第2話
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赤い糸…。そんな運命の出逢いに私は子供の頃から憧れていた。
初恋は中学生の頃だった。同級生でクラス委員の子だった。今にして思えば“好き”とか“恋”だとか、まだそんなことさえよく解からないまま、好きになったような気がしていただけだったのかもしれない。それ以降、今の主人と出会うまでは男の人と特定の付き合いをしたことはなかった。
主人とは社内結婚だった。入社以来、同じ部署の部下と上司という関係が5年続いた。彼は私より10歳も年上だったから、入社した時には父親の様な存在で恋愛対象として見たことはなかった。まさか、そんな彼と結婚することになるとは思っていなかった…。
私は会議のための資料を50部製本するように指示された。その時預かったデータを間違えて消去してしまった。そのことを上司だった彼に報告した。
「そりゃあ、大変だ!僕がもう一度作り直すから君も手伝ってくれるかい?」
彼は怒るどころか、私のミスを一緒に取り繕ってくれようとした。その日はほとんど徹夜になった。
「取り敢えず、一度、家に帰ってシャワーだけでも浴びてきた方がいい」
彼がそう言い、私たちは始発電車で一緒に帰宅した。おかげで、その日の会議は事なきを得た。
「お疲れさん!今日はゆっくり休むといい」
終業時間になると彼はそう言った。私はお礼をしたいので少し付き合って欲しいと申し出た。
「こんな冴えない男でいいのなら」
そう言って笑う彼を私は初めて男性として意識した。
「結婚しようか」
彼がそう言ってくれた時、断る理由は何もなかった。一つ、私の心の中に引っ掛かるものがあるとしたら、彼が“運命の人”だとは思えなかったことくらいだった。
「バカね!そんなのあるわけないわよ。青山さんがそう言ってくれたのなら、それが優里の運命なんだよ」
親友の葉子にそう言われて、私は彼と結婚することにした。結婚と同時に私は会社を辞めて専業主婦になった。二人の女の子が生まれて家事と子育てに追われるうちに、自然と彼を男性として見ることはなくなった。けれど、それが女性として幸せな人生なのだと思い始めていた矢先のことだった。
出逢ってしまった。“運命の人”はやっぱり居たのだ。




