第13話
13.
呼び出し音が鳴り始めると、貴志さんはすぐに出てくれた。受話器の向こうから騒がしい音は聞こえてこない。きっと、店の外に出てくれたんだわ。
「青山です。そこ、抜けられますか?」
もし、前田さんの手前、抜けられない様ならそれでも仕方がない。でも、彼ならきっと来てくれる。私はドキドキしながら彼の返事を待った。
「ああ。大丈夫だろう?どっちみち僕は最初から部外者なんだし」
良かった!
「今から、この間連れて行ってもらったお店に二人で行きたいんですけど、いいですか?」
「具合は?」
「バカ!そんなのウソですよ」
貴志さんはウソだと解かっていてもこういう風に気遣ってくれる。他の人たちとはやっぱり違う。
「まあ、そうだろうね。すぐに出るよ。優里はどうする?先に行ってる?」
「一緒に行きたいです。高速道路の下あたりで待ってますから、タクシーで拾ってください」
「了解!」
待ち合わせの場所に着くと同時にウインカーを点滅させながらタクシーが寄ってきて停車した。後部座席の奥に彼の姿が見えた。私はタクシーに乗るなり、彼の体に身を預けた。
「私たち何でもないから…」
言い訳になるかしら…。それでも、彼にだけは誤解されたくない。
「ん?別に気にしていないよ。可愛い優里にみんながちょっかい出したくなるのはよく解かるもの」
「そんな…」
可愛いだなんて…。貴志さんはいつも私のことを可愛いと言う。こんな年になってそんな風に言ってくれる人なんて居なかったから恥ずかしい。でも、嬉しい。このままずっと貴志さんの温もりを感じていたい。
タクシーが店の近くに付いた。降りた先にはおしゃれなネオンがきらめいていた。
「あの…」
「どうしたの?」
「お店じゃなくてもいいですか…」
私がそう言ってちらっと見た方を貴志さんも見て頷いてくれた。




