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魔王は誰も倒せない  作者: 覇我王
プロローグ "暫定"魔王
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勇者の旅立ち

ここからは勇者パートです。

晴れやかな青空に緑の映える新緑の木々、森の動物達が春の到来を喜んでいる中に私は一つの"決意"をしていた


いつもの修練の最中、私の元に一通の手紙が届いた、そこには一言


『魔王を至急、討伐されたし 勇者 オルバ=ストラヴァー 殿』


手紙にはそれだけが書かれて差出人の名前はどこにも記載されていない


普通に考えればおかしいと思う、まず第一に魔王ともなる存在ならわざわざ手紙で通知しなくてもあっという間に全世界に知れ渡るだろう 何故今まで誰にも知られなかったのかな?


そして第二にこの手紙には信憑性がなさ過ぎることだ差出人の名前はおろか宛名もおかしい


ここに書かれている名前は恐らく世界の誰もが知っている


勇者 オルバ=ストラヴァー


かつて魔王を滅ぼし世界を救った伝説の英雄だ、そして何を隠そう私の父親


おかしいのはそもそも何故今になって父宛の手紙が来たのか、父はかなり昔に他界している


そしてその名も過去の物となったはずだけど


相手にせず誰かのイタズラだろうと捨ててしまう様な手紙だが私には気になって仕方がなかった


もしかして本当に勇者の力を必要としていたら••••••そう思うと私はいてもたってもいられなくなり家の裏にある父の墓前に手を組み祈りながら跪く



「••••••お父様、私は騙されていたとしても行ってみようと思います」


綺麗に手入れされた墓碑にはつい最近私が供えた白い花が置かれている


「もし、この手紙に書かれている事が事実なら下手をすれば生きては帰って来れないかもしれません••••••でも、それでも困っている人がいるとしたら放ってはおけません」


どうか私にご加護を、天よりお見守り下さい


そう心の中で呟き旅の準備を済ませると、長年住んで慣れ親しんだ家を後にした



「見ていて下さいお父様、魔王を倒し必ず本当の勇者になってアリシアは帰ってきます」



そう空に向かい自分の決意を告げ一路、歩き始める







いざ、かつて魔界と呼ばれた地へ



足取りは軽い、心なしか周りの木々や鳥達も私の旅立ちを祝福してくれている気がする







父が亡くなってからはずっと一人で暮らしていたけれど森の動物達がいたので寂しくは無かった



剣の腕はまだまだ未熟だが魔法には少し自信がある、自分でも呆れるくらいのお人好しな性格が災いして そのせいでよくトラブルに巻き込まれたり

でも、自分の意思に従った行動だったので後悔はしていなかったりしている



あと、

よく道に迷う、この間は1度しか曲がらない道をも間違えてしまった



ともかく、こんな私が魔王を倒せるという自信は皆無で、魔王との決戦中に転ぶかもしれない だけど、怖気付いて逃げ出すわけにはいかない 必ず魔王を倒して父の墓前に報告しなちゃ



そう思いながら私は拳をギュッと握りしめ魔王の待つ魔王城へと歩みを速めた




~~~~~~~~~~~~~~~~~




そして数時間後、私は自分の行いを激しく後悔することとなるなんて




「ここは••••••どこ?」



近道をしようとして森を通ったのがいけなかった 私の想像よりも森は深く方向音痴の私はいとも簡単に迷った


父が遺した魔王城への地図も家に置き忘れて来てしまったし、帰ろうにもまず森を抜けなきゃいけない


ここは既に元魔界領内のはず、だとしたら凶悪な魔物も潜んでいるかも


現に、聴いたことの無い不気味な呻き声が私の耳まで達し、不安と恐怖を増幅させている


今までかいた事の無い量の汗が身体中から吹き出す、 そして緊張からか息も荒くなって 口の中は既に乾き切っていた

無理もない 私にとって魔界での初戦闘、否が応でも気が昂ぶってきた




何か来る、

ゆっくりとだが着実にこちらに近づいて来ている


一つ深い呼吸をした後、私は父の最期に譲り受けた 父愛用の白銀の聖剣デュランダルに手を掛けた


勇者の家に代々伝わるこの一振りにかかれば下級の魔物なら力を込めるまでもなく私でも真っ二つに出来るでしょう


もし、獣系の魔物だったらそのまま晩御飯になってもらおう自給自足と現地調達は勇者の基本だとお父様も仰っていたし



気配は段々と幅を詰め、後10歩というところの茂みから枝葉の擦れる音がする 標的の姿は依然として窺えない



私は意を決して、剣を振りかざし音を発する獲物へと突撃した、



調理方法を考えながら、


やはりよく焼いた方がいいだろう煮込むという方法もあるけれど素材の味を存分に味わうにはそのままをいただくのが一番かな











「ステーキいただきまぁす!」


そう言い放ちながら私はデュランダルを振り下ろそうとし、両腕に力を込めた


茂みの裏にはこれまた美味しそうな白衣の着た••••••女の人?



全力で踏みとどまろうとするが既に振り下ろされたデュランダルは本来の役目を果たそうとその重量と速度で私の制止を振り切った



標的にされた白衣姿の人も突然の出来事に驚きその刹那、後ろに飛び退く



その一瞬の後、先程まで彼女がいた位置にデュランダルが地面深くに突き刺さり砂を切る音が周囲に響く





危なかった、彼女の突差の判断が無ければ私は何の罪も無い人の命を奪ってしまっていたのかもしれない 緊張からの解放と最悪の事態から逃れたことの安堵からか、私はへたりとその場に力無く座り込む




「おい君、何をする!危ないじゃないか!••••••後、誰がステーキだ!」


すっかり態勢を立て直した今回の被害者が少し興奮気味に私を問いただす


怒られるのも無理は無い、何の前触れもなくいきなり晩御飯にされかけたのだ 怒らないほうがおかしいだろう


「ご、ごめんなさい!悪気は無いんですぅただ道に迷って、不安で、おなか空いて、」



今ににも泣き出しそうな裏声で精一杯謝罪する、もしかしたら許してもらえないかもしれないそれだけ大変な事をしてしまった これは殺人未遂だ


「分かったから少し落ち着くんだいいな?」


こくりと私は頷いた、


肩に掛からない紫がかった髪と何より目立つ白衣とマスク


さっきまでは気がつかなかったけれど冷静になってよく見てみると、この人相当怪しい格好をしている 私が彼女を見ていると彼女は続けざまに言う




「ふむ、おなかが空いて道に迷ったか••••••今日はもう遅いし家に来るか?後、粗末な物しか無いが昼の残りでもいいなら」




そう言って手荷物の中からサンドウィッチを取り出し私の方に差し出す




天使だ、天使さんがいた


私のした行為を一切気にせずそれどころか迷子の私を自宅に招いて食べ物までくれるなんて



白衣の天使さんがここにいた!



彼女の優しさ、寛容さに心打たれた私は

ついに泣き出し彼女に擦り寄った



「うぇえぇえん!ありがどゔござばずぅー」



「ぬわ⁈わ、わかったよ!あぁ鼻水がついたか」



こうして、冒険初日に森で遭難という危機から逃れた私は、白衣の天使さんに導かれ


天使さんの家へと向かった







最初からこんな感じで大丈夫かなぁ、私の旅





彼女になだめられた後、2人で歩くと驚くほど早く森を抜けてしまった 存外この森は小さかった様だ それでも抜けられ無かった私って••••••


家へと向かう途中、天使さんが自分の素性を明かしてくれる


「私はレア=ヒュゲル これでも医者をやっている、さっきの森には薬の材料になる薬草を取りに行っていたんだ」


「あぁ、そうだったんですか、そうとは知らずにすいませんでした!私はアリシア=ストラヴァーですよろしくお願いします!ヒュゲルさん」


「気にしなくていいぞ••••••後、レアでいい」



レアさんは中性的な声と容姿に加え口調まで男性口調なので白い膝丈のスカートを履いていなければ私も一目ではわからなかっただろう







そして長い沈黙が2人を包む





辺りに夕暮れの静寂が降りてきた時、ふとレアさんがこちらを向いて



「そういえば、アリシアはどこに向かう途中だったんだ?」



えと、なんて答えようか


レアさんも恐らく魔界の住人だろう たまたま魔界に住んでいるだけならいいけど、



万が一魔王を崇拝していたとしたら






「私、実は勇者で魔界には魔王を倒しに来まs•••」 「何‼︎魔王様の敵だと!」






なんて事になってしまうかもしれない しかし嘘を付くのは勇者としてアレだしどうすればいいのかなぁ



ああ、どうしよう本当の事を言ってしまおうか?やめておこうか、言うべきか言わざるべきか



私の中で延々と花占いが続く



「ま、まあ言いたくないなら無理には聞かない 人にはそれぞれ事情があるからな」



助かった、ホッと胸を撫で下ろすとある疑問を投げかけた



「そういえば、魔物が見当たらないんですが、ここ魔界ですよね?」



明らかに変、魔界は魑魅魍魎が跋扈する場所だと幼少の頃から聞かされていたのに


すると、レアさんは突然物憂げな目をして、立ち止まった



「そう、ここは確かに魔界••••••けれどここは既に"終わった"場所なんだ」



「終わった?何を•••」


私がそう言い返そうとした矢先、レアさんはまるではぐらかすように言葉を遮った



「さあ、段々見えて来たぞ?あれが元魔界名物魔王城だ」



レアさんが指を指す その先にはとても大きな••••••




「え、瓦礫の山?」



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