文芸部
わたし達が通うことになる高校の文芸部とは、所謂本を読んで鑑賞し合うとか、そういうものではなくて、思い思いに取り組む個人競技、創作を指す。
だから部室はPCルームだし、記録を保存するUSBも必要だ。
私と由奈ちゃんは若干迷子になりながら、なんとかPCルームにたどり着いた。しかし今は丁度部員の勧誘中らしく、先輩たちは大方出払っているらしい。そのせいか中には二人ほどしか人がいなかった。一人は先生らしき大柄な男性、そしてもう一人は優しげな雰囲気の女生徒だ。
私は早速男性に話し掛けた。ちなみに由奈ちゃんは人見知りらしく、私の後ろで待機している。
「あのぉ」
「は、はい!なんでしょう?」
女の先輩が慌てて対応してくれた。タレ目で愛らしい人だ。
私はなんとか愛想笑いを浮かべて先輩をみた。初対面の人にはなるべく笑顔の方がいいと聞いてのことだけど、私にはやっぱり無理なようだ。頬筋がイタイのなんの。
「文芸部に興味があったんですけど...」
「え、ほ、ほんと!?やった!どうぞこちらにいらして!」
女の先輩はわたし達を中に招いて椅子を用意してくれた。
小柄な体だからか、ひとつひとつの動作がちまちましていてとっても可愛い。由奈ちゃんとこそこそしながら「何あの先輩かわいすぐる」「やばいなあれは」と言ってるわたしたちは変態かもしれない。そして由奈ちゃんや。やっぱり君はオタクとかそんな類だろう?そうだろう?だんだん崩れてきてるぞふふふ。
私のなかで再び由奈ちゃんオタク説が浮上してると、先輩がいそいそと椅子を用意してくれたうえに、お菓子を出してくれた。なにこれ天使か。いただきます。
「遠慮せずいっぱい食べていいからね」
「おい、田畑。ここは飲食禁止だろ」
ずっと後ろでだんまりしていた怖そうな先生が静かに言った。...静かに言ったにも関わらずすごい部屋全体に響いた。
なんだあれ。私がクッキーを落としそうになってる横で、由奈ちゃんが早速落とした。それを見逃さなかった先生がギロっと由奈ちゃんを睨んだ。あーあ。
「ひぃ!!」
「ちょっと高瀬君!ダメでしょ一年を怖がらせちゃ!!」
「しかし...」
「いいのいいの。先生からちゃんと許可はとったから今日だけ特別!」
「む...そうだったのか...?」
「でも、流石にジュースとかは無理だったけど」
...ほ?タカセクン?
目をパチクリして、先輩方?の会話を聞く。嘘だろ。
あのごつい人が?先輩?
「ふふ、本当よー高瀬くんはおっきく見えるけど、貴方達より一個しか差がないのよ」
「...今年から二年だ。驚かせてすまん」
「で、私がここの部長の田畑恵です。一応これでも3年です」
高瀬くんは敬語使ってくれないのよーと嘆く田畑先輩に、
別にいいだろとそっぽ向く高瀬先輩。
まじかよありえねー
私と由奈ちゃんの心が一つになった瞬間でした。
敬語はちゃんと使いましょう