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第40話

40.


 今度のことで私は貴志さんをたくさん心配させてしまった。貴志さんも真柴さんも高木さんとは仲直りすることが出来た。その席で高木さんが貴志さんに言ってくれた。

「今後、お前たちがどうなるのか俺の知ったこっちゃないが、どちらかが不幸になるような決断はするなよ、安西」

 高木さんは私を応援してくれているように思えた。

「同感だね。菜穂子ちゃんもこの青山さんも素敵な女性だ。お前ばかりがこんなにいい思いをするのには納得いかないが、その分、責任は重いぞ」

 真柴さんも高木さんに同意してくれているけれど、こちらは貴志さんに対する戒めの様にも思える。そんな二人の言葉を聞いて貴志さんはどう思っているのかしら…。私は貴志さんの言葉を聞くのが怖くて、思わず貴志さんが答える前に二人に言い返した。

「大丈夫ですよ。私は今のままで。貴志さんが私のことを思っていて下さるのならそれだけで充分です。だから、誰かが不幸になることなんてないですよ」

 不安な気持ちをごまかすようにそう言って微笑んで見せた。上手く出来たかどうか不安だったけれど、貴志さんはその後何も言わなかった。


 以前、貴志さんが私にこんなことを言ってくれた。

「優里は本当に僕のことが好きなんだね。だったら僕も優里の気持ちに応えたいな」

 嬉しかった。貴志さんは私と一緒になってくれると言ったのだから。でも、その時の貴志さんの心境が私には解かっていた。私と高木さんのことを疑っている時だったし、焦りがあったのだということも解かっていた。このままだと、例え一緒になったとしても貴志さんは後で後悔するかもしれない。あの日、高木さんが言ってくれた。どちらかが不幸になるような決断はするなと。私は貴志さんにそんな決断をして欲しくなかった。

「焦らないで。貴志さんの気持ちは嬉しいけれど、そんな風にして奥さんと別れるのはよくないわ。私のことで貴志さんに迷惑はかけられないわ。だから、私に任せて」

 私は貴志さんを安心させたくてそんな風に言った。けれど、わたしに貴志さんと菜穂子さんのことをどうにかすることなんか出来る訳がない。結果として貴志さんが菜穂子さんを選んだとしても私はそれを受け入れるしかない。それに私には菜奈緒が居る。あの子は主人を慕っている。私が主人と別れると言ったらあの子はどんな顔をするだろう…。ううん、今はそれは考えないようにしよう。


 それからしばらく、貴志さんから連絡がなかった。私は我慢できなくて携帯電話を手に取った。




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