした?」
「素で返されるとは思わなかった。照れる」
軽く吹き出しちまった。阿呆やってないで取りかかるとしよう。
これからなにをするのかというと、要は壊されちまってる部分だけを時空魔法で健常な状態まで戻すってのを繰り返すだけだ。
言葉にすると簡単だがこれが実に面倒で、同じ人間の組織なのに部分的にでもそういった措置を施すと、周辺の組織と時間経過のずれが元で傷が生まれたり拒絶反応も起きちまう。
これを緩和するために生命魔法も併用しなきゃならんし、時空魔法も速度と緻密で正確な調整が必須。故に莫大な魔素と魔力を消費することに加え、施法を維持するのに使い手にも受け手にも強靭な体力と精神力が求められる。
理論自体は昔から提唱されていたが、難易度が高すぎて机上の空論になっちまってたものを、《神託の渡り人》の常人を越えた資質と《女神の加護の力》で強引に成し遂げてしまえ、というわけだ。
「痛みはあるか?」
「たまにむずむずする感じがあるだけ」
「そか」
今のところ上手くいってる。内部の治癒はもうじき終わるだろう。
「なんかぽかぽかしてきた」
「お。そりゃ、血と気と魔素や魔力の流れが正常な状態に近付いてきてるってことだ」
よし。次は外側だな。
「!?」
「…」
「リウト、傷が」
「ああ」
「傷が、消えて」
「全部消してやる」
「全部」
「そ。全部」
「あ、ああ」
ひとつひとつ、丁寧に傷を治してく。次第に、ひきつった無数の傷で被われてたコルテの肌が、艶のある柔らかで無垢なものに変わ、じゃなくて、戻ってく。
「リウト、リウトお」
泣くな。まだ終わってねえ。
「ああ、私、の」
ふう。
「…」
うん。我ながら素晴らしい施法だと自画自賛してもいいだろ、これなら。
「終わったぞ、コルテ」
「…」
傷の消えた自分の身体を、目の届く限りじっくりしっかり確認してくコルテ。
こらこらこら。そんな大股開きでお前、なんもかんも丸見えじゃねえか。俺まだ目の前にいるんだぞ?恥じらいなさすぎじゃねえか?
「リウトっ」
ぐおあ!?
「コルテ?」
すげえ勢いで抱きつかれてしまった。
「あ、ありがと、ありがとお。う、うああああああああああ!」
そして号泣。
「…」
ふむ。
我儘な自己満足のためにやらかしちまったが、こんだけ喜んでくれるなら、ま、ありだよな?
「しばらくは様子見なきゃならん。おかしな感じがあったりしたらすぐに言え」
ぐずりながら何度も頷くコルテ。
声をあげて泣き続けるその頭を、今日は優しくぽよぽよと撫でてやる。
「あー、特に、な。その、そこも多分治ったとは思うんだが、なにせ男には無い部分だからな?よくわからんのだ」
「…」
「なんで、その辺りの異常には気を付けてくれ」
「…」
あ、あれ?
急に泣き止んだと思ったら、なにやらすんげえ不穏な気配がする。
「それを確かめる方法はひとつしかない」
はあ。
「子作りで」
はあ!?
「どう?」
「どう?」じゃねえよ。
「幸い準備も万端」
裸だってだけだろが。両手広げんな、隠せって。
シーツでコルテをぐるぐるくるむ。
「どうやら異常はないみたいだな。そんだけいつも通りの乗りならさ」
「どうかな」
はにかむように微笑む。
「…」
「なに?」
「なんでもねえよ」
綺麗ないい笑顔だと思っただけだ。口には出さないけどな。
「ところでリウト」
「ん?」
「私がこんなにちっこいのは、あの傷とかが原因?」
あー、その可能性は否定出来んな。
「全てではないにしても、考えられる話だ。血の巡りにも影響してたし」
「むむ。なら、治った今、その辺りも改善された?」
なんだ、やけに真剣だな。
「血の巡りが戻っても歳が歳だしなあ、成長に関しては期待しない方がいいだろ」
「ぐはあ」
うお。なんか打ち拉がれてる。
「なんだよ、もうちょい背が欲しかったのか?」
「違う。背は別にどうでもいい」
はあ。
「おっぱい」
はあ!?
「おっぱいぺったぺた。もっと大きくしたい」
「…」
んなことより、魔法の心配してくれねえかなー。とか思ってたらすんげえ睨まれた。なんでだ。
「とても重要な問題」
そう言われましても。
「しかし元の目的も大切。ちょっと試す」
「今ここでやってみたらどうだ?」
「大丈夫かな?」
「もしもの時は俺がどうにかする。心配すんな」
「うん。やってみる」
いそいそと杖を構え、少し緊張しながら魔素を取り込み魔力を練るコルテ。ここまで異常は見られない。
「日の糧を得るために、ささやかな火を」
練られた適量の魔力がすんなりと発動媒体の杖を経由して放出されると、詠唱に反応して集まってくれていた精霊達が魔力を現象に変換してくれる。
「…あ」
「よし」
そして灯された、小さな炎。
無言でこちらを見るコルテに頷いてやる。
「…」
《着火》の魔法は初歩中の初歩にして基礎中の基礎。だが、その炎を見詰めるコルテの目はどこか誇らしげで。喜びに満ちていて。
「…」
「なに?」
「なんでもねえよ」
さっきの笑顔もよかったけど、今のそれはもっといい。そう思っただけだ。口には出さないけど、な。
永遠のテーマなのかなあ。
大きい方がとか、小さい方がとか、はたまたそれぞれに長所が、とか。
次回「発動!三人娘改造計画⑤」
え?俺?俺は…。
※2016年5月16日公開予定




