それぞれ、自宅にて
リクパートですが、あの人のパートも出て来ます
なるべく急いだつもりだったが家に着く頃にはみんな晩御飯を済ませていて、片付けている真っ只中で俺とアリシアは軽く謝罪を入れてからその残りを食べていた
そして、サラ達にはとっておきのお土産を渡す
「ほら、今 街で超有名な洋菓子屋のプリンだ!何時間も並んでやっと買えたんだ」
「わーい!プリンだぁー!プリン、プリン!」
小さな羽をこれでもかと羽ばたかせゆっくりと宙に浮くとテーブルの周りをグルグルと飛び回った
「ほら、分かったから降りろ?危ないぞ?」
丁度、俺の目の前に飛んで来た サラをグッと捕まえてテーブルに座らせる
やはり、女という生き物は甘い物が好きなのだろうか?
プリンを見せた途端にクゥすらテンションが上がり、レアやフューリすらすぐに寄って来てスプーンを装備している
1人づつ配り終えると、俺は連絡事項を伝える
「そうだ、悪い!明日なんだけどちょっと用事が出来たからギルドにはアリシアとレアで行っててくれないか?」
「何故だ?お前が1番乗り気だったろうに」
レアがそう問い返す
確かに、行きたいのは本当だし、ランクをとっとと上げたいのも事実だ
「実は、街でアイツにバッタリ会っちまってさ?無理矢理 明日付き合えって脅されて」
プリンに手をつけながらアリシアは驚いた様子で問い返す
「そ、そんな人がいるんですか?随分と強引ですね••••••うーん!とろけるぅ!」
あれ?••••••アリシアの話じゃ沢山甘い物食べたんじゃなかったっけ?
でかクレープにアイスにプリン••••••
「アリシア、甘い物ばっか食ってると太るぞ?お前」
「えぇええ⁈私太ってます?それに甘い物は別腹だから太らないんじゃないんですか?」
ん?何か違うような
「アリシア、別腹の意味を間違えてないか?」
レアが諭す、さすが医者だ
「沢山、甘い物ばかり食べて運動しないでいたら魔族と言えど太るし、虫歯にもなるぞ?明日の依頼でカロリーを消費するしかないな」
それを聞いたアリシアは絶句したのち、
絶叫した 脳内で最悪のぽっちゃりビジョンが再生されたのだろう
「嫌ぁぁぁ‼︎明日は討伐任務です!運動もします!街にも走って行きます!」
「今からハッスルしてどうする⁈今日は風呂 入って寝ろよ」
はぁ、明日はめんどくさいなぁ••••••なんで俺にしつこく付きまとうんだ?アイツは、
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草木も眠り、日付が変わる時刻
街から数里ほど離れた鬱蒼と木々が茂る閑静な森、何処か冷気漂い薄ら寒さが一層恐怖を引き立たせる
夜になると梟が鳴き獰猛な野獣が不気味な鳴き声をたてるこの森には余程の死にたがりか酔狂者しか近寄らないだろう
採れる特産品は無い上にギルド認定の特別指定危険地帯だ、入ったら最後 命の保証は無いに等しい
何故、あたしがこんな所に家を構えたかというと理由はたった一つ、
涼しいからである
森林深く奥の小さな湖の畔、ポツンと佇む白塗り屋根の小さな館
あたしはその中で明日のデートに着ていく勝負服を決めかねている
「う〜ん、青と白、どっちがいいかなぁ?」
鏡の前で袖のたるまった長めの青と白のカーディガンを交互に合わせ、悩みに悩む
「ねぇ?キーくんはどっちがいい?」
「きゅー!きゅっきゅきっきゅ!」
白いお饅頭にネズミの耳とコウモリの羽とウサギの尻尾がついたようなボディの愛らしい私の使い魔のキーくんにどっちが似合っているか聞いてみたが、どうやら無駄な様だ
「もう、何言ってるか分かんないから」
「きゅぅ••••••」
ひんやりプニプニした体は柔らかくて冷たい、流石は冬に降った雪を媒体に召喚しただけあって今や作ったアイスの保冷剤がわりになってもらっている
契約通りに毎日プニプニしてアイスを食べさせてあげてれば従順だし可愛いもん
「えっと、雪美草の花の香りの香水と雹露樹の実のエキスから作ったクリームを塗ろうっと」
どちらも清涼剤の原料に使われる代物、そのまま肌に使うと凍傷の恐れもあるので普通は加工されて出荷が義務付けされていて、
どちらも肌に触れると反応し瞬間的に凍結させる危険薬品として有名だが、同時に肌をツルツルにする美容効果もあるので高値で取引されている
もっとも、あたしにはちょっとひんやり程度だが
高級素材を惜しげ無く使う 何せ、初デートなんだから絶対失敗出来ない
応援してくれる2人のためにも頑張んなきゃ!
「見てなさい!ここからあたし、シアン=オルキュリアの恋の舞台が始まるの!」
白銀の氷結鬼の異名は伊達じゃないわ!




