第34話
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私にとって貴志さんは運命の人。本当なら今すぐにでも家を飛び出して貴志さんのもとへ飛び込んでいきたい。でも、貴志さんには家庭がある。私にもまだ小さい子菜奈緒が居る。菜奈緒を放って家を出るわけにはいかない。
そんな時、貴志さんから連絡があった。
「学生時代の仲間から久しぶりに飲もうって連絡があったんだ。それで…」
真柴という、その貴志さんの学生時代の仲間が誰か女性を連れて来て欲しいのだと言う。その人のために私を連れて行くなんてどういうつもりかしら…。でも、真っ先に私に声を掛けてくれたのは嬉しい。理由はともかく、私はその分、貴志さんに会う機会が増える。ただ、私は貴志さん以外の人と居ても、その人に気を遣ったりは出来ない。そうだ!
「私は構わないけれど、それだと、その真柴さんって人にとっては気晴らしにはならないんじゃないかしら?」
「それもそうか」
「ねえ、山本さんも誘ったらどうかしら?」
「えっ!」
「彼女をその真柴さんって人とくっつけちゃうんですよ。そしたら貴志さんにもちょっかいを出さなくなるかもしれないじゃないですか」
「ちょっかいって…。そんなに気にしているの?僕は大丈夫だよ。優里以外の女性には興味が無いから」
「だとしても、嫌なんです。本当は奥さんといるところだって見たくないし…」
「分かったよ。上手くいくかどうかは判らないけれど、取り敢えずそうしてみるよ」
貴志さんは私の意見を聞いてくれた。これで一石二鳥だわ。山本さんだったらきっとOKするはず。真柴さんって人がどんな人なのかは判らないけれど、あの人は男の人なら誰にでもしっぽを振りそうだし。
案の定、山本さんは二つ返事でOKしたと貴志さんから連絡があった。
三人で貴志さんが真柴さんと待ち合わせをしているお店に来た。カウンターに座っているのが真柴さんだと貴志さんが言った。けれど、貴志さんは首をかしげた。真柴さんの隣にもう一人男性が居たから。
私たちに気付くと真柴さんがこちらに向かって手を振った。
「よう!遅いぞ」
真柴さんが貴志さんに向かってそう言った。




