天才とバカは紙一重
魔王パート改め、リクパートです
晩御飯を食べ終え食器を片付け始めると、アリシアが手伝うと言ってきたが客にそんな事はさせられないと断った
代わりにサラの遊び相手を頼むと喜んで、と請け負う
まだ若干の遠慮が残るアリシアをサラはおねいちゃん、おねいちゃんと呼び しつこく人形遊びに誘っている
サラにとって久しぶりの遊び相手だ、はしゃぐのも無理はない
俺は一通り後片付けを終えると手伝ってくれたレアに礼をいい約束通りにサラと遊んでやることにした
「サラはお姫様でリクは、悪い魔王役でおねいちゃんはサラを助けに来た王子様ね?」
そう言って俺に大きめのミノタウロス人形を手渡す
「オイオイ、本物の魔王を魔王役で使うなんて豪華な配役だな」
そんな事は気にも留めない様子のサラは即興で人形遊びを始める
「キャー!王子様、助けてー!」
お姫様の人形を持ったサラがまるで自分がさらわれたかのように叫ぶ
「コ、コラ マオウ!ヒメサマヲハナセー」
「もーう、おねいちゃん!ちゃんとやって!」
下手くそ過ぎるアリシアの芝居に監督の喝が入った
裏でクゥとフューリが必死に笑いを堪えているのか、微かにクスクス聞こえてくる
「ご、ごめんね?今度はちゃんとやるよ!」
深く深呼吸したのちアリシアは手に持った王子人形に力を込める
「悪しき魔王よ!この私が貴様を正義の名の下に成敗してくれる!」
な、なんだと!さっきと気合いの入り方が全然違うじゃないか
これはこっちも本気でやらなきゃ向こうに呑まれるぞ
「フハハハ!成敗?笑わせるな!貴様など我が真の力の前に数秒とて持たぬわ!」
どうだ!俺の迫真の演技は!
「愚かなり魔王!貴様の野望もここまでだ!喰らえ、正義の鉄槌を‼︎」
「無駄だ!貴様の攻撃など効きはしない!」
「流石だな魔王!私の必殺技を受けてなお立っているとは」
「貴様も中々やるではないか、我を楽しませた褒美だ!楽に死なせてやる」
「必殺ホーリーバスター‼︎沈め、魔王よ」
「これで終わりだ暗黒奥義!カオスインパクト!」
「「どぉっかぁあん」」
••••••何か大切な物を失った気がする
静まり返る観客をよそ目にサラはケラケラ笑って喜ぶ
自分の心に大怪我をしたが、まあ サラは楽しそうだったので良しとする
だが、アリシアも中々の物だったなぁ
「あー楽しかった!リク今日ね、サラはおねいちゃんとお風呂入るー」
アリシアの袖を引っ張りながらサラが浴室に連れて行こうとすると
「えっ⁉︎だ、ダメです‼︎」
アリシアが血相を変えて大声を出した、突然の出来事に家中が静まり返る
「あ、あの、その••••••ごめんね?」
取り繕うが明らかに様子がおかしい
「サラ、私と入ろうアリシアお姉ちゃんとはまた今度入ればいいさ」
レアが何かを感じ取ったようにサラを浴室に連れて行く、レアの機転を利かせた判断にはいつも感心されられる
「風呂ぐらい一緒に入ってやればいいのに」
一方、空気を全く読まないフューリが黙り込んだアリシアに追い打ちをかける
フードが付いた白い服の下にピッタリとした黒い長袖のシャツを着ているが明らかに丈が短くへその上で止まっている恐らくわざと
この水色の短い髪以外は白黒のシマウマは他人に対して全く協調性が無いそして身体の凹凸の欠片も無い
自分が興味無い事はしようとしないし1度研究にのめり込むと手が付けられない
頭はいいみたいだが人間それだけではダメだと思う
俺がそれ以上余計な事を言うなと目で牽制するとわざわざ聞こえるようにフン!と息を鳴らして、自分の研究室に戻っていった
しかし、奴の発明品の世話になってる部分もあるので今日はここで許してやる事にする
結果、サラとレアが風呂から出た後にアリシアが入り、中々入ろうとしない暇人とマッドサイエンティストを風呂に押し込んだ後、俺が風呂を終えた
風呂から上がった後、サラがアリシアを自室に呼んで 本を読むように催促している
2人でベットに入りながらアリシアが読み聞かせているうちに、サラはすやすやと寝息を立てて寝てしまう
完全に眠り込んだのを確認するとアリシアはそっとベットから抜け出してリビングに戻ってきた
「悪いな、寝かし付けてもらって」
アリシアはううんと首を横に振る
「いえいえ、寝顔もとってもかわいいですね、サラちゃん」
小さな天使のような寝顔、と言っても過言では無いほど安らかで愛らしい顔をしている
「サラもお前の事を気に入ったみたいだし、ここにはいつまでいてもいいぞ?」
それにアリシアの携えていた剣も気になる、後で手合わせをお願いしよう
「ありがとう、嬉しいです••••••こんなに居心地のいい場所は初めてかもしれません、けど長居は出来ませんし」
翌日も翌々日も帰ろうとするアリシアを引き留め、滞在し続けて 3日目が過ぎる
しかし、アリシアはいつも誰とも風呂には入ろうとはしなかったし 手合わせもしようとしなかった
他人についてはあまり深く詮索しない方がいいのは分かってはいるが、こうも頑なに拒まれるとどうしても気になってしまう
そうして4日目、ついに、その日が来てしまった