第46話
46.
しばらくそんなやり取りが続いた。私が自分の言いなりにはならないと悟った横井さんは手のひらを返したように悪態をついた。グラスの酒を一気に煽っては舌打ちを繰り返した。
「俺に逆らったらどうなるか解かっているのか?」
そう言って横井さんは携帯電話を取り出した。私は横井さんのその行動に一瞬ハッとした。もしかしたら、あの時に写真を撮られていたかもしれない…。私が酔いつぶれた時に二人でホテルに行ったことがあった。朝、目が覚めたらそうなっていた。それまでの記憶が私にはない。そのこともあって、私は横井さんに逆らえなかった。
横井さんは携帯電話のデータを呼び出しているようだった。そして、横井さんがニヤリと笑った瞬間、山本さんが横井さんの携帯を取り上げた。
「おい!何をするんだ」
横井さんが叫んだけれど、山本さんはかまわずに携帯をいじりだした。そして最後にメモリーカードを引っ張り出すと、床に落としてヒールで思いっきり踏みつけた。メモリーカードは粉々に砕けた。
「お前、ふざけるなよ」
怒り狂う横井さんをよそに、山本さんは財布から一万円札を取り出してテーブルに叩き付けた。
「カード代と今日の勘定よ。余った分は手切れ金よ。そして、金輪際、青山さんには近づかないことね。もし、メールの一つでもしようものならストーカーで警察に訴えるわよ!さあ、青山さん行くわよ」
山本さんは私の手を引いて店から出た。
私たちは場所を変えて一息ついていた。山本さんは何食わぬ顔で紅茶を飲んでいる。そして、時折、何かを思い出したように笑みを浮かべている。
「どうもありがとうございました」
「いいのよ。私もあいつはいけ好かないと思っていたから清々したわ。それよりも、あいつが携帯に保存していた写真…」
私はドキッとした。山本さんにその写真を見られたのは間違いない。
「その写真のことは…」
「大丈夫よ。誰にも言わないわ。それにしても、あいつもバカだねえ。あんな写真で青山さんを言いなりにさせようなんて」
「えっ?どんな写真だったんですか?」
「あら、青山さんは知らないの?」
山本さんはフッと鼻で笑った。そして、声を上げてケラケラと笑い出した。




