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発動!三人娘改造計画③

 偽善だと詰られるかな?


 ま、別に構わない。


 ちょっと思うところはあるけどな、やっぱり。

「で、だな。お前の身体には魔力の循環や放出を妨げるなんらかの欠陥があるっぽいんだ。心当たりないか?」


 俺と相棒は今、三人娘が取ってる部屋にお邪魔してる。

 完全に回復してないコルテをベッドに寝かせ、後はそれぞれ空いてるベッドやら椅子やらに適当に腰掛け、さっきの推測話を三人にもしていたところだ。


「…」


「…」


「ない、こともない」


 ふむ。


 少し俯いて考えた後、コルテはベッドから起き上がった。


「見せた方が早いかも」


「コルテ!?」


「い、いいんですかコルテ!?」


 なんだ?マテスさんとエメリカさんがいきなり狼狽えだしたぞ?


「構わない。エメリカ、扉に錠を。リウト、アディさん、いいと言うまで少しだけ私に背を向けてて」


「しかし!」


「マテス、私は構わないと言った」


「う、く」


 あー、なんか、空気が一気に重たくなっちまったな。


 俺と相棒は言われた通りコルテに背を向けた。すぐに衣擦れの音が聞こえてくる。


「お、おいリウト?」


「おたおたすんな。落ち着けよアディ」


 なに考えてんのか知らんが、この流れで色っぽい話になんぞなるわけねえだろが。

 じゃ、どんな話になるかってーと、ま、ある程度想像がついちまうがな。


「お待たせ」


 コルテの声に振り返る。

 苦虫をまとめて噛み潰したようなマテスさんと、泣きそうになってるエメリカさんを経由して、俺達の目に飛び込んできたもの。


「…っ!?な、なんなんだ、これ、は」


 言ってみりゃ、人の悪意と欲望の現出。

 思ってたよりも酷かったがな。


 身体の前を脱いだ服で隠したコルテが、俺達に背を向けて立っている。

 背中に、尻に、足に、そこらじゅう刻まれた無数の深い傷痕。おそらく、前の方も同じだろう。


「どうして、こんな。お、女の子なんだぞ?惨すぎるだろう!」


「アディ」


「誰が!一体誰が!」


「アディ!」


 ったく。


 相棒の胸ぐらひっ掴んで引き寄せ、コルテに背を向けさせる。もちろん俺も。


「ありがとう、コルテ。服着てくれ」


 淡々とした俺の態度が気に入らないらしい相棒が、俺にくってかかってきた。


「リウト、お前なんとも思わないのか!?」


 あのなあ。


「最初はお前と一緒だったよ」


「!?さ、最初?」


「嫌な話だが、慣れちまったんだ。俺が世話になってた教会で暮らしてた孤児の中にも、街の貧民窟の人の中にも、いた」


 少なくない数でな。


「そんな…」


 絶句し、項垂れる相棒。


「こっち向いて大丈夫」

 

「…」


 元のローブ姿に戻り、ベッドの端にちょこんと腰掛けたその姿からはあんなもの想像も出来ない。


 ただ。


 コルテと出会って以来俺がずっと感じていた微妙な違和感。


 その元となるものの正体が、これだってわけだ。


「…」


 いきなりぴょいんとベッドから降りたコルテが、とことこ相棒に近寄り背伸びしながら左右のほっぺたをむにっと摘まむ。


「ひゃ、ひゃひ?」


「リウトが言う通り、こんなのは国のどこにでも転がっている話。だから、そんな顔しないで」


 や、そんな簡単に割りきれるもんでもないぞ?


「リウトも」


 んにゅ。俺もやられてしまった。なんでだ。


「憤りを隠せてない」


 ぬぐ。


「リウト」


「ん?」


「昔、いろいろあった。わりと無茶苦茶されてた。そのせい?」


 わりと、ね。


「そうだろうな。内側の異常ってのはわかりにくくて厄介なんだ。変換された魔力を通すための気脈の機能を、肉体的に壊されちまったんだと思う」


「なるほど」


「リウト殿、アディ殿」


 ずっと押し黙っていたマテスさんが、俺と相棒に懇願も顕な顔と声音で問い掛けてくる。


「生命魔法《治癒》の限界については存じていますが、《至雄院》では新たな効果の魔法を求めて日々研究がなされていると聞き及んでいます。なにか、なにかないのですか?」


「「…」」


 そう。現状の《治癒》には限界があるんだよな。

 変な言い方だが、傷や病の鮮度が高い内でないと効果を発揮してくれない。

 少し時空魔法にも絡んでくる話で、元の状態との時間差が短ければ短いほど、残留する様々な要素の濃度が高くなり、魔法の効果に期待出来る。

 コルテの傷のように時間が経ちすぎて一度固着してしまうと、それらは既に霧散しちまってて、後からどんだけ《治癒》だけをかけてもなんの効果も発揮しなくなっちまうんだ。


「専門の講師陣とそのために居残っている修了した院生も交え、限界を越えようと研究を続けています。ですが、成果が実ったという話は、未だ」


「そう、ですか」


「「「…」」」


 おや。


 俺とコルテ以外の三人が口を閉ざして俯いて、部屋の中にしょんぼりどんより沈鬱な空気を撒き散らしてる。


「で、リウト」


「おう」


「どう?」


「お前の身体の状態にもよるなあ?あんまり酷いとちとまずい。なんで、詳しく調べるからな?」


「全部見られちゃう?」


「ま、ある意味、全部見ちゃうねえ」


「隅々まで?」


「隅々まで」


「いやん」


 くねくねすんな気持ち悪い。


「「「…」」」


 ん?


 相棒、マテスさん、エメリカさん。三人はなんでそんな間抜け顔で俺とコルテを見てんの?


「リウト?」


「なんだ?」


「どういうことだ?」


「どういうことって?」


「その、治せる、のか?」


「さあな。わからん、というのが正直なところだ」


「ですが、《治癒》では…」


 マテスさんの声には少しの期待がこめられてるような感じ。


「ああ。《治癒》“だけ”だとまず無理」


「えと、えと、ええ?あの?」


 あー。落ち着いて、エメリカさん。


「まさしく神業級の時空魔法との併用が必要になるからな。反則技を使わにゃならんのが癪に障るが、可能性はあるぞ」


「あ、ああ!加護の力!」


 うん。そういうこと。


 が。


「コルテ」


「なに?」


「あー、ひとつ、その、問題があってだな」


 うー、あー、言わなきゃならんが、言いたくねええええ。


「こいつは、そりゃもう微妙かつ繊細な作業でな?その」


「…」


「直に触れてた方が、効果も成功率も高い」


「…っ」


 コルテの顔に少し血が上ってきたな。俺もだけど。なぜか他の三人も。


「どれだけ違う?」


「天地の差」


「そこまで?」


「そこまで」


 実証済みだからなー。


「隅々まで?」


「隅々まで」


「いやんいやん」


 だからくねくねすんな気持ち悪い。


「責任取ってくれる?」


「や、それは無理」


「ひどいひと。わたしのからだをもてあそぶだけもてあそんでにげるつもりなのね」


 棒読みで阿呆なことぬかしてんじゃねーよ。

 あとマテスさーん、エメリカさーん、たいへん怖いんでその顔やめてくれますかね。顔真っ赤にしてんのは羞恥心からなのか怒りからなのかわからんが。相棒も剣の柄から手を放せ。


 真面目な話、成功させたいならそうした方がいいんだって。俺も恥ずかしいんだからな?


「どうする?お前次第だ」


「考えるまでもない」


 お。


「やる。やらいでか」


「…」


「上手くいけば、魔法が普通に使えるようになる。それなら、私が否と答える理由など、ない」


 俺をじっと見詰めるコルテの目に宿った決意の光は、微塵も揺るがない。なら、俺も腹を括らなきゃな。

 失敗なんざ許されない。するつもりもないが。


「そか。なら、やってみるか」


「よろ」


 ぺこりと下げた、コルテの頭を撫で回す。「あう」とか「やめ」とか「おね」とか言ってるが、構わずぐりなでぐりなでぐりなで。


 んじゃ、早速始めよう。

 毎日毎日拝んでりゃ、そりゃ飽きもするだろうけどさ。


 ごく稀に、だとそうもいかないだろ?


 次回「発動!三人娘改造計画④」


 静まれ、俺の○○。


※2016年5月15日公開予定

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