勇者と忍者
アリシアパートです
「ふぅ、これでお終いね?」
依頼品の荷物を運搬を完了し、後はギルドへ報告するだけっと、
最低ランクの依頼は、街から出ないので誰でも出来る様になっていて、 荷物の運搬や草木の剪定など多岐に渡り、今日二つ目の荷物を届け終え一息ついていた
小麦粉が入った袋は中々の重さで、額に汗を滲ませる
近くにベンチがあったのが幸運だ、腰掛けて別の依頼を請けたレアさんを待つ
それにしても広い街だなぁ、ギルドの周りとは違う街並みになってるよ
手元のヨクト国ガイドマップによると、この辺りは長屋街と呼ばれ低所得者層が多く在住している所らしい
長屋と呼ばれる一階だてのアパートが数多く並んでおり、手狭な室内に安い家賃のリーズナブルな物件
豪華絢爛な大きなお城とは真逆の印象、どこか寂れた感じ••••••こんな所もあるなんて知らなかった
道行く人々も、心なしか元気が無い様に見える
まだかなぁ、レアさん
「強盗だぁ‼︎」
突然、怒号にも似た大声が街道に響き渡り、道行く人が足を止め声のする先を見渡す
あぁ、びっくりした••••••
その途端、西の方から沢山人が走って来る、皆一様に恐怖に顔を歪ませて必死に逃げて来た通行人達、
マルティンの商店がやられたんだってよ!
賊はみんな武装してた、衛士が来る前に有り金盗られて終わりだな、最悪、顔を見たから殺されるかも?おぉ怖ぇ!
逃げる一団からそんな声が聴こえて来る
「••••••行かなきゃ!」
まだ間に合うかもしれない、助けないと!
私は人の波を縫って逆流し、商店へと向かった
「早く金を出せ!死にたくなかったらなぁ!」
「や、やめてくれ!この金が奪われたら俺だって生活出来ないんだ!」
一人のスキンヘッドの痩せた男がナイフをちらつかせ店の店主を脅す、一方店主は金銭が入った袋を抱え込み徹底交戦の構え
「殺せ!どのみち金が無きゃ、俺らがのだれ死ぬんだよぉ!」
もう一人の覆面の男は目が血走っている、重度の錯乱状態らしいボロボロの折れた直剣の剣を持つ腕が痙攣している
「恨むんなら俺らを盗賊に貶めた貴族達を恨みな!••••••地上げで家も家族も奪い尽くされた!だから俺も奪う!奪われるくらいならなぁ!」
ハーフプレートの胸当てを着込んだリーダー格の大男が大斧を店主に振りかざす
「待ってください!」
大斧は大男の頭上で静止し、動きを止める
「いくら生活に困っているからって人からお金を奪うのはダメです!真面目に働いてお金を稼げば良いじゃないですか!」
その場にいた盗賊3人は唖然として、少しの間の後こちらに武器を向けてリーダーの大男があざ笑った
「へ!綺麗事かよ嬢ちゃん、クソッタレな貴族が治めてる世の中じゃあ、それじゃ生きていけねぇんだよ!失せろ!」
口で言っても無駄なら••••••あんまり荒事はしたく無いけど、
鞘からスラリとデュランダルを抜いた、なんとか無力化ぐらいなら出来るはず
「やる気か?本気で?お遊びじゃねぇぞ?」
確かに、冗談じゃすまないだろうこの人達は本気で殺しにかかって来る
••••••だから、
「はい、本気で遊んであげますから覚悟して下さいね?」
ふざけんなよガキがぁぁあ!
それを皮切りにスキンヘッドの男がナイフで襲いかかって来た
身を少しだけ屈め、ナイフを振り下ろす瞬間に左に回避しつつ右手に持ったデュランダルの柄の部分で男の腹を打つ、
「がぁっ⁈くそっ!」
一瞬、悶えたが堪えた様子の男はガムシャラにナイフを振り回し始めた 慎重に見極め回避と剣で受け流して行く
ナイフが空を切る音と刃に弾かれる金属音が響き渡る
大丈夫、これなら勝てる
この男を倒した後は残り2人に柄打ちで気絶させれば••••••
「待てぇぇえい!」
どこからとも無く声が聞こえてくる
「誰だぁ!」
覆面の男が目を泳がせながら周囲を見渡すが、辺りには誰もいない
「いたいけな少女の清き救いの言葉に耳すら貸さず、あろうことか襲い掛かるとは、言語道断!」
この声は、上から?
「貴様らの悪行!神が許してもこの影朧が許しはせんぞ!••••••とわぁっ‼︎」
私は目を疑った、何故なら 屋根瓦の上から、黒装束に仮面を被った人が前方3回転宙返りをしながら商店の前に飛び降りて来たのだ
「うお⁉︎••••••っとっと!」
しかも、着地の瞬間少しよろけて、
急いで取り繕った黒装束の人は
「私が来たからにはもう大丈夫だ!貴女は下がっていなさい、さあかかって来い!私が相手になってやる」
腰に下げた一双の短刀を抜き放ち臨戦態勢をとる
「どこのどなたかは知りませんが私は大丈夫、戦えますから」
この変な人を置いて自分だけ逃げる訳にはいかない、2人なら安全に戦える
「誰かと思ったら影朧じゃねえか!お前は貧しい者の味方だろ?••••••だったら」
スキンヘッドの男が言う 影朧さんって言うんだこの人、さっき自分でも言っていたし
「確かに••••••だが、女性に刃を向けたその時から!貴様らは我が怨敵となり味方では無くなったのだ!」
あ、盗みを働いたからじゃないんだ
「へっ、そうかよ だったら2人まとめて地獄に送って•••っぅごはっ⁉︎」
一瞬だった、男が宙を舞い 壁に打ち付けられる••••••たった一発の飛び膝蹴りによって、動作を目で追う事しか出来なかった
そんな攻撃をほぼ構え無しから繰り出したの?
「••••••忍法(物理)鎌威太刀!」
この人、強い!
「な、なんだよ?なんで吹っ飛んでんだよ?畜生がぁ‼︎」
もう一人の錯乱した男には捉え切れていなかった様だ、激しく動揺し、滝の汗をかいている
「死ねぇ!影朧!」
震えた手で持つ直剣で斬りかかる
「••••••無明長夜」
魔法?両手で不思議な手の形をつくり、念じ始める
「⁈見えねぇ•••何にも見えねぇよ⁈わぁぁぁぁぁあ‼︎」
何かに取り憑かれた様に武器を振り回し発狂する覆面男、
「案ずるな、しばらくすれば元に戻る」
そうか、視覚を遮断する魔法か!
幻術と呼ばれるその類の魔法は、主に撹乱や無力化に使う非殺傷魔法だ
扱いが難しいから使う人を見たのは初めて、何者なのこの人は?
「だらしねえ、たかが1人にやられてよぉ?」
リーダー格の大男は髭の生えた口元を緩ませ背中の得物を抜きはなった
「大戦斧だ!刀で受けたら腕ごとへし折れるぞ!俺は腐っても元はBランクの冒険者だ!てめぇらなんざ、はなっから敵じゃねぇんだよ!」
両手で力任せに横薙ぎの一振り、まるで人が1人吹き飛ぶ様な凄まじい風圧が数歩離れた私の元まで吹き荒ぶ
「ぐっ、これでは近づけん!」
影朧さんも風圧に耐えるので精一杯だ、このままじゃいけない!何とか隙を見つけて••••••
「アリシア〜!」
⁈




