白銀の氷結鬼の知名度
結局そのまま進展の無いまま街に着いてしまった
昨日来た時よりは若干人通りは少ないがまだ充分人混みと言えるほどの人口密度、
その証拠にまたレアさんが雰囲気に慣れず もよしている••••••
「じゃあここで別れよう、お前らなら楽勝だろうが頑張ってな!」
何もしてあげられなかった、このままじゃまるでサラちゃんが子供で2人が夫婦••••••あれ?
夫婦でもいいんじゃ••••••
別れる前に、シアンさんにひっそり話す
「お2人はまるでカップル通り越して夫婦みたいですよ?」
「夫婦⁈そ、そうかな?ウフフ、そう見える?」
「何話してんだ?」
「なんでもない!••••••ウフフ(夫婦だって、お似合いなんだって!キャーーーー!)」
乙女の力で一気に表情が明るくなった
これで今日は大丈夫だろう
「ねぇねぇ、ぎるど見たーい!」
サラちゃんがギルドが入った建物を指差した
「え?中はサラちゃんが好きな物無いよ?」
私達が行く場所に興味があるのだろう、まぁ一回見ておくのも勉強になるし
「よし シアン、サラに中、見せてやりたいから買い物はその後でいいか?」
「あ、うん いいよ••••••フフフフ」
完全にホワホワして上の空なシアンさん
荘厳な大扉を抜け階段を上がる
相変わらず一階の喧騒が嘘の様に静かな所だ
「おー静かで おっきいー」
「サラ、静かにな?騒いじゃダメだぞ?」
うん、とお口にバッテンをするサラちゃん やっぱりかわいいー
「おい、あそこに居るのってあの白銀の氷結鬼じゃないか?」
近くの机に腰掛けている髭面の冒険者からその名が出た
一つの波紋がやがて大きな波を生む様に、ざわめきがざわめきを呼び 噂は確信に変わっていく
「え、A級筆頭のオルキュリアが男と歩いてるぞ!」
そのテーブルの冒険者が、
「まさか!彼女は大の男嫌いだって聴いたぞ?あれは嘘だったのか?」
私は耳を疑う、
「え?A級って、シアンさん冒険者だったんですか?」
幸せから我に返ったシアンさんは、
「ええ、確かにA級だし、色んな通り名もあるわ でも、噂なんか興味無いしそんなの重要な事じゃ無いでしょ?」
さっきまでホワホワしていたのがまるで嘘の様に私達が出会った時の冷たい表情
をしている
クールです、シアンさん
よく考えてみれば、助けてもらった時のあの実力を見ればA級も頷ける
しかし、噂はそれでは終わらない
「まさか、あの氷結鬼と肩を並べて歩ける男がいるなんて••••••俺なんか声掛けただけで目で殺されかけたのに」
弓を引っさげた冒険者が崩れ落ち膝を着く
受付嬢も思わず呟く
「男にはことごとく冷たいシアン様があそこまでの接近を許すなんて、」
そんな中、一部の冒険者のパーティーから 不穏な動きが、
斧を持った大柄の大男が、
「あの氷結鬼の隣の男、見かけねぇ顔だな、」
長身で華奢なエルフ族の吟遊詩人の男は
「僕も知らないよ、ただ男と氷結鬼の周りの女の子達も••••••いい‼︎すごくいい‼︎」
杖を持った獣人の魔法使いの女も
「白髪の女の子も、男と手を繋いでる羽の生えた赤い女の子も超可愛いにゃ!ギュッてしたいにゃ!」
太ってメガネをかけた学者に至っては、
「ブヒィ!紫髮のマスクのお姉さんマジタイプナリィー‼︎ブヒィ‼︎」
その中のリーダーと思われる剣を持った鎧姿の男が瞑目した後、こう呟く
「つまり、あの氷結鬼への接近を許されていながら美少女と美しいお姉さんを股にかけ、実際は幼女に手を出すロリコンと言うわけか‼︎あの男は‼︎」
その場にいる冒険者達が一同に殺気を出し始める
まずい、非常にまずい!今にも襲いかかって来そう、ここは穏便にリクさん達とさっさと出て行こう、
「ん?なんだ?みんな俺のことさっきからジロジロ見て、文句あんならハッキリ言えよ!」
はい、リクさんは見事に火薬庫に火を投げ込みました
「「「「「爆発しろぉぉお」」にゃ!」」」
ギルドの静寂が一瞬にして破られた
それぞれ、得物を手にして 本気で殺しにかかって来る!
リクさんを!
「なんだ喧嘩か?上等だ!買ってやr••••••」
「うるさい!」
一瞬で背筋が凍った、全ての時が止まったかの様に完全な静寂が辺りを包む
殺気だった、しかも冒険者達のとは比べ物にならないほど強烈でまるで殺意が具現化したような
「あなた達、私の前で騒いで気分を害する気?そんなに氷像になりたいの?」
シアンさんの瞳が妖しく輝く、周囲の温度が一気に下がり氷点下となり、テーブルの上のカップに入ったコーヒーが凍結し、春だというのに吐く息が白くなる
冒険者達は皆一様に絶望の表情を浮かべて、中には涙を流しその涙すら凍り付いていた
人類最大の敵であり恐怖である寒さがギルドを包む、しかし誰も動くことが出来ない
このまま、全てが凍り付いてしまうのかと思われた
「ふわぁぁ!••••••そんくらいにしとけよシアン、サラが風邪ひくだろ?」
あくびをした、リクさんはまるで何も感じていないかの様に平然としている
「さむーい!けど楽しいよ!雪降らないかなー」
サラちゃんは殺気すら感じていない様だった
「そうね、こんな奴らに魔力使う事も無いし••••••今ある生命を噛み締めて行きなさい」
徐々に冷気が引いていき、元の気温に戻る
緊張の糸が切れた様にへなへなと力無く座り込む冒険者達
「じゃあ、俺らは行くからよろしく頼むな!行くぞサラ」
「あ、ちょっと待ってよ!置いてかないでぇ!」
殺気までの冷徹なシアンさんは何処へやら、今はどこにでもいる恋する氷結鬼だ




