発動!三人娘改造計画①
出だしで蹴躓くと、一気にやる気が失せたりする。
逆にあまりに酷すぎることがいい発奮材料になったりもする。
はてさて。
ソアル王女御一行の旅の再出発も、支度やらなんやらおおよそ目処が立ったようだ。
俺や相棒は自分の支度はとっくに終えてるんで、鍛練は欠かさず重ねつつ、割りとのんびり過ごしていた。
が。
「「…」」
「「「…」」」
今、俺と相棒の前には、勇者様の元旅仲間であり、俺達の新たな旅仲間になるマテス、エメリカ、コルテの三人娘が勢揃いしてる。
勇者様の加護の力を失った彼女らの力量はどんなもんなのか、一度見ておきたいと思ったからだ。
(リウト、ここは正直に言うべきところだよな?)
(だな。でなけりゃなんら事態は改善しねえ)
「「…」」
三人娘にくるりと背を向け、じゃんけん。俺の負け。くそう。
再び三人娘の方に向き直り、俺から言うことにする。
まずはひと目で見てわかるお二人から。
「あー、まず、マテスさん」
「は」
「あのさ、その鎧と盾は、なに?」
マテスさんの鎧と盾は、かなり使い込まれていることが窺え、地味だが品のいい装飾の施された重厚感あふれる実用的な逸品だ。
詳しく調べてみないと効果はわからないが、どちらもなんらかの魔法的処理がなされているらしい。
「は。先祖伝来の家宝の鎧と盾なのです。没落し廃され、家名を名乗ることすら許されぬ身なれど、その魂まで消せはしませぬ。戦に臨む折、この鎧にこの盾と私は一心同体となり、我が血脈が連面と紡いだその武を体現せねばならんのです」
ほうほうほう。
「じゃ、脱ごうか、それ」
「聞いておられましたか!?私の話!?」
や、聞いてたよ?
でもそれ、どう考えてもそれなりの身長でそこそこ屈強な体格を前提とした“男性用”鎧だろがよ。盾もかなりでかいし。
鎧自体に相当な重さがあるだろうに、さらに綿詰めたり革帯とかで固定したりで無理矢理着てんだよ?間接部分なんてほぼ死んじゃってる。その上、自分がすっぽり隠れてまだ余裕のあるこれまたくそ重そうな盾まであるとか。
そりゃあ動けやしねえだろうよ。駆け出しがどうとか以前の問題だ。
騎士隊のみんなと鍛練してるこの草原まで、わざわざそれ専用に作ったらしい荷車でがらごろ牽いてきてさ、がっちょんがっちょん着込み始めた時にゃ何事かと思ったっての。
「い、いかにリウト殿の仰せでも、それは出来ませぬ。この鎧と盾は…」
「一歩動くのにも難儀するような様で呑気なこと言ってんじゃねえええええ!」
「ひい!?」
「あんたさっきなんて言ったか覚えてっか?一心同体?武を体現?ど!こ!が!一心同体?どう!やっ!て!武を体現?答えてみせろやあああああ!」
「あうう、あううううう」
ふう。
ちと切れちまった。
マテスさんが涙目になってるが、ここで甘やかしたりなんぞ絶対しねえからな?
「マテスさん」
「は」
「俺は仲間を死なすつもりはないんで」
「死!?死ぬと!?」
「死ぬねえ、そのままなら。もう絶望的に」
「絶望的!?」
てかさ、“コレ”をちゃんと戦えるようにしちまった勇者様の加護の力すげえぞ。鍛えて上手く使えよ、勇者様。
「ま、そんな訳だからして、その鎧と盾は没収だ。問答無用でよろしく」
「無体な!?」
俺の時空魔法で強制回収。
「うあああああ我が血脈の魂があああああ」
なんか地に伏して号泣しだしたけど、きっぱりさっくり無視の方向で。
「傷ひとつ付けずに大切に預かっとくから、そこは心配しなくていい」
「ううううう」
「よさげな革鎧と小盾見繕ってもらって、盾の扱いの基本からだな」
王女御一行と一緒だから、教えてくれる連中にもこと欠かんだろ。
とりあえず、マテスさんに関してはこんなもんかなー。
で。
「…っ」
視線向けたら露骨に目が泳いだね?エメリカさんや。そりゃもうばしゃばしゃと。
「エメリカさん」
「ひゃい!?」
びくびくし過ぎ。
「なんとなく聞かれることはわかってると思うが」
「え、えう」
俺はその先端から末端までゆっくりと目で確認する。
「その槍、どういうこと?」
まず、長すぎる。歩兵の扱う対騎馬用の刺突槍並だ。次に、太すぎる。まともに握れてないから、両手で抱えるようにしてただ倒れないように支えているだけにしか見えない。長さ太さから鑑みるに、重さもそれなりにあるだろう。エメリカさんの体格で扱えるはずがない。
「だって!だって!長くて太い方がいいに決まってるじゃないですかあ!」
いきなりなにを口走ってんだこの娘は。
「な、長ければ長いほど!奥の、深いところまでこうガツンと届くじゃないですか!グリグリ突いてくれるじゃないですか!」
お、おう。
「ふ、太ければ太いほど!身体の中、手足の指の先まで痺れるほどズドンて響いて!ゴリゴリ抉ってくれるじゃないですか!」
あれ?なんの話してんだっけ?
「最高じゃないですか!気持ちいいじゃないですかあ!」
顔真っ赤にしてはあはあ興奮しながら絶叫するエメリカさん。
著しく誤解を招きかねん発言をまあこんな大声で。年頃の娘さんが。
はいはいはい、何気にこちらを気にしてる鍛練中の男性騎士諸君。悲喜こもごも、股間の辺りとか気にすんの止めようなー。そんな話じゃないから鍛練に戻れ。
ほらほらほら、何気に発言に同調気味なごく一部の女性騎士諸君。そもそも誤解だが、男にとって微妙かつ繊細な話題であるんで取り扱いは要注意でお願いね。
「どんなに見事な業物だろうが、扱えてなきゃなんの意味もねーだろがあああああ!」
「はひいいいいい!」
「技もなにもないんじゃ、結局宝の持ち腐れ!短かろうが細かろうが、それぞれの長所を見出だして上手く使やいいんだよ!わかってねえ!あんた全然わかってねえええええ!」
「ごごごごめんなさあああああい!」
ふう。
またしても切れちまった。てか俺もなに言ってんだよ。
あー、一部の男性騎士諸君。救われたようにこっちに熱い目差し送るの止めてくれ。で、ごく少数の妙齢の女性騎士諸君。ふんふん頷きながら別の意味で熱い目差し送るのも止めてくれ。いろいろもろもろ違うから。
てかさ、“コレ”を戦えるようにしちまった勇者様の以下略。
「はい、てな訳で。その槍も没収」
「ううううう」
マテスさんとエメリカさんが寄り添ってしくしく泣いている。
「取り回しのし易い軽めのとかから始めて、いろいろ試してみようや。その内ぴったりしっくりくるのが見つかるって」
この台詞にも他意は無いからな。誤解なきよう。
ん?
「…」
「…」
あー、コルテ?
君は何故に自分の杖を掲げて俺に見せつけるようにしてんの?
「…」
「変な癖も無さそうだし、大きさも適当だな。発動媒体として機能してるなら、問題ないだろ」
「…」
え。なんでそこで「そうじゃない!」みたいな顔されにゃならんのだ。
「そうだな。後は、仗術を身につけて接近戦にも対応出来るようにしようか。短剣とか、予備の武器を扱えるようにするのもいいかもな」
「…」
え。え。なんでそんな愕然とした「裏切られた!」みたいな顔すんだよ。お前は一体なにを俺に求めてんだ。
「ここで締めになにか欲しかった。期待はずれ」
「…」
ひどく残念そうなコルテさん。どうしろと。
「前途多難だな、リウト」
ああ。早くも投げ出したくなってきたぞ。
俺と相棒は顔を見合せ、深~く長~いため息をついた。先が思いやられるなー。
気付きにくい小さな綻び。
時にそれが大きな災いを招くこともある。
次回「発動!三人娘改造計画②」
火の元には十分注意だ。
※2016年5月13日公開予定




