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第7話


 携帯電話の番号とメールアドレスを教えてもらってからは、いつ、彼から連絡があるか楽しみにしていた。ところが、何もないまま一週間が過ぎた。彼はもう私のことなんか忘れてしまったのかしら…。そう思うと不安で仕方なかった。

 あの日、彼に会った時間にジャムが無くなったとか、ご飯が無いからパンを買ってくるとか、そんな理由をつけて買い物に出かけたこともあった。けれど、彼には会えなかった。

「自分から連絡すればいいじゃない」

 そんな声が頭の中でささやかれた。そうよ!待ってなんかいられない。私は彼の携帯電話の番号をプッシュした。


 そこは彼の行きつけのスナックだった。手前にカウンター席が連なっていて、奥にボックス席がある。彼はカウンター席の中ほどで私に席に着くよう促してくれた。店にはまだ他の客はいなかった。

 この店のマスターらしい人がウイスキーのボトルと水割りのセットを持ってきた。ボトルには“安西”と書かれたネックが付いていた。マスターが二人分の水割を作ると、貴志さんが何か合図をしたようだった。マスターは微笑んで厨房の方へ引っ込んだ。

「ねえ…」

 二人っきりになったところで貴志さんが話かけてきた。

「はい」

「運命だと言ったね?」

 やっぱりそのことか…。彼にしてみれば、逆ナンパの理由にしたら、突飛過ぎるものね。でも、私にしてみれば作り話でも何でもなくて、本当のことだから、そこはあやふやにはできないわ。

「はい。私は孝さんに出逢うために産まれて来たんだと思う」

「その出会いが運命だとしたら、相手の人が既に結婚しているのは変じゃないかい?」

 そこか…。そうよね…。もっと早く貴志さんと知り合っていたら良かったのだけれど…。そしたら、今の主人と結婚することもなかったんだし…。そっか!そういうことだよ。

「出会うのが少し遅かっただけです。私はもう決めました。元々、主人とはうまくいっていなかったので離婚を考えていましたから。そのタイミングで貴志さんに出逢えたのだから、まさに運命の出会いです」

 彼の表情が変わった。なんだか驚いているみたい。いきなり離婚だなんて言われたら戸惑っちゃうわよね。話が飛び過ぎぎかしら…。でも、ずるずると付き合うのは嫌。私だってそれほど若くはないんだから。




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