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第16話

16.


 胸の鼓動が早くなる。菜穂子さんが私の方を見るたびに胸にナイフを刺し込まれているように苦しくなる。

「最近、よく夜遅くに出掛けるのよ」

 菜穂子さんは曇った表情で話を続ける。

「それだけじゃ、浮気って判らないじゃない」

 副キャプテンの比沙子さんが「信じられない」という様に反論する。

 菜穂子さんと比沙子さんはお互いの子供が小さい時から、家族ぐるみのお付き合いをしているらしい。当然、比沙子さんは貴志さんのこともよく知っているのだ。

「朝帰りの時もあるんだよ」

「飲んでいて、いつの間にか朝になっちゃったパターンじゃないの?」

「だって、あまりお酒臭くない時もあるし…」

「う~ん…。酒も飲まずに朝まで過ごすと言ったら…」

「ねっ!怪しいでしょう?」

「でも、タカちゃんに限って、浮気なんて有り得ないでしょう」

「だと、いいんだけど…」

 菜穂子さんは俯いて、何か考え事でもしている。そして、咄嗟に私の方に目を向けた。

「アオちゃんはどう思う?」

 私に話を振るなんて予想もしていなかったから、面食らった。と、言うより心臓が飛び出しそうなほど驚いた。

「わ、私は旦那さんを知らないので…」

 口に出して「しまった」と思った。案の定、菜穂子さんからツッコミが入った。

「いや、そう言う事じゃなくてこの状況をどう思うかってことよ…。あれ?アオちゃん、何か知っているのかしら?もしかして、アオちゃんが浮気相手だったりして」

「そ、そんなことあるわけないじゃないですか!」

 私は生きた心地がしなかった。まさに、針のむしろに座らされているかのように。

「あら?そう?そういうパターン、面白いなあと思ったんだけど…。で、どう?ウチの旦那は浮気していると思う?」

「私には何とも…」

「まあ、そうよね。あっ!それより、今度の大会のことなんだけど…」

 話題が変わってホッとした。けれど、それ以降の話は何も覚えていない。店を出て別れる時の菜穂子さんの笑顔は素敵だったけれど、私はつい目をそむけて早足にその場を立ち去った。





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