第42話
42.
いつの間にか眠ってしまった。今夜は貴志さんが激しかったから私もいっぱい汗をかいた。せっかく、貴志さんの横で眠るのに汗臭くては貴志さんに嫌われる。私はそう思うのでいつも貴志さんが眠ってからシャワーを浴びる。体をきれいにして眠っている貴志さんの横に入る。今夜もそうしてシャワーを浴びて戻って来ると、貴志さんに声を掛けられた。
「いつもそうなの?」
「えっ?何がですか?」
「いつも、した後はシャワーを浴びているの?」
「そうですよ」
「それって、僕の匂いを洗い流すため?」
貴志さんにそう言われて私はムッとした。私がシャワーを浴びるのはそんな理由じゃない。そんなことを気にするくらいなら初めから体を合わせることなんてしない。私はちょっとだけカチンときたので彼に口ごたえをした。すると、彼はすぐに理解してくれる。そして私のすることを全て許してくれる。そんな貴志さんが愛おしくて私は再び彼に覆いかぶさる…。
休日だったこともあり、久しぶりに朝まで貴志さんと過ごした。ホテルを出た後、軽い食事をとってから歩いて帰ることにした。貴志さんがそっと私の手に触れてきた。私はしっかりと彼の手を握り返した。手をつないで一緒に歩く…。恥ずかしい…。彼の想いが手から伝わってくる。ずっとこうしていた。でも…。
「そろそろだね」
彼が告げる。地元が近づいてきて、これ以上一緒に歩いていたら誰に見られるか判らない。断腸の思いで私は彼の手を離した。そし、手を振ると逃げるように歩き出した。歩きながら彼のメールを打った。
『昨夜はありがとうございました。今日はゆっくり休んでください』
送信して振り向くと、彼が私の方を見ていた。私は彼にお辞儀をして家路についた。こういう時間が一番悲しい。本当はこのまま彼と一緒に同じ家に帰りたい。今は悲しいけれど、いつか、そんな時間を過ごせる日がきっと来る。その時はそう信じていた…。
帰宅すると、菜奈緒がダイニングで本を読んでいた。既にお昼近い。
「お母さん、お帰りなさい」
主人が仕事に出かけた後、菜奈緒はずっと一人で過ごしていたのに違いない。私は一体何をしているのだろう…。急に涙が溢れてくる。その涙を悟られないように私は菜奈緒を抱きしめた。




