発動!三人娘改造計画②
詰まってるからと、詰まりの原因を取り除くんでなくて、さらに詰め込んで結果悪化させる人ってたまにいない?
やめといた方がいいぞ、それ。
「いっそのこと盾術のみで攻防を成立させちまうってなあどうよ?」
「うん。いいかもな、それ」
「ほむう。上手く応用すれば、いけるやもしれん」
マテスさんから鎧と盾、エメリカさんから槍を取り上げた後。
俺と相棒、加えて身体を動かしに来たというスミスさんにも知恵を借りながら、二人の戦闘法の方向性について本人達も交えて相談中。
まずは、マテスさん。
残念ながら効果は発揮されなかったものの、あの鎧と盾をどうにか使いこなそうと自己鍛練に余念がなかった彼女は、現役の女性騎士と比べてもなんら劣ることのない高い身体能力を有してた。全くもってもったいない話だ。
さらに、急造した練習用の大盾で家伝の盾術の型を幾つか披露してもらったんだが、これがまた面白い。実戦を積み重ね代々改良されていったという技の数々には、俺達も思わず唸ってしまうほどだった。これも、全くもってもったいない話だ。
ならば。
「な、なるほど。この小盾や籠手を用いるのに技を流用し、調整していくのですね?」
「そ。実戦で通用するまでには結構難儀するだろうけどさ、なかなか楽しいと思うよ?」
「ふむむむむ」
はは。マテスさんの目に輝きが戻ったな。
こいつはまだ本人に伝えるつもりはないが、預かった鎧と盾が実に興味深い状態にあるのが時空魔法の宝物庫の分析でわかっている。どうにか活用出来ないもんかと思案中だ。後で相棒にも相談してみよう。
マテスさんの方向性がある程度まとまってきたんで、今度はエメリカさん。
「エメリカさん」
「は、はい!」
「あなたの場合、少し鍛え方が偏っていて、とても大切な身体の軸がぶれてしまっています。申し訳ないですが、しばらく槍はお預けで、まずは基礎訓練でその歪みを直すところから始めた方がいいと思いますよ?」
相棒が丁寧に優しく、小枝で土に図を示したりしながらエメリカさんに説明していく。
自分自身もそれでめちゃくちゃ苦労してて、少しずつ少しずつ改善していった経験があるから、相棒なら適任だろう。実際、相棒の話を横で聞いてるスミスさんも、「これはこっちでもそのまま使えるな」とか頷きながらしきりに感心してるし。
「なんてこったあ!私、だめだめじゃないですか!が、がんばらなきゃ!うん!」
よし。この二人はしばらく相棒やスミスさんに任せよう。
で。
「すまんな、コルテ。随分待たせちまった」
手持ち無沙汰でぽけーっとしてるコルテは、まだなんにも手をつけてない状態だもんな。
「別に構わない。見てるだけでもなんか楽しいし。あの二人、すごく喜んでるから」
「へえ?でも、いろいろ取り上げちまったし、これからすんげえ大変だぞ?」
こくんと頷くコルテ。
「だけど、前へ進めた。きっとそれがとても嬉しいはず。そんな二人を見てて、私も嬉しい」
「…」
コイツは。
なんてーか普段はとぼけてっけど、あー、上手く言えねーが、なんか、な。
「それで?」
っと。そうだ、今はやることがある。
「私はなにをして見せればいい?」
ふむ。
コルテに関しちゃ不吉な文言聞いてっからなあ。
「初歩的な魔法を。そうだな、《着火》で」
「…」
え。なんでそこで「正気か貴様!」みたいな顔すんだよ?
嘘だろ?それすら?
「命知らずに、乾杯」
待て待て待て、なんだそれは。猛烈に不安になってきたじゃねーか。
コルテが肩を落として諦感を漂わせ、誰もいない、なにもない方へ杖を向けて構えた。しかもなんか杖の端の端を持ってて、ぷるぷる腕が震えてる。
「…」
「…」
んん?
どういうことだこりゃ?
周囲の魔素はきちんと収束してるし、精霊達もコルテの呼び掛けに応えてる。だが、魔法が発動しない。
てかこれおかしいだろ。《着火》にこんなに大量の魔素いらねえし、なんか精霊も集まり過ぎてないか?
「…」
「…」
《着火》って初歩の初歩にして基礎の基礎のひとつだぞ?いくらなんでも異、な!?これは!?やべえ!くそ!こいつはやべえぞ!
「リウト」
「コルテ!?やめ…」
「覚悟はいい?」
「え、ちょ、待てコルテ!うおわああ!?」
轟!と。
コルテの杖の先から見上げるほどの長大な火柱が突如として立ち上って爆散。俺はコルテへの障壁の構築が精一杯で、ものの見事に吹き飛ばされちまった。熱い!痛い!熱痛いいい!
「ありえねえええええ!」
当然周囲は大騒ぎ。あのでかさの火柱だからな、下手すりゃ村からも見えちまってるかもしれん。変な騒ぎになってないといいが。
「ふ。やってやったぜ」
「…」
そしてなぜかやりきった感のある妙に男前な顔のコルテが、ぷつっと糸が切れたかのようにぱたりと倒れやがった。受け身とか一切なしで。
おそらく魔素欠乏による失神だろうが、これもちと異常だな。
「リウトお!無事か!?」
おお。相棒、スミスさん。
「リウト殿、今のは一体?」
信じてもらえるかなあ?
「あー、その、コルテの使った《着火》の魔法だ」
「「…」」
だよなー。二人とも一瞬動きを止めちまった。
「「《着火》あああああ!?」」
そして絶叫と共に再起動。
「嘘だとか冗談だろとか言いたいところだが、ここでお前がそんな真似する必要全くないよな」
うん。ま、確かに嘘っぽくて冗談みたいな話だけど。
「しかし、なにをどうしたら《着火》があのようなことになるというのだ」
おおよその見当はついてるが。
「確信はないけど、魔素を魔力に変換して体内を巡らすのがおそろしく遅滞する欠陥があるみたいだな。当然、魔法の構築にも遅れが出て発動しないわけだから、それに気付いてない本人はその行程をやり続けちまう」
「なるほど。魔法として構築されるまでに過剰な魔力を蓄積してしまうんだな?」
「ああ。なんてーのか、出口までの道が細いのを、膨大な魔力で強引に押し広げて無理矢理出そうとする感じなんだろう」
「ほ、ほむう」
「詠唱にも問題は一切無かった。だから、出口に到達した瞬間に一気に解放された魔力は“火を着ける”という構築式にはきちんと反応するわけだ」
「ただ、その魔力の量が尋常ではない、と」
「加えて、コルテは精霊に嫌われてもいない。むしろ好かれてるかもな」
「それであの爆炎、か」
コルテは、慌てて駆け寄ってきたマテスさんとエメリカさんに介抱されてる。
騎士達もどうやら落ち着きを取り戻したようだ。お騒がせしてすまんかった。
「それで?リウト、どうにか出来そうか?」
「…」
ふむむ。
どうだろうなあ?
詳しく調べてみて、原因がわからんことには手の下しようがないが。
「リウトさん、アディさん、コルテが目を覚ましました!」
お。
まだ意識が完全に覚醒しきってないのか、コルテはぽけぽけした感じで座り込んでる。
「コルテ?」
ぼんやりしてた目の焦点が俺に合わさると、ぺこりと頭を下げ「ごめん」と謝った。
「あー、いつもああなのか?」
ふるふると首を振って否定。
「結果はいつもまちまち。発動しないこともある、暴発することもある」
ふむ。
「自力で魔法使ったのは久しぶり。緊張もしてた。あそこまではちょっと想定外かも。だからごめん」
そうなのか。はりきりすぎ?
「それに、護ってもくれた。あの、ありがと」
「…」
憂いを帯びた顔のコルテの頭を撫で回す。「あう」とか「やめ」とか「はず」とか言ってるが、構わずぐりなでぐりなでぐりなで。
どうにかしてやりたいな。
どこまでやれるかなんざわからんが、ま、やってみますか。
陰陽表裏一体で、とかなんとか。
や、わかるんだけどさ。
次回「発動!三人娘改造計画③」
目の前のそれをゆるせるかってーと、なあ。
※2016年5月14日公開予定




