魔王と勇者
また魔王パートに戻ります、
日が沈み、周囲が暗くなって来た 俺は修練を切り上げると家に戻り晩御飯の支度を始めた
我が家のドアを開けると俺に気付いたサラがこちらに駆け寄って膝に抱き付く
「リク、お帰りー ねぇ遊ぼーよ」
抱きついたままこちらを向いて首を傾げる上目遣いするサラ、まるでペットではなく本当の妹にせがまれているような錯覚に陥る
何故、ペットなのか不思議になるなぁ
「ごめんな、晩御飯を作らないといけないんだ。 終わったら遊んでやるからさ」
わーい、とピョンピョン飛び跳ねる 無邪気な奴だ 見てると鍛錬の疲れが吹き飛ぶ
そしてもう一方の住人を冷ややかな目で見る、昼から一歩も動いていないのか?こいつは
「おい、クゥ!またサラと遊んでやらなかったのか?」
呼んでも振り向かずただ テレビ に注視して、手にコントローラーを持っている
「えー、だって今 フューリんから貰った新しいゲームで忙しいもん」
またまたあいつか、そう思い頭を抱える
飼い主から半ば放置状態にされたサラが不憫で仕方ない、現状 身の回りの世話は全部俺任せだ
よし、今日こそガツンと言ってやろう!
時には心を鬼にすることも必要であり何よりこんな生活を続けたら本人の為にならない
「クゥ!お前いつになったらまともな生活し始めるんだ?もう2年経つんだぞ」
「うーん、来世紀から本気出す」
ダメだこいつ
いろいろ終わってる居候は放っておいて晩御飯の支度を始めた
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
支度を済ませ終わる時には辺りはすっかり暗くなって夜空に月が登ってる
今日の晩は遅くなったな、後は配膳を済ませるだけ••••••
ガチャリと玄関の扉が開いた
入ってきたのは見覚えのある顔と見覚えのない顔
「リク、客人だ食器をもう一人分頼む」
この紫の髪の女はレアという、朝っぱらから薬草を取りにいくと言っていたが随分遅かったな
レアはこの家の地下を勝手に病室に改築し医者を始めた女医で医者としての腕はかなりのものらしいがいかんせん風貌が怪しすぎる
何故常に白衣なのか、マスクを手放さないのか、目が死んでるのか、男性口調なのか
謎は尽きない、ただこの家では1番の常識人なのは確かでよく暴走する地下のもう一人をうまく制御している
「客人って、そっちの?」
レアの隣には小さな14〜5歳ぐらいの女の子が物珍しそうに室内を見回している
銀色に輝く肩にかかる髪をサイドテールにし、蒼い瞳をしてどことなく気品も漂う可憐という言葉の似合う少女だった
「あっ、あの!申し遅れてすいません アリシア=ストラヴァーと申します」
そう言ってぺこりと頭を下げた 礼儀作法もきちんととしているなんて今の魔界では珍しい
「確か、一部屋使ってない空き部屋があったな?そこに彼女を泊めてやって欲しい」
レアが俺に頼み事なんて珍しい、普段はあまり他人に興味を示さない奴なのに今日はやたら親切な気がする
「ああ、好きに使っていいぞ どうせ使ってないしな」
そういってアリシアなんたらと名乗る少女を空き部屋に案内した
俺の後ろをちょこちょこ歩いてくる彼女の肌は雪のように白く華奢な体には茶色い薄手のコートと薄紅色のワンピースがよく似合っている
「ここを使ってくれ、ベットとかは入ってるから 後、なんか分からない事があったらいつでも聞いてな?」
「はい、ありがとうございます!えっと••••••」
そうだ、まだ名前を言って無かったっけ
「俺はリクス=ヴェルト ここで魔王やってる よろしくな?」
そう言った途端、さっきまで笑顔だったアリシアの表情が一瞬にして凍り付いた